厚生労働大臣官房統計によると、1980年代に比べて、子宮頸がんにかかる20代~30代の女性の数がおよそ3倍に急増している。病気に気づかず、処置が遅れ、命を落とすケースも後を絶たない。
SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜23時から放送中)では「あなたの知らない子宮最前線」をテーマに、実際に子宮頸がんを経験した女性たちが登場。学校では教えてくれない子宮頸がんの最新事情や、最新医療などを放送した。
産婦人科医の丸田佳奈医師によると、子宮のがんは子宮の入り口にできる「子宮頸がん」と、赤ちゃんを妊娠する中側の「子宮体がん」の2種類に分かれるという。この2種類のがんは丸田医師は「発生の機序(仕組み、メカニズム)も違い、同じ子宮がんでも全くの別物と思っていただいたほうがいい」と話す。
中でも子宮頸がんは若い女性に多く、8~9割がヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで子宮頸がんになる。
丸田医師「誤解しないでいただきたいのは、HPVは性交渉で感染しますが、性交渉をしたことがある人ならほとんどの人がかかっています。でも、だいたいの人は自分の免疫力でウイルスを排除できる。出産妊娠を経験しているならほとんどの人がかかっている可能性が高いけれど、自分で排除できているんです。ただ、ウイルスの量が多かったり、接触する機会が多かったりすると根付いてしまう。ウイルスが悪さをして良性の細胞が悪性の細胞へと変化してしまうのが子宮頸がんです」
一方で、未だに子宮頸がんに関する偏見も多い。たった1回の性交渉でもウイルスにかかる可能性があり、たとえ100回の性交渉をしてもウイルスが排除できてしまう人もいるのが現実だ。
(▲ハフポスト日本版、ニュースエディターの田中志乃さん)
番組の中でハフポスト日本版、ニュースエディターの田中志乃さんが「子宮頸がんに性交渉の回数は関係している?」と質問すると、丸田医師は、確率論として「性交渉の回数や人数が多ければ感染の確率は上がる」と述べた上で、ウイルスを排除できるかどうかはその人自身にかかっているため「HPVに感染したからと言って、性交渉の回数が多いとは言えない」ときっぱりと否定した。
子宮頸がんには、原因となる高いリスク型のHPVに対して免疫をつくる予防ワクチンが存在する。一時は積極的な接種が勧奨されていたが、ワクチンの副作用が問題視されるなど、賛否両論ある子宮頸がんの予防ワクチン。実際に産婦人科医は、この予防ワクチンについてどのような見解を持っているのだろうか。
HPVは約100種類あり、その中で子宮頸がんの原因とされているのは約15種類。ワクチンで防げるウイルスは2種類だが「その2種類のHPVが原因で、子宮頸がんになっている人が圧倒的に多い。その2種類さえ防げれば、子宮頸がんの60~70%程度は防げる」と丸田医師はいう。
「子宮頸がんの原因となるHPVの代表は16型と18型の2種類。HPVに感染したことがない人が、16型のワクチンを打てば予防率はほぼ100%」と丸田医師が話すほど、メリットも大きい子宮頸がんワクチン。丸田医師によると、欧米では公費でワクチンを負担し、大体的に打っているため若い世代から子宮頸がんがなくなってきているという。
2013年4月、日本で子宮頸がんワクチンが予防接種法に基づき定期接種化されたが、その後痙攣や疼痛など副反応の訴えがあったことから厚生労働省は「積極的な接種勧奨の差し控え」を通達した。
副反応について丸田医師は「打ったところが痛いという症状はよく起こること。(当時は)全身に電撃痛が走るなど『これってワクチンのせいなの?』という議論が起こった。未だに因果関係は証明されていないけれど、否定もできない。ワクチンが原因かもしれないけれど、ワクチンのせいだとも言い切れない」と話した。
丸田医師「今は研究が進歩して、日本産婦人科学会としては『子宮頸がんワクチンはメリットの方が圧倒的に大きいから打ちましょう』という見解になっている。明らかなのは、性交渉の経験がある人はHPVにかかっている可能性があって、性交渉の経験がない人はHPVにかかっていないということ」
さらに丸田医師は、自身もワクチンを打っていると告白し「ウイルスに感染して『子宮頸がんにかかってしまった』と言うと『性交渉したんでしょ』というイメージが先行してしまい、偏見から嫌なことを言われてしまう。でも大事なのは『性交渉が豊富だった』ではなく、ウイルスにかかっているという事実」と力説した。
(▲アイドルの夏目亜季さん)
23歳で子宮頸がんになったアイドルの夏目亜季さんも「子宮頸がんだと公表したら、男性からものすごく叩かれた」と当時を振り返る。「自業自得だ」などと叩かれた夏目さんは、心が傷付き、蕁麻疹だらけになってしまった。
夏目さんの話を聞いたSHELLYは「がんで苦しんでいる人に対して信じられない……」と驚きを隠せない。元NGT48メンバーとしてアイドル経験もあり、今は女優として活躍中の北原里英も「よくそんなこと言えますね」と夏目さんを傷つけた人たちに怒りをあらわにした。復帰した夏目さんはアイドルとしての活動だけでなく、自身の闘病体験を元に予防医学の講演活動も積極的に行っている。
※ 参考)子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために/日本産科婦人科学会
(C)AbemaTV
(AbemaTV『Wの悲喜劇』より)
(ライター/小林リズム)