日本の若者の自殺率が深刻な状況になっている。先進7カ国における「若者自殺死亡率(※)」では、日本が1位であり、国際的にも多い数字だ。厚生労働省が出した『自殺対策白書』(平成29年度版)でも若者の死因1位は自殺で、男女別にみると、15歳から44歳までの男性の死因1位が自殺、女性でも15歳から29歳の若い世代で死因の1位が自殺である。
10代の子たちが「死にたい」と思うのは、いったいなぜなのだろうか。SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜23時から放送中)では、10代で「死にたい」と思った経験を持つ女性たちが胸の内を語った。
リストカットやオーバードーズ(薬物を乱用、あるいは過量摂取すること)を繰り返してきたまいさん(19歳)。彼女が死にたいと思ったのは、中学3年生と高校1年生のときに経験した性的暴力だった。まいさんは「それがトラウマになって、死にたい、消えたいと思うようになった」と話す。親から寄り添ってもらえず「リストカットをすると『なんでそんなことをするの』って怒られた」という。冷たい家庭環境も原因となり、つらい思いをしたまいさん。もともと、まいさんの両親は仲が悪く、家にも居場所がなかった。まいさんは「すっきりしたくてリストカットをする。オーバードーズは昏睡したいとか、眠っていたいときにする」と話した。
(▲番組MCのSHELLY)
家に居場所がなかったまいさんがつらさを吐き出せた場所は、Twitterだった。普通のアカウントでは言えないことを呟ける“闇アカウント”を作り、そこに「死にたい」などの思いを投稿する。“闇アカウント”をきっかけにオーバードーズの方法も知った。
番組MCのSHELLYが「人に相談できる場所はなかったの?」と聞くと、まいさんは「いろいろなNPO法人で相談をしたけど、あまり進展しなかった。業務的な対応をされた」と振り返る。まいさんが性的被害に遭った人を救う団体に連絡をすると、団体からは「これからも精神科の受診を継続していきましょう」と言われ、特に支援もなく、そこで終わってしまった。話を聞いていたSHELLYは「なんのための団体なの?」とあぜん。
(▲岡田沙織さん)
一方で、“沙織ママ”と慕われ、死にたい若者たちの拠り所となっているのが、NPO法人若者メンタルサポート協会理事長である岡田沙織さんだ。沙織さんは、自身の辛い人生経験を活かし、2015年に協会を設立。現在は、悩める若者から24時間LINEの相談を無料で受けている。
沙織さんが24時間受け付けているLINE相談には、全国から相談が寄せられており、1日に1000件以上にのぼることもある。業務的な対応をする団体と違う理由として、岡田さんは「私も子どもだから」だという。
沙織さんは、子どもたちに「辛いよね」と共感するのではなく、「ご飯食べに行こうよ」「買い物付き合って」など、一緒になって遊ぶ。若者がリストカットをしても、決して否定はしない。沙織さんは「何をしても引かない。(手首を)切ろうが何をしようが、生きていてくれればそれでいい。みんな可愛くてしょうがない」と話す。
沙織さんが大切にしているのは「100%の愛情をみんなに分けているのではなく、全員に100%の愛情を注ぐこと」。“闇アカウント”の話を聞いていた沙織さんは「居場所のない若者を受け入れる場所がない。ネットで(不特定多数の人に)“つらい”と吐き出すと座間市のような事件(※)が起こってしまう」と警鐘を鳴らした。
(※)座間9人遺体事件:男(逮捕当時27歳)が住んでいた神奈川県座間市緑ケ丘のアパート室内で、若い女性8人と男性1人の計9人とみられる複数人の遺体が見つかった事件。男はTwitterを使い、自殺願望を持つ女性を誘い出していた。
(※)先進7カ国若者自殺死亡率:世界保健機関資料、総務省統計局「世界の統計2015」、カナダ統計局「2011 Census of Canada」より厚生労働省自殺対策推進室が作成。
(C)AbemaTV
(AbemaTV『Wの悲喜劇』より)
(ライター/小林リズム)