国際的にも様々な波紋を呼んでいるカルロス・ゴーン容疑者の逮捕劇の疑問点について、24日に放送されたAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元検事の郷原信郎弁護士が解説した。
まず郷原弁護士は「普通は虚偽記載の事実で逮捕したという時には、何が虚偽記載なのかということと、犯罪の中身が明らかになるはずだ。それが1週間経っても全然分からない。それ自体が非常におかしいし、推測で勝手なことが報じられているが、それもコロコロ変わってきている。24日付の朝日新聞によれば、50億円の報酬というのは既にもらったお金ではなく、退任後に別の形でもらう約束だったお金。つまり、もらったお金でまだ逮捕されている容疑は40億円の部分だ。また、特別背任という話も出てきているが、その可能性は非常に低いと思う。特別背任とは、社長のような立場の人が自分の利益を得る目的で会社に損害を与える行為。ゴーンさんについて言われているのは、会社の投資資金で海外に不動産を購入し、それを勝手に自宅にしていたということだが、その不動産が会社の所有で価値があるのなら、損害は与えていないことになる。調べようと思えばそれぞれの国の政府に捜査協力してもらうしかないが、ゴーンさんが大統領になってもおかしくないというレバノン、ブラジルが、よく分からない犯罪で協力をするだろうか」と指摘。
その上で「犯罪としての実態が何なのかがわからなければ、何についての司法取引があったのかもわからない。現時点で検察は何も認めてないし、マスコミがそう言っているだけだ。少なくとも虚偽記載に関していえば、報酬が入ったこと、そしてそれを書かなかったことの両方があって初めて犯罪だ。この両方に関わっていて初めて"自分も犯罪者だから司法取引を"ということになる」とコメントした。
ルノーは緊急取締役会で日産とは違い、ゴーン容疑者のCEO解任を見送ることを決めた。郷原弁護士は日産の経営陣に対しても「そもそも問題となっている有価証券報告書は日産が会社として提出しているもの。そこにウソがあった場合、通常は会社の問題であって、個人の問題ではない。西川社長を中心とする日産の経営陣も今回の刑事事件に無関係ではない。これが有罪であれば、相当程度の犯罪性はあると思う。その人たちが中心にならざるを得ないという今の日産の体制というのは、非常に脆弱だ。ゴーンさん、ケリーさんは逮捕されたことをきっかけにして解任されたが、取締役会にも出られなかった。もし日産が内部調査の結果を報告し、"こんなにひどいことをやっていたのか"と皆が納得して解任に賛成したというのであれば、検察を使って逮捕なんかしてもらわなくても良かったはずだ。逮捕された事実がどんな事実なのかまだ分からないし、二人は取締役会で何の弁解の機会も与えられていない。こんなアンフェアなやり方は通用しない」と批判した。
そんなゴーン容疑者の弁護人には、東京地検特捜部長としてライブドア事件や村上ファンド事件を担当した大鶴基成弁護士が就いた。郷原弁護士は大鶴氏について「まったく評価していない。一連の不祥事を起こした特捜検察をずっと引っ張ってきた人物だし、陸山会事件で問題が起きた時の中心人物の一人でもある。ある意味で検察に非常に近いし、検察と戦う弁護士ではないと思う。本当に検察と戦うつもりであれば選ばないと思うので、とりあえず刑事手続きの説明を聞きたいということで来てもらったということかもしれない。あるいは検察とこれから仲良くしようとゴーンさんが考えているのかもしれない」と話した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)