18日に閣議決定された、今後10年の防衛の計画を示す「防衛大綱」で、海上自衛隊最大のいずも型護衛艦を事実上の"空母化"する方針が示された。
最大の目的は軍拡を進める中国の脅威への対応だ。岩屋毅防衛大臣は「今後、戦闘機も運用できるように改修をして、太平洋地域の防空体制を強化すると同時に、自衛隊の航空機に緊急事態が発生した時などに、活躍してもらいたいと思う」と述べたように、アメリカから購入予定のF35Bステルス戦闘機が発着できるよう、いずもの甲板を改修し周辺海域に待機させておくことで、制空権の確保を容易にしようというものだ。
これに対し「明らかな憲法違反。専守防衛という建前すら投げ捨てる」(共産党の小池晃書記局長)、「敵基地(攻撃)能力を持つという懸念も出てくるので、著しく専守防衛を逸脱する可能性がある」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)と野党は猛反発。一方、政府は「攻撃型空母」ではなく、あくまで「多機能の護衛艦」だと強調、岩屋防衛大臣も「戦闘機を常時搭載するという使い方ではない。例えば対潜ヘリを載せての哨戒活動、場合によっては医療・輸送といったような、必要な場合にのみ運用することとさせていただきたい」と説明している。
22日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元防衛大臣で自民党所属の中谷元・衆議院議員は「いずも」について「潜水艦を捜索したり、情報収集をしたり、物を運んだりと、様々な用途に使っている多用途護衛艦。今も搭載したヘリコプターで日本の海域に侵入者がいないか常時警戒・監視している」と説明。
その上で「南西の島が不当に上陸された場合にそれを奪回したり、それを阻止するという意味においては、その作戦が可能な体制というのはとっておかなければならない」との認識を示し、「中国は3隻目の空母を建造中で、沖縄と宮古島の間を抜けて太平洋に出て訓練をしている。戦闘機にしても、日本に来る頻度が高くなっている。海上保安庁と海上自衛隊が常時警戒しているが、入ってくるのを追い出すのが大変だ。相手の力がどんどん強くなっているので、こちらもそういった対応をしっかりとしないといけない」と訴えた。
外務副大臣で自民党所属の佐藤正久・参議院議員は「一般的に抑止力というものは、"やったらもっとやられる"か"やっても意味がない"と思わせなければ意味がないが、"専守防衛"というのは受動的な考え方なので、抑止という面では当然弱い。そこで"やったらもっとやられる"という部分を米軍にお願いし、日本は守りの方に集中している。その日米の"合わせ技"で抑止を高めている」と話す。
「沖ノ鳥島など、太平洋正面辺りは"空白地帯"と呼ばれているが、滑走路は沖縄以外は硫黄島と南鳥島しかないという状況。いずものようなものが浮いていて、そこから戦闘機が離発着できれば今までよりも警戒・監視がしやすくなるし、日米がお互いに使い回せるということで今までより良くなる」。
また、元防衛大臣で拓殖大学総長の森本敏氏は「"空母化"と言ってもいいかもしれないが、そもそも空母というものは、相手に対して壊滅的な打撃を与えうるような爆弾を持っている航空機・攻撃機、これらを擁護する要撃戦闘機ならびに早期警戒機、哨戒機などをトータルで一つのプラットフォームに載せているもの。アメリカの空母の場合、100機近い各種航空機が載っている。それに対し、我が国が持っているDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)は輸送や指揮運用、哨戒、医療、災害派遣という多用途の目的のために作られている。攻撃機が常時載っているわけでもなく、相手を爆弾で攻撃するために作られたわけではないので、一般的な軍事用語として使われる空母というものには当たらない」と話す。
「いずもに攻撃機が載るわけでもなく、憲法に抵触することはないと思う。"空母化"だと盛んに報道されているが、海上自衛隊の多用途目的用のDDHがある日突然空母化するということではない。STOVL機(短距離及び垂直離着陸機)が離発着できるよう改修を甲板にするということだけで、艦の本来の目的は変わらない。つまり、皆さんの考え方を切り替えていただきたい。船を作り、それを空母にするために飛行機を載せるという考え方ではない。防衛大臣の発言のように、非常に広い太平洋の防空のためにこれからSTOVL機を買う。そして洋上で離発着できる飛行場がないので、プラットフォームとしていつでも降りられるところが必要だ。だからDDHのいずもを改修して使う。発想が逆転している」。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)