スポーツフィッシングの代名詞であるバスフィッシング界において、異彩を放つアングラーがいる。北大祐だ。
北のトーナメントの成績は、日本最大のトーナメント団体JBトップ50で通算4勝、年間優勝(A.O.Y.)2回、JBエリート5、JBスーパークラシック優勝と、JB関連のタイトルはすべて制覇。また、バサーオールスタークラシックも2016、2017年連覇と、招待選手としては申し分なく、最強のトーナメンターと言っても過言でない。
しかし、いま北は以前のようなトーナメンターではない。2018年新春、JBトーナメントからの引退を発表。現在は自らのブランド、ペイフォワードを起ち上げ、メディアやイベントでの活動、契約メーカーのタックル開発に携わるバスプロとして活動している。北の釣りはトーナメンターそのものだ。本来はクランクベイトやスピナーベイトなど、パワー系の巻き物が得意で、クランクベイトにいたっては国内外の市販品からインディーズまで、知識と経験はマニアのレベルに達している。
しかしトーナメントでは過度なプレッシャー下でも口を使わせる“食わせの釣り”がメインとなることが多く、またそれを使いこなせる器用さも持ち合わせてはいるが、食わせの釣りオンリーではない。実際にバサーオールスタークラシックの連覇はクランクベイトがキーになった。また、バス釣りを浴びるほど楽しんだのは琵琶湖と言うように、ビッグベイトに代表される大型ルアーも武器になっている。また、現在参戦しているH-1トーナメントも、ハードルアーオンリーという嗜好性強い大会で、北のバーサタイルさを象徴している。
トーナメントとは文字通り競技、競い合う釣りだ。あらゆるルアーで釣れる可能性があるからこそ、バスフィッシングが他の釣りとは一線を画し、スポーツフィッシングとして認知されているが、そのシーズンによってバスが好きなルアーの傾向は存在する。
競技に勝つには、その傾向のあるルアーを磨き上げて突き詰めるか、さらに先を行くか。北の場合はおそらく後者だろう。普通にやったんじゃ釣れない。だからこそ情熱をもって試行錯誤を繰り返し、その先を目指す。あらゆるルアーを使いこなせるからこそ先を行くことで抜け目がなくなり、それが当然のように勝ちに繋がっていく。
しかし、それとは逆にトーナメントのプラクラティスでルアーを投げることはほとんどない。北が見ているのは水だ。
この水は魚を集めるのか。魚が動きやすい水はどこにあるのか。どう流れてどこにどう溜まるのか。多くのアングラーが1グラムでも重いバスが釣れるルアーを探すなか、時に流され時に漂い、水のおもむくままフィールドに浮かび、そこにある水を見つめ、ベストな水を探し、その水に最も適したルアーを頭に思い描く。
北にとって、ベストな水はどこにあるのだろう。いまは全身全霊をかけて取り組んだ世界から距離を置き、行くべき先を切り開いている段階だが、そんな折、AbemaTVで現在放送されている『AbemaTV presents WORLD CHALLENGE』(以下ワールドチャレンジ)に招待された。ワールドチャレンジとは、LeagueAとB、2ブロックの総勢8名によるリーグ戦。その勝者にはアメリカのトーナメント「B.A.S.S.バスマスターオープン」への参加権と年4戦の渡航費や滞在費をはじめ、大会エントリーフィー、ボートや車など、総額約2000万円のフルサポートが得られる夢へのチャレンジマッチだ。
その8名の参加者は国内トーナメントのタイトルホルダー5名とファン投票によるバスプロ2名、そして一般参加枠の1名と、すべてのバスアングラーとファンを巻き込んで、大々的に展開されている。ワールドチャレンジに北が招待されたのは偶然ではない。水はアメリカに向かって流れている。【text・コガネジュン】
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