日本最古の歴史を持つ劇場『南座』の新開場を記念する「開場式」と「南座新開場祇園お練り」が10月27日、京都にて行われた。

10月27日、400年を超える歴史と伝統をもつ南座の新開場を記念する「開場式」が開催され、総勢100名の歌舞伎俳優が舞台上に登壇。招待された約1000名の来賓に向け挨拶した。続く「南座新開場祇園お練り」では、中村時蔵ほか総勢69名の歌舞伎俳優が、南座から南座の氏神様である八坂神社前までの約400メートルに及ぶ四条通を練り歩き、集まった約15000人の観客とともに南座新開場を祝った。

開場式では、総勢100名の歌舞伎俳優が勢揃い。座元である松竹株式会社から囃子方に大太鼓の撥が渡され、「一番太鼓」の響きによって南座の開場が告げられた。そして始まった開場式は、11月の吉例顔見世興行で襲名披露を行う二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎による『寿式三番叟』の上演で幕を開けた。

南座の紹介映像と休憩をはさみ、再び幕が上がると、舞台上には坂田藤十郎を始めとする総勢100名の歌舞伎俳優たちや松竹株式会社代表取締役会長の大谷信義、松竹株式会社代表取締役社長迫本淳一などがずらりと揃い、招待された約1000名の来賓に対して挨拶した。
藤十郎は「これからも南座が幾久しく栄え、京の伝統文化として、また我が国が世界に誇る劇場として、愛され続けることを願ってやみません」と強い気持ちを述べると、それに応えるかのように場内は大きな祝福の拍手に包まれた。結びに、歌舞伎俳優と客席一体となって手締めが行われ、新開場する南座の素晴らしい門出となった。

続いて、場所を南座正面の四条通に移し、歌舞伎俳優ほか総勢約150名による「南座新開場祇園お練り」が開催された。歌舞伎俳優だけでも総勢69名と、5年前の歌舞伎座新開場の際のパレードの参加人数を超えており、歌舞伎発祥の地・京都のイベントとしてふさわしい豪華で華やかな顔ぶれが勢揃いした。

四条通の全面交通規制が実施されることは祇園祭を除いては極めて異例であり、京都府、京都市、祇園商店街など地域の人々の全面協力の元開催された、近年まれにみる一大イベントとなった。
直前に行われた出発式では、その来賓および主催者である京都府知事の西脇隆俊氏、京都市長の門川大作氏、祇園商店街振興組合理事長の北村典生氏、松竹会長の大谷信義から、京都のさらなる発展につながる言葉がかけられた。また、祇園五花街の舞妓10名も華やかに彩りを添え、松竹社長迫本淳一の合図で特殊効果の金銀テープが祝砲から発射されると、華々しくお練りがスタートした。

時蔵、雀右衛門、又五郎を先頭とした69名の歌舞伎俳優は、沿道のファンやビルの中から手を振る人々に、にこやかな笑顔で応えていた。今年、親子三代での襲名を果たした松本幸四郎は、この世紀のお練りに参加した感想について「ものすごい人の数で驚きました。参加した歌舞伎俳優の数もそうですが、こんなお練りは初めてです」と興奮した様子で語った。さらに「11月に襲名公演をこの南座でやらせていただくのですが、新しく生まれ変わったこの南座の最初の1ページを刻むと考えると責任を感じます」と話し、「やっと灯った南座の火を消さないように、精一杯頑張りたいです」と意気込みを語った。
この日の南座開場式に出席し、南座のステージに初めて立った市川染五郎は、「きょう初めて南座の舞台に立たせていただいて、お客様との距離が近いと感じました。11月からの襲名公演では、お客様と一体感のある芝居をしたいです」と語った。また、今後の目標について聞かれた松本幸四郎は「新しいことに挑戦していきたいです。心身ともに鍛えて歌舞伎の可能性を広げるべく、チャレンジしていきたいです」と話し、息子の市川染五郎については「“お芝居をする”歌舞伎役者になってもらいたい。相手の役者さんと芝居で会話ができる歌舞伎役者になってもらいたいです」とうれしそうに語った。

集まった約15000人の観客と共に、俳優たちもこの“世紀のお練り”を楽しみながらゆっくりと四条通を練り歩き、熱気冷めやらぬうちにお練りは終了した。
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