10月29日、東京国際映画祭にてワールドプレミア・レッドカーペットイベントが実施され、11月16日(金)に公開となる東野圭吾原作の映画『人魚の眠る家』より、篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中泯(完成披露舞台挨拶のみ)、堤幸彦監督が登壇した。
累計100万部を突破した東野圭吾のベストセラー小説『人魚の眠る家』を原作に、『SPEC』シリーズや『天空の蜂』の堤幸彦監督が主演に篠原涼子を迎えた映画『人魚の眠る家』が、11月16日(金)に公開される。
それに伴い10月29日、現在開催中の東京国際映画祭にてワールドプレミア・レッドカーペットイベントを六本木ヒルズアリーナで開催し、主演の篠原涼子、共演の西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中泯(完成披露舞台挨拶のみ)、そして堤幸彦監督が登壇した。
本作は、プールで溺れて意識不明になり、回復の見込みのない我が子を生かし続けるか死を受け入れるか。過酷な運命に翻弄される播磨薫子(篠原涼子)と夫の和昌(西島秀俊)の下した決断が、家族だけでなく周りの人間も巻き込み、誰にも予想できない方向へと進んでいく衝撃と感涙のヒューマンミステリー。
本作の予告編が流れた巨大LEDパネルが左右に開き、キャストと監督が登場すると、会場は悲鳴にも似た大きな歓声に包まれた。「とても切ないテーマではありますが、東野圭吾先生の原作なので、クライマックスまでどうなるかわからない、ハラハラする見応えのある作品になっています」という篠原の挨拶から始まると、篠原演じる薫子の夫として共演した西島は「とても深い深い、狂気すら帯びる母の愛がテーマの素晴らしい感動作で、ついにワールドプレミアで皆さんに観てもらえることに非常に興奮しています」とワールドプレミアを無事に迎えられた喜びを語った。
続いて播磨夫妻の娘・瑞穂の延命治療に協力する技術者・星野を演じた坂口健太郎が紹介されると、観客の女性陣からはこの日一番の黄色い声援が。坂口は「作品を初めて観たときにいろんな感情が自分の中に残ったので、観客の皆さまにもいろんな感情で見てもらえたらうれしいです」とコメント。星野の恋人・真緒を演じた川栄は「私自身この映画を観て本当号泣してしまって、こんな素晴らしい作品に出演してお芝居をできたことが光栄です」と感涙必至の作品であることをアピールした。
出演のオファーをもらった当初は実は出演をためらっていたという篠原は、「なぜ本作への出演を決めたのか」と聞かれると、「いろんな思いがあったけれど、主人が『こんな素晴らしい作品をやらないのは損だよ』と背中を押してくれて。それでもう一度ちゃんと読んでみようと思いました」と俳優であり夫の市村正親に背中を押されたことがきっかけとなり、改めて原作を読み直した結果、本作に出演したいという気持ちが固まったという秘話を明かした。
そして話題は、母親である薫子が我が子を守りたいという強い気持ちゆえに常軌を逸した行動をとる、衝撃のラストシーンについての話題へ。鬼気迫る演技をしていた篠原について、西島が「段取りの段階で号泣していて、撮影も2日くらいこのシーンの撮影をしていたので大丈夫かなと心配だったんですが、篠原さんをはじめ、現場のみんながすさまじい集中力で、子役の子もカットがかかっても泣きやまないくらいのめりこんでいて……。みんなで抱き合いながら、お互い慰めながら撮影していました」と撮影当時の様子を振り返ると、薫子の妹・美晴役として現場にいた山口も「薫子の感情の爆発を目の当たりにしていたら途中息ができず、めまいを起こしてしまうくらい大変でした。でもとにかく素晴らしくて、今思い出しても目頭が熱くなります」と撮影後は自身もぐったりしてしまうほど壮絶な撮影だった様子を明かした。
堤監督が「クライマックスシーンが素晴らしく、客観的に冷静に見ないといけない立場だが、今回はそうできなかったほどキャストの演技が素晴らしかった。生きること死ぬことにまつわるテーマ、メッセージが伝わる作品になっています」と締めくくり、篠原&西島、川栄&坂口、山口&堤監督のペアで男性陣が女性陣をエスコートする形でレッドカーペットに降り立った。そして大歓声の中、サインや握手を求めるファンとの交流を楽しみながらレッドカーペットを歩いた。
今回の東京国際映画祭からオープニング作品、クロージング作品と並ぶ新設部門「GALAスクリーニング作品」として上映される『人魚の眠る家』だが、その上映に先立ち、完成披露舞台挨拶がTOHOシネマズ六本木にて開催された。レッドカーペットを歩き終えた篠原涼子、共演の西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、堤幸彦監督に加え、ここからは西島秀俊演じる和昌の父親・田津朗を演じた田中泯も登壇。
MCに役名と共に紹介された田中は、「紹介されて、いま映画の中の私の名前をやっと思い出しました」とコメントし、会場を笑わせた。その上で本作について「この映画で描かれる、本質的に持っている人間の喜怒哀楽の渦というんでしょうか、その影響を受けて、役名を忘れても私個人の中で答えのない質問が頭の中ぐるぐる駆け巡っています。みんなが考えて、何か答えを見つけなくてはならないんだなということを、この映画は提案してくれているのではないでしょうか」と本作のテーマでもある“答えのない問いにどのように向き合うのか” についてコメントした。
共演は3度目、映画では初共演となる篠原と西島だが、本作では離婚寸前のすれ違う夫婦を演じていることについて聞かれると、作品を通して2人の共演する作品は必ず「篠原が西島を振り回す」という共通点があることが発覚。しかし本作では、お互いが実際に家族を持ってから初めての夫婦役ということで、「すごくお互いいろんな話をしたし、考えさせられることがありましたよね」と感慨深げに語り、西島は実際に母になった篠原の母親の演技について「実人生で積み重ねて来た演技の重みというか、深さを感じられました」と絶賛した。
篠原を筆頭に、出演者が全員圧倒的な迫力の演技を披露している本作だが、演出についてどういった点に苦労したか聞かれた堤監督は「作品のストーリーにおける出演者の感情を順番に形作ることが大切だと思ったので、今回はほぼ順撮りといって、物語の始まりから順番に撮っていく方法をとりました」と撮影でのこだわりを述べ、「だからこそ丁寧に感情を表現することができたと思います」と本作への自信を覗かせた。
シビアなシーンがあるものの、和気あいあいとした雰囲気で進んだという本作の撮影現場。各登壇者、楽しかった思い出を聞かれると、山口は「回想のシーンで子どもたちと一緒に庭で鬼ごっこをしたんですが、服がびちょびちょになるくらい汗をかいて遊びました」と子役とたくさん遊んだ思い出を語り、川栄は坂口とのデートシーンでもんじゃを食べていたシーンを挙げて「坂口さんはカットがかかってもずっともんじゃ焼きを食べてました」というエピソードを披露。会場も和やかな空気となった。
最後に「たくさん作品を撮ってきましたが、自信を持って皆さんにお届けできる作品となっています。ただ、この作品の答えはひとつではありません。ご覧になった方によって作品の印象が変わってくるかと思いますが、ぜひそれぞれの立場で観ていただきたいと思います」と堤監督が挨拶をすると、主演の篠原が「本当に最後まで、思いっきり泣いていただきたいと思います!」と力強く締めくくり、舞台挨拶は幕を閉じた。
ストーリー
2人の子を持つ播磨薫子(はりま・かおるこ:篠原涼子)とIT機器メーカーを経営する夫・和昌(かずまさ:西島秀俊)。娘の小学校受験が終わったら離婚すると約束した夫婦のもとに、突然の悲報が届く。娘の瑞穂(みずほ)がプールで溺れ、意識不明になったというのだ。回復の見込みがないわが子を生かし続けるか、死を受け入れるか。究極の選択を迫られた夫婦は、和昌の会社の最先端技術を駆使して前例のない延命治療を開始する。治療の結果、娘はただ眠っているかのように美しい姿を取り戻していくが、その姿は薫子の狂気を呼び覚まし、次第に薫子の行動はエスカレートしていく。それは果たして愛なのか、それともただの欲望なのか。過酷な運命を背負うことになった彼らの先には、衝撃の結末が待ち受けていた――。
(C)2018「人魚の眠る家」