10月31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催中の東京国際映画祭にて、特別招待作品『ハード・コア』の上映とQ＆Aセッションが実施され、原作者のいましろたかし氏と山下敦弘監督が登壇した。
伝説的コミックとして知られ、山田孝之と山下監督の盟友コンビが、愛読していた「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」を完全映画化した本作。都会の片隅で細々と生きる権藤右近を山田孝之が、右近と共に埋蔵金探しの仕事をする牛山を荒川良々が、そして右近の弟・左近を佐藤健が演じる。
原作の作画を担当したいましろ氏は、「パンフレットにも書いたんですけど、途中でポシャるんじゃないかと思っていました(笑)。難しい作品だと思います、やっぱり。漫画でも前半と後半で印象が変わる作品なので、1本の映画にまとめるのは綱渡りだと思っていました」と内心を吐露。山下監督は「8年くらい前に山田君と意気投合して、実際には5年前から企画が動き出しました。長い時間をかけて実現した作品です」と映画化の経緯を話した。
また、現場の雰囲気については「松たか子さんが出てくるファーストシーンがまさに撮影初日で、初日は女優さんもいて和気あいあいとしていたんですけど、そこから男だらけになってって。基本男だらけで、あとはロボットで、すごく男くさい現場でしたね」と山下監督。
「既にキャリアを積んでいる豪華なキャストの面々に演技指導はするのか」とMCから問われると、「演技指導とかそういう感じはないですが、こういうことはやりたい、という自分のプランは伝えますね。クランクイン前になんとなく話はするので、それで彼らが用意してきたものについて違ったらいうだけ。基本的には彼らが作っていきました」と制作過程についても説明した。ちなみに、ロボットのスーツは撮影当日まで届かなかったそうで、「ロボットは届いた撮影当日に動きを決めて、やりながら作っていった感じ」だったそうだ。
続いて、観客からの質問を受け付けると、「佐藤健さんが今までにないイメージのキャラクターだったと思うのですが、起用したのはなぜですか」との声。すると山下監督は「僕の中で原作に近かったというのもあるんですけど。いやらしい話なんですけど、山田君と仲がいいというのも知っていたので(笑)。呼吸も合うので、兄弟というのが合うと思いましたし、楽しんでやっているという感じが伝わってきました」と、Q＆Aセッションならではの回答が飛び出した。
さらにいましろ氏に「漫画と映画でイメージが違うなと思うことは？」と問うと、「一期一会というか。映画と漫画は全然別なんで、これはこれで楽しめればと思う」と回答。
そして「今までの他の作品のように山田孝之さんと意見が食い違ったことはありましたか」との質問が出ると「今回は監督と主演という形だったので」と、関係は無事だった様子。「(2015年放送のドキュメンタリードラマ)『山田孝之の東京都北区赤羽』や『山田孝之のカンヌ映画祭』のときは位置的に横にいたのですが、今回は距離感もあって喧嘩みたいなことはなかったです。大丈夫でした」と観客を安心させた。また、プロデューサーとして名を連ねる山田は「原作が好きだったので原作を守る人、チェックする人という感じ」だったそうだ。
最後は、もう一人の原作者であり、今年1月に亡くなった狩撫麻礼氏について「狩撫さんと会ったのが25年以上前。今年の初めに亡くなってしまったんですよね。声をかけてくれなかったら、この漫画も映画もできていなかった。(物事は)何気ないことから始まるんだと思います」といましろ氏。「(作品のラストは解釈が難しいが)理屈ではなく、詩的なものが好きな方でした」と、しみじみと語っていた。
テキスト・写真：ayumi
