2004年にオンエアをスタートした「ふたりはプリキュア」。タイプの違う女の子同士が手を取り合い、パンチやキックで戦う斬新な設定が子どもたちの心をとらえ、以来、15作続く人気シリーズに。2018年、15周年という節目の年に、歴代プリキュア55人が集う『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア・オールスターズメモリーズ』(「・」は正式にはハートマーク。以下、オールスターズメモリーズ)が10月27日(土)から全国公開される。現在テレビ放送中の「HUGっと!プリキュア」(以下、はぐプリ)で主人公・野乃はな/キュアエールを演じる引坂理絵と、「ふたりはプリキュア」で美墨なぎさ/キュアブラックを演じた本名陽子、最新のプリキュアと“初代”プリキュアを演じる声優2人に、意気込みやアフレコ秘話までを聞いた。
パンチやキックで立ち向かう姿がすがすがしかった“初代”プリキュア
――最新映画で、初代プリキュアと最新のプリキュアが共演。このアイデアを聞いたときはどう思われましたか?
引坂理絵(以下、引坂):不思議な感覚でしたね。私自身、放送当時、「ふたりはプリキュア」を一視聴者として楽しんでいました。同じ「プリキュア」シリーズで私もプリキュアになって、さらにそこで、自分が見ていた「ふたりはプリキュア」でプリキュアを演じていた本名さんたちと共演する。想像もしなかったことでした。アフレコ現場で本名さんのお声を聞いた瞬間、一視聴者として見ていた昔の自分に戻っていくような感覚もあって、不思議でした。
本名陽子(以下、本名):今までもプリキュアたちが大集合する「映画プリキュアオールスターズ」シリーズに出演させていただいたことはありました。けれど、2016年の『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』以降、残念ながら全員が揃うことはなかったんです。それが今回、55人のプリキュアたちが集まり、タイトルに「ふたりはプリキュア」という冠まで付いて出演できるなんて! しかも、映画にさきがけて、「はぐプリ」のテレビ放送にもキュアブラックとしてゲスト出演させていただきました。もう、想像をはるかに超えた事件のようです。こんなことってあるんだなと、喜びと緊張でいっぱいでした。
――引坂さんは子どものころから、「ふたりはプリキュア」のファンだったのですね。当時、本名さん演じるキュアブラック、そのパートナーで、声優のゆかなさんが演じる雪城ほのか/キュアホワイトのことを、どのようにご覧になっていたのでしょうか。
引坂:かっこいいなと思いながら観ていました。小さい頃からアニメを見ていましたが、女の子が拳で敵に立ち向かっていく姿は見たことがありませんでした。しかも、キュアブラックとキュアホワイトの年齢と私自身の年齢が近かったので、等身大の女の子として羨ましかったです。
――憧れのキャラクターなんですね。
引坂:私はすごく引っ込み思案だったんです。なので、とくにキュアブラックに憧れていました。はつらつとした姿が、自分にはない要素だったので、「あの格好よさが自分にもほしいな」と当時思っていました。
55人のプリキュアが揃うアフレコでは、とにかく必死
――そんなお2人が共演。アフレコで印象的だったことはありますか?
本名:今までの『映画プリキュアオールスターズ』シリーズですと、収録日数2日ほどだったのですが、今回は製作の都合上、1月と8月にアフレコが行われました。1月といえば、「はぐプリ」の収録が始まったばかり(オンエアは2月スタート)。アフレコの中で、「はぐプリ」の声優陣のチーム力がどんどんアップしていくのを、間近で見られてすごくうれしかったですね。実は、私には3歳の娘と1歳の息子がいて、「はぐプリ」からテレビシリーズを見始めたんです。だから、二重の喜びがありました。
――アフレコのときは、何か2人でお話されたのでしょうか?
本名:アフレコ中は演じることに集中してしまうので…。ね?
引坂:そうなんです。収録中は必死でした。「作品に対して何ができるか」というプレッシャーがあって。
本名:とくに1月のアフレコ時は緊張しているだろうなと思いましたし、いろんな想いを邪魔しちゃいけないので、ご挨拶程度に。収録後、みんなで食事に行って、そこでお話しました。そこでも緊張していたよね。
引坂:めちゃくちゃ緊張していました! 「はぐプリ」が始まってすぐに、「秋に映画をやるんだよ。プリキュアが55人出てくるんだよ」と言われて、「おおー!」と思っているうちにアフレコがあり、そのままの流れで、「ふたりはプリキュア」で主演された方々とご飯を食べに行くことになるなんて……。すべて現実味がなくて(笑)。ずっと緊張しっぱなしでした。
――映画では、本名さん演じるキュアブラックと、引坂さん演じるキュアエールの共闘がクローズアップされています。引坂さん、憧れのキュアブラックとの共闘はいかがでしたか?
引坂:私自身としては、キュアブラックはやはり憧れの存在でときめきがあるんですが、はなちゃん(キュアエール)にとってキュアブラックは憧れの存在ではなくて、「まだ見ぬプリキュア」なんですね。なので、リスペクトというよりは、はなちゃんなりの戦い方を意識して、演じさせて頂きました。
――本名さんは、この映画でキュアブラックを演じるにあたって、気を付けたことは?
本名:なぎさ(キュアブラック)と出逢ってから14年がたっていますが、作品の中では中学3年生のまま。「ふたりはプリキュア」を見てくださっていた方の心に自然に入っていけるように、これまでと変わらず全力でなぎさ/キュアブラックと向き合いました。
――55人のプリキュアが一堂に会してのアフレコ。どんな雰囲気だったのでしょうか。
本名:「プリキュア」シリーズの収録は、お菓子が豊富で、休憩時間になると、みんなでお菓子を選んでは笑顔の花を咲かせています!これを食べたら頑張らなきゃって思いながら (笑)。収録が始まると真剣な空気に包まれますけど。
引坂:必死過ぎてもう…。必死だったという記憶だけは残っているんですけど。
本名:何しろ55人のプリキュアたちが登場するので、さすがに引き画になると「これは…誰?」ってなることもありまして(笑)。アフレコ前にいただいた映像を家で確認するのですが、気になる箇所はコマ送りで、さらに現場でも再確認をします。また、マイクの数は限られているので、「このマイクに入ります!」とお互いアイコンタクトをとりながら、マイク位置を決めてアフレコを進めていくんです。
――引坂さんは、そんな中で作品を引っ張っていかれたわけですね。
引坂:私はもともとテンパリ症なところがあるんです。まず、「はぐプリ」本編の収録が始まったあたりから、何も食べられないぐらいの緊張状態が続いていました。その最中に、この作品のアフレコが始まったんです。まず、「はぐプリ」という作品を盛り上げていかなければならない。そしてこの55人の中で、先頭切って頑張らなきゃいけない。はなちゃんとして何ができるんだろう、私がみんなを魅力的に見せられるんだろうかと考えて、1月の収録では、不安でいっぱいでした。
――8月の2回目の収録では、変化が?
引坂:後半を録ったときには、はなちゃんを演じ始めてから時間も経過していますし、物語の中ではなちゃんもキャラクターとして成長しているので、最初の頃と比べたら多少落ち着いては来ました。とは言え、成長した姿の表現を、どこまでできるか…。テレビシリーズの収録と映画のアフレコでは、びっくりするぐらい雰囲気が変わるので、そこに緊張することもあって、また必死になっていましたね。
――本名さんからご覧になって、そんな引坂さんはいかがでしたか?
本名:私もそうでしたから、引坂さんの気持ちが痛いほどわかりました。私なんか今でも緊張しちゃうことがあるので(笑) 最初から引坂さん演じるはなちゃんはとても魅力的でしたし、チームの中で築いていくものもあるので、とにかく見守っていこうと決めていました。チーム全員で声を合わせるセリフって、特に難しいんです。ただ呼吸を合わせるだけじゃなく、本当に心を合わせて想いを込めないとセリフって届かない。新シリーズがはじまるたびに、苦戦するところなので、はぐプリの皆さんも最初はすごく悩まれたと思うのですが、引坂さんの呼吸にみんなが合わせていく、「はぐプリ」ならではのチームワークを見たとき、とても嬉しくなったのを覚えています
引坂:みんなに支えていただいています!
みんなで必死になって作り上げた「ふたりはプリキュア」
――チームワークといえば、「ふたりはプリキュア」は、本名さん演じるキュアブラックとゆかなさん演じるキュアホワイトの関係も大きな見どころでした。どんなチームだったのでしょう。
本名:私たちの関係って、ちょっと特別なんです。連絡を常に取り合うわけではないんですね。必要なときに連絡を取り合って、思いを再確認して「頑張ろうね」っていう。でも心はいつもつながっている…それが「ふたりはプリキュア」のチームカラーでした。お互いが背中を合わせて、外に向かっているような。いわば盟友みたいな感じなんです。
――おふたりならではのタッグですね。
本名:「ふたりはプリキュア」はスタッフもそんな感じです。みんな作品への思いが半端じゃなかった。倒れるまで全力でやっていました。また、オリジナル作品ということもあり、私やゆかなさんちょっとしたエピソードを作品に盛り込んでいただいたこともあります。だから、なぎさというキャラクターは、どんどん私そのものになっていきましたし、今も心の中になぎさがいるんです。収録後は、決まってみんなで食事に行き、そこでも自然と作品の話になりました。「中学時代、合唱コンクールって盛り上がった?」なんて話題から、合唱のお話が作られたり、冬服のコートの色合いや、髪の揺れ動きなど細部に至るところまでみんなで創っていく現場でした。こういう稀有な作品に出逢えたことは、私にとって一生の宝です。
――本名さんご自身は、「ふたりはプリキュア」を見返すこともありますか?
本名:毎日のように娘と見ています。自分としてはちょっぴり恥ずかしさもあるんですけど(笑)。
新旧「プリキュア」ファンの架け橋になれる映画
――今回の『オールスターメモリーズ』は、プリキュアたちが敵の攻撃で赤ちゃんになってしまったり、長編映画では初のフルCGになったりと、新しいチャレンジがたくさんある作品ですね。
本名:こんなチャレンジに取り組むなんて、スタッフの皆さんの体が心配で! その皆さんの思いを受けて、私たちも本当に頑張らなきゃいけないなと思いました。とにかく、命をこめて吹きこませていただきました。
引坂:この作品を作りあげよう! この15周年を盛り上げていこう! というスタッフさんの心意気が素敵で、そこに一員として加われるのもうれしいことです!! 15年分の「ありがとう」を込めた作品だと思うので、私自身もできる精一杯で演じさせて頂きました。
――5月には、本編に先駆け、プリキュアたちがダンスするエンディングが公開されました。
本名:しかも、エンディング曲は、「ふたりはプリキュア」の主題歌「DANZEN! ふたりはプリキュア」! もう本当にうれしくてしょうがなかったです。「ふたりは~」の時は、CGで描かれたキャラクターが踊る、エンディングのダンスはなかったんです。「踊るとこうなるんだ!」という驚きと喜びがありましたね。実は、この映画が娘の映画館デビューになる予定なので、一緒に楽しみたいと思っています。
引坂:娘さんに応援してもらえるなんて、すてき! すごくうらやましいです!
――おふたりが考える、映画の見どころは?
本名:なぎさとほのかの絆です。ほのかへの思いを吐露するシーンは、今思い出してもグッときてしまうほどです。私たちはふたりじゃないと変身できないんです。今までのシリーズでも離れ離れになることはありましたが、今回は、ほのかがミデンに想い出を奪われ、ちっちゃくなってなぎさのことを忘れてしまうのですが、それが言葉にできないほどの辛さでした。そこからどう立ち上がっていくのか……なぎさとほのかの強く結ばれた絆をぜひご覧ください。
引坂:キュアエールがキュアブラック、キュアホワイトと一緒に戦うシーンがあります。それは、15周年のこの作品だからこそできること。作品の垣根を越えた戦いを、ぜひ劇場で見ていただけたらなと思います。
――作品を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします!
本名:15周年ということで、小さい頃「ふたりはプリキュア」を見てくれていた方々が、人生の岐路に立つ頃なんですね。きっと、進路で悩む人や、職場で大変な思いをしている人もいることでしょう。なかには、ママになった人もいるかもしれません。そういう世代に向けても、メッセージ性がある映画になっています。演じる方としては、だからこそ責任重大だなとも感じています。この映画を見て、「明日からまた、ちょっと頑張ろうかな」と思ってもらえたらうれしいですね。ぜひひとりでも多くの方に見ていただきたい気持ちでいっぱいです。
引坂:15周年で、55人のプリキュアが勢ぞろい。今、「はぐプリ」を見ている子たちは、ほかにもこんなプリキュアがいるんだと知ることができますし、逆に、昔見ていた人たちが、この映画で最近のプリキュアを見て、「今、こんな子たちがいるんだ。ちょっと見てみようかな」と思うかもしれない。みんなを繋ぐ、いわば架け橋になれる作品だと思います。これだけのプリキュアが揃うのもすごいことですし、映画館に立ち寄っていただけたら嬉しいなと思います。
『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ』は10月27日(土)より全国公開
テキスト:仲川僚子
撮影:岡田誠
ストーリー
中学2年生の野乃はなは、突然現れた不思議な赤ちゃん・はぐたんとの出会いをきっかけに、プリキュアに変身! 仲間たち5人ではぐたんのお世話をしながらプリキュアとして戦っている。ある日、ピクニックに出かけた5人は、巨大なてるてる坊主のような怪物・ミデンに襲われてしまう。はなたちはプリキュアに変身して戦うものの、なぜか歴代プリキュアの技を使いこなすミデンに苦戦。そのピンチに駆けつけたのは、「ふたりはプリキュア」のキュアブラックとキュアホワイト。しかし、攻撃を受けたプリキュアが次々とちっちゃくなってしまい!? しかも、ちっちゃくされたプリキュアは、記憶も技も奪われていた。はなは、仲間たちの大切な想い出を取り戻すことができるのか!?
(C)2018映画HUGっと!プリキュア製作委員会(ショートVer.)
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