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 鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂。その店主である篠川栞子が古書にまつわる数々の謎と秘密を解き明かしていく国民的大ベストセラー、三上延・著「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズの実写映画化が11月1日より公開となる。本作で、人見知りだが驚くべき本の知識と優れた洞察力を持つ、若く美しきビブリア古書堂店主・篠川栞子を瑞々しく演じるのは、実力派女優・黒木華だ。栞子と同じく「本が大好き」と語る黒木に、作品について話を聞いた。

栞子の「声」や「話し方」に気をつけた役作り

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――人気ベストセラーが原作の映画化ということで、最初どのような印象を持たれましたか?

黒木: 原作はとても有名ですし、特に本のビジュアルのイメージが強いので、最初は「私で大丈夫でしょうか?」と思ったのですが、三島有紀子監督も「安心して大丈夫だから」と言って下さったので、その言葉を信じてやらせていただきました。原作は何冊か読んだのですが、とても面白かったです。本に纏わるミステリーを栞子がどんどん謎を解いていくというストーリーなのですが、私も本が大好きなので、知っている本が出てくると嬉しくて。ハラハラする部分もあり映画にしたら面白いなと思いました。

――三島監督とは『繕い裁つ人』以来の再タッグですが、いかがでしたか? 

黒木: 三島監督はとても丁寧でありながらも大胆な方です。少し男性っぽい部分も持ち合わせていらっしゃって、私がお芝居で迷ったときには、「じゃあ、こうしてください」とスパっと決めてくださるんです。演出に迷いがないのでどんどん引っ張ってくれる監督です。

――三島監督は、黒木さんの声が魅力的だと仰っているそうですが、どのように役作りをしていったのでしょうか?

黒木: 栞子は人とコミュニケーションをとるのが苦手で普段は少し伏し目がちなのですが、本のことや興味のあることになると人の目を見て、生き生きと話始めるところなど、細かいクセや動きを監督と相談しながら作りました。また、本を読みきかせるシーンでは、相手に聞き取りやすく読むことを気をつけました。謎を解決していくシーンでは、アナウンサーの方のように、ハキハキ話すというよりは、滑らかに、その状況をなるべく豊かに話すことを心がけました。栞子はたくさんの本を読んでいて想像力や表現力が豊かなはずなので、ただ訥々と話すだけではなく、栞子のパーソナルな部分が出ればいいなと思いました。

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――本の世界に入ると自我を忘れるような、少し変わったヒロイン像でしたが、黒木さん自身は栞子さんと共通するところはありますか?

黒木: そうですね、本を読んでいると時間を忘れてしまうというのは似ている部分かもしれません。私自身も本を読むのが大好きで、移動中や時間が空いた時によく読みます。ちなみに今読んでいるのは、湊かなえさんの『未来』です。本屋も大好きでジャケ買いもします。そういう意味では栞子の「本の方が大事」という気持ちは少し理解ができますね。本が好きなの人の気持ちはすごく分かるので演じ易かったです。

――今回共演した野村周平さんとの共演についてはいかがでしたか?

黒木: 私が人見知りなので、ご一緒する前は「仲良くなれるかな」と思っていましたが、野村さんがよく話しかけてくださったので、とても楽しかったです。すごく気を使うのが上手な方で、三島監督とも初めて仕事されるとは思えないくらい仲良くて(笑)。でも、その雰囲気がすごく現場を明るくしてくれて。やはり雰囲気が良いと皆が密になっていくので、その空気感が映画の中に出ている気がします。栞子の心を開ける人が大輔だったように、私も野村さんの明るさに引っ張られてちょっと心が開きました(笑)。

ずっと図書館にいた学生時代「太宰治の本に共感しました」

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――古本屋もお好きですか?「ビブリア古書堂」は本好きにはたまらない古本屋ですよね。

黒木: そうですね。特に古本屋さんはその人の個性が出ますよね。揃えられている本が、自分の好きな本に近いものだと、この人と多分気が合うだろうな、とか(笑)。大学が京都だったのですが、京都は古本屋さんが多くて「ガケ書房」にもよく行っていました。あと古本屋の匂いも、結構好きなんです。

――今回、栞子さんを演じられて本の見方などが変わったりされましたか?

黒木: 私は好きな人の本ばかり読んでいて、エッセイや伝記はあまり読んでこなかったんですが、栞子は様々な本を読んでいる分、本の知識がとにかくすごくて。三島監督も本好きな人で、作家の背景までも掘り下げて読まれていて、知識が豊富で、そういうところは見習いたいと思いました。

――本好きの黒木さんですが、本屋さんに行く場合、どのコーナーから攻めるなどはありますか?

黒木: 本屋さんで見てまわる順番って難しいですよね。例えば新宿の紀伊国屋でしたら、上の階から攻めていき、徐々に降りていきますね。最近は小説以外もいろいろと読もうという気になっているので、いろいろ見ているんですが、気がつくと小説のフロアでずっとグルグルしているんです(笑)。小説のフロアでは、海外の作品もチェックします。ハードカバーのコーナーをチェックして、文庫本のフロアを見ていきますね。あと書店員さんが書かれているポップとかを見るのがわりと好きで、そこもチェックしています。

――もし自分で古本屋を経営するならどんな本を並べたいですか?

黒木: 自分の本棚って結構恥ずかしいですよね(笑)。なんだろう…、でも純文学ですかね。太宰治が好きなので太宰を多めに置いちゃうかもしれません。私が好きな昔の作家の本とか、そういう方の本を多く並べて、またその作家の方に纏わる話が書いてある本とかも一緒に並べたりしたいですね。実際、私は気に入った作家さんの本を全部制覇したり、飽きるまで読むことが多いんです。ミステリーやホラーなど、その時々で自分の中で流行っているものがあります。

――ちなみに太宰治はいつ頃から好きだったんですか?

黒木: 最初に読んだのは、学校の課題図書だったと思います。私ずっと図書室にいたんですよ(笑)。小説って想像力をかきたててくれると思うのですが、そのなかでも太宰は、そのネガティブさに惹かれて。中学高校くらいだったと思います。自分自身も明るい方じゃなかったので、ちょっとその…ぬるい部分が自分に似ているというか、共感してしまったんですね(笑)。そこから太宰が好きになりました。なので、栞子と通じるところはあります。

――ありがとうございました!

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ストーリー

 すべては一冊の本をめぐる祖母の遺言から始まった――。

 鎌倉の片隅にひそやかに佇む古書店「ビブリア古書堂」。過去の出来事から本が読めなくなった五浦大輔(野村周平)がその店に現れたのには、理由があった。亡き祖母の遺品の中から出てきた、夏目漱石の「それから」に記された著者のサインの真偽を確かめるためだ。磁器のように滑らかな肌と涼やかな瞳が美しい若き店主の篠川栞子(黒木華)は極度の人見知りだったが、ひとたび本を手にすると、その可憐な唇からとめどなく知識が溢れだす。さらに彼女は、優れた洞察力と驚くべき推理力を秘めていた。栞子はたちどころにサインの謎を解き明かし、この本には祖母が死ぬまで守った秘密が隠されていると指摘する。それが縁となって古書堂で働き始めた大輔に、栞子は太宰治の『晩年』の希少本をめぐって、謎の人物から脅迫されていると打ち明ける。力を合わせてその正体を探り始めた二人は、やがて知るのであった。漱石と太宰の二冊の本に隠された秘密が、大輔の人生を変える一つの真実につながっていることをーー。

 映画『ビブリア古書堂の事件手帖』は11月1日より公開

(c)2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

取材・テキスト:編集部

撮影:You Ishi

ヘアメイク:新井克英

スタイリスト:島津由行

映画『ビブリア古書堂の事件手帖』11月1日全国ロードショー
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