「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(6枚)

 昨年12月、厚生労働省が労働基準関係法令に違反した“企業リスト”を更新した。掲載企業は468社にのぼり、成人式のための着付け会場へ振袖を届けず、無断で閉鎖した企業「はれのひ株式会社」の賃金未払いなど、具体的な違反事案が掲載されている。

(参考/厚生労働省:長時間労働削減に向けた取組 >労働基準関係法令違反に係る公表事案

 働く人の心と体を蝕む存在として問題視されているブラック企業。なぜ、ブラック企業はなくならないのか。SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜23時から放送中)では、想像を絶するブラック企業を生き抜いた女性たちが登場。衝撃的な実体験を打ち明けた。

 そもそも“ブラック企業”には、どのような会社が当てはまるのだろうか。プレカリアートユニオン執行委員長の清水直子さんによると「簡単に言うと違法的な働き方をさせて、主に若い世代の労働者を使い捨てる会社」だという。

 なぜ、若い世代が被害に遭うのか。清水さんは「違法な働かせ方をしている会社は昔からあった。今は新興の規模の大きい会社で、若い世代が犠牲になることが多い」と解説した。

 ブラック企業の体験漫画がTwitterで30万リツイートされたイラストレーター・漫画家の汐街コナさんは「広告を作る方の会社にいた。30~40人くらいの中小企業。新卒で入って、2年間勤めた」という。

 自身の経験を元に『死ぬくらいなら会社辞めれば』を出版した汐街さんは「長時間労働で、慢性的な深夜残業があった。人によっては徹夜をしていたり、ほぼ会社に住んでいる人もいた」と過去を振り返った。

「自分だけ帰りたいなんてよく言えるね」納期は絶対、泣きながら仕事

「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
拡大する

(▲イラストレーターでセラピストのKahumoiさん)

 出版関係のブラック企業に1年間勤務し、現在はイラストレーターやセラピストとして活躍するKahumoiさんも「中途採用で入りました。30~40人くらいの小さな会社で、1年間働いた」と説明。

「当時勤めていた会社には普通に寝袋が常備されていて、朝出勤すると、床にいろいろな人がゴロゴロ寝ていました。それが普通の状態。ワンマン経営で、社長に呼ばれたら手を止めて行かないといけなかった。社長はいつも違うところでお酒を飲んでいて、『おいで』と言われたら、納期が近くても行く。社長の言うことは絶対。行ったことで万が一納期が遅れたら社員の自己責任」

 そんな状況の中でも「まず、納期が遅れるということが絶対にありえませんでした」と話すKahumoiさん。どんなことがあっても“納期”は絶対。過酷な環境をこう明かす。

「みんな、寝袋生活。最初から納期がありえないスケジュールで組まれているので、休んでいる社員はいません。休んだらもう終わりだった。風邪をひいても熱が出てもみんな出勤していた。最初は研修期間が3カ月あると言われて、その間は時給で働く。最初の2~3日は定時で帰れたが、1週間経つと残業が増えてきた。定時になってから仕事を振られることが続いて、『あれ、残業するのが当たり前なのかな、おかしいな』と思い始めた」 

 ある日、Kahumoiさんが「今日は用事があるので、できれば残業は2時間くらいで帰りたい」と伝えると、「みんな頑張っているのに、自分だけ帰りたいなんてよく言えるね」と怒られた。Kahumoiさんは「『すみません』って泣きながら仕事をやるしかなかった。『明日やります』は、怖くて言えなかった」と当時を振り返る。

 kahumoiさんが、最も辛かった経験は3~4日ほど続いた泊まり込み仕事だった。

「朝5時くらいになったらちょっと寝て。朝8時くらいに起きて仕事。これを3日連続でやったときは、さすがにトイレで泣いた。上司からは『お風呂いけてないでしょ? 流し台使いな』って言われた」

「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
拡大する

 話を聞いていた番組MCのSHELLYは「流し台で何しろって言うの?」と激怒。当時その会社に就職を決めた理由についてkahumoiさんはこう話す。

「出版業界への憧れがあった。都会でしかできないお仕事だと思った。とりあえず求人募集しているところに検索をかけて(面接に)行きました。地元に帰ったとき『すごいでしょ?』と言いたい気持ちもありました」

 一方、前述の汐街コナさんは「辞めてだいぶ経ってから、私の会社は変だったんだなって気づいた。パワハラも受けた経験がないので、人間関係はいいと思っていました。美術系の大学を卒業したので、同級生はデザイナーになっているのですが、話を聞くとみんな私よりひどかった。ずっと『この会社はまだいい方なんだ』って思っていたので」と、感覚が麻痺していた理由を明かす。

「私はkahumoiさんほどではないですが、寝袋がありました。でも、使う人は限られていた。みんなイスを並べてその上に寝ていた。幸い、銭湯が近くにあった。規則正しく、会社で朝7時から夜中2時まで仕事をして、そこから朝7時まで寝て、という生活を送る人もいました。家に帰らない人は数人で、他の人はなるべくタクシーで帰っていた。あとは、近くのホテルと契約している人もいましたね。『タクシー代がホテル代より高くなる人はホテルに泊まれ』という命令が出たこともあった」

 当時の職場環境を語る汐街コナさん。ホテル代が支給されても、タクシーで自宅に帰ろうとする人が多かったという。

「私はタクシー代がかかりすぎるので、必ず終電で帰してもらっていました。残業代は、1年目までは1時間1000円、1日4時間まで出ていましたが、2年目以降は年俸制になり、年俸に含まれるという理由で残業代が出なくなった。タクシー代も経営が厳しくなり、途中から出なくなった。そしたら、家に帰れなくなる人が何人も出てきて、その人たちは辞めてしまいました」

「残業代を払って潰れる会社は存在価値がない」個人加入できる労働組合にも注目

「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
拡大する

(▲プレカリアートユニオン執行委員長の清水直子さん)

 清水さんが執行委員長を務めるプレカリアートユニオンには、ブラックな職場環境に悩む労働者からさまざまな相談が寄せられてくるという。

「長時間過重労働、セクハラ、パワハラ。あと、長時間労働と残業代未払いの相談が多いです。端的に言えば、残業代を払わなくていいから長時間労働をさせている。例えば『月に50万円の残業代を払って同じことをやらせてみて』と言ったら、(経営者は)絶対やらない。過去、今まで残業代が払われていなかった会社で、組合が交渉して残業代が全額払われるようになったら、労働時間がガクンと減った。やればできるんです。残業代はごまかしていただけで、経営者の懐に入れていた。残業代を払うことで本当に潰れる会社は、そもそも存在価値がない」

 もともとフリーライターだった清水さん。プレカリアートユニオンに入ったきっかけについて「ライターとして『こうした方がいいですよ』と書くだけだと、なかなか現状は変わらない。実際に解決するために、組合に入った」と経緯を明かす。

 労働組合とは、労働者が団結して賃金や労働時間など労働条件の改善を図るために作られた団体のこと。労働組合を作るのは、法律で認められた労働者の権利だ。日本では、会社ごとに作られた企業内組合が多い。しかし、企業内組合には経営者が実権を握る、形だけの組合も多いという実情がある。また、ほとんどの中小企業には労働組合そのものがない。

「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
拡大する

 最近注目されているのが、ユニオンという個人加入の労働組合だ。職場職種を問わず加入でき、アルバイトやパートでも組合員になれる。清水さんは、労働組合である「プレカリアートユニオン」の執行委員長として、ブラック企業との交渉を行っている。

「クリエイティブ系に憧れを抱いている人は多い」“やりがい搾取”に疑問の声

「トイレで泣いた…」被害者が語る“ブラック企業”の姿 個人加入できる「労働組合」の存在
拡大する

(▲『ウートピ』編集長の鈴木円香さん)

 働くアラサー女性向けサイト『ウートピ』編集長の鈴木円香さんはクリエイティブ系の職業ならではの問題点をこう指摘する。

「広告も出版もクリエイティブ系。クリエイティブ系に憧れを抱いている人は多いし、デザイン事務所や編集プロダクションなど、会社によっては師弟制度もある。修行をするというか『お給料をもらって学ばせてもらっている』という心理になりがちなのでは。社員もそういうものだと思い込んでしまっている」

 さらに、鈴木さんは、ブラック企業を辞められない理由として“正社員“の地位にも言及。「正社員じゃなくなったら“人生おしまい”と考えている人もいる」と話すと、前述の清水さんも「一般的には、非正規雇用で働かざるを得ない人は圧倒的に時給制で低賃金。ほぼ有期雇用で、いつ切られるか分からない。そんな『非正規雇用よりはマシ』と思って、理不尽な正社員の雇用に我慢してしまう人もいる」と話した。

(C)AbemaTV

(AbemaTV『Wの悲喜劇』より)

▼今週は『Wの悲喜劇』again「なぜフェミニストは嫌われるのか?」
1月26日(土) 23時~

Wの悲喜劇again「なぜフェミニストは嫌われるのか?」 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
Wの悲喜劇again「なぜフェミニストは嫌われるのか?」 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
男子は見なくて結構!男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回…

▼『Wの悲喜劇』#64「東大出たけど苦戦中」
2月2日(土) 23時~

Wの悲喜劇#64「東大出たけど苦戦中」 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
Wの悲喜劇#64「東大出たけど苦戦中」 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
男子は見なくて結構!男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回…

『Wの悲喜劇』#59「ブラック企業サバイバー女子」Abemaビデオで無料視聴配信中

Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~ - 本編 - #59 ブラック企業サバイバー女子(18/12/08) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
Wの悲喜劇 ~日本一過激なオンナのニュース~ - 本編 - #59 ブラック企業サバイバー女子(18/12/08) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
今回のテーマは「ブラック企業サバイバー女子」。想像を絶するブラック企業を生き抜いたオンナたちの仰天体験。そして、「怖くて会社を辞められない人々」をレスキューする仕事人が見た信じられない実態とは。「そ…

▶︎再放送『Wの悲喜劇again』を含めた番組表を一覧で見る

この記事の写真をみる(6枚)