「戦後70年、一度も行われなかった憲法改正に挑戦をし、国民の皆さんとともに日本の新しい時代を切り開いていく決意だ」。
昨年9月、日本記者クラブでこう述べた安倍総理。10月の所信表明演説でも「国の理想を語るものは憲法だ。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで」と述べ、2020年の改正憲法施行を目指し、9条2項の「戦力の不保持」を残したまま「自衛隊を明記」するという自民党案の臨時国会提出を目指した。
しかし、憲法改正推進本部長に抜擢された腹心の下村博文衆議院議員が11月のCS番組で「率直な議論さえしないのは国会議員の職場放棄ではないか。高い歳費をもらっているにも関わらず職場放棄してもいいのか」との発言。野党は一斉反発、憲法審査会開催を拒否。議論に応じる構えを見せていた国民民主党の玉木雄一郎代表も「円満な環境作りに貢献するとは思えない言葉を発せられることは、かえって憲法の議論が遠のいたのではないか」と指摘、改憲案の国会提出は断念に追い込まれた。
■福島瑞穂議員「安倍総理の、安倍総理による、安倍総理のための改憲だ」
12月29日に放送されたAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した社民党副党首の福島瑞穂参議院議員は、安倍総理が目指す改憲について「安倍総理の、安倍総理による、安倍総理のための改憲だ。自民党は案として4項目を出していらっしゃるが、とりわけ緊急事態宣言条項も問題だし、9条の自衛隊明記も問題だと思っている。2015年の安保関連法で解釈改憲して、明文改憲へというプロセスも邪道だ」と厳しく批判。
その上で、"自衛隊の存続は認める"としつつ、「改正で憲法9条に明記される自衛隊は、集団的自衛権を行使する自衛隊。9条1項・2項の完璧な破壊。国土防衛のための自衛隊でも災害救助のための自衛隊でもない。世界で戦争をする自衛隊だ。戦後の七十数年間を180度変えるものだ。それをとにかく発議してやれというのは間違っている。自衛隊を明記するなら安保関連法をとにかく廃止し、集団的自衛権の行使はしないということにしてからだ」と訴えた。
これに対し、自民党の太田房江参議院議員は「国民的な議論を盛り上げるために総理が申し上げたことだし、野党の皆さんにも議論に参加して頂いて、ちゃんと提案をして頂きたいといつもおっしゃっている。例えば立憲民主党の枝野さんは自衛権行使を明記するという改憲案を発表している。ああいうふうにそれぞれの野党がどのような憲法であれば望ましいのかということについて議論を盛り上げていく努力をされているだろうか。いかにも安倍総理や自民党が強権的で、しかも国民の意見も聞かずにどんどん進めていっているように聞こえるが、今回の改憲案を見ていただければ分かるように、抑制的で現実的だと思う。バランス感覚もきちんとあるし、時代の変化に合わせて、"今こういう憲法でいかがか?”と問いかけている」と反論。
すると福島議員は「自民党の総務会も通っていない案をとにかく憲法審査会にかけ、ものすごく短い時間でも"審議した"と言って可決し、本会議で発議しようとすると思う。総理は十分な議論なんてやったことがない。安倍政権はかつての自民党と根本的に違う。かつての自民党は集団的自衛権の行使は憲法違反で、憲法を変えないとダメだと言っていた。しかし、安倍総理は集団的自衛権の行使を日本国憲法下でできると捻じ曲げた。ほとんどの憲法学者が違憲であるというのを法律の中に盛り込んだ総理大臣だ。安倍政権における憲法改正はものすごく危険だと思っている」と厳しく批判した。
一方、国民民主党の小宮山泰子衆議院議員は「うちの玉木代表が改憲論議に応じる態度を変えた理由は、うちの議員が他の委員会で質疑をしている最中に憲法審査会の招集をかけたから。野党を審議に参加させない、もしくは発言ができない時にわざわざ呼ぶ。決めるのは主権者である国民であるというのが私たちのスタンスだが、それを踏みにじることを国会内でやられてしまった。そういった反省もぜひ自民党側には考えていただきたいと思う」と訴えた。
■野党議員からは「安倍政権では議論ができない」
福島議員は、現行憲法について「どこも変えない方がいいと思う。今の時点で変えて良くなると思えない」と話すが、他の党の議員はどのように考えているのだろうか。
太田議員と同じ自民党の高橋比奈子衆議院議員は「自民党は綱領や立党の精神に憲法改正を謳っている。たとえば環境問題については何も入っていないし、一票の格差で地方の声が届かないなど、問題点はいっぱいあると思う」と話す。
自由党の森ゆうこ参議院議員は「私たち自由党は憲法改正絶対反対という立場ではない。自衛隊についても、むしろ活動できる範囲をはっきり書き込んだ方が、誤解がなくていいんじゃないかなというふうにも考えていた。細かく見ていけば、時代の変化に応じて環境権など必要な新たな権利、地方自治の問題もクローズアップすべきとも思う。ただ、現行憲法を守ろうともせず、違憲だと多くの人たちに言われ反対運動が盛り上がった安保法制でもまともに答えず、国会でどんどん突き進んでいってしまった。2020年までスケジュールありきということがまずおかしい。現行憲法をまず守るべくやる」との姿勢を示した。
また、立憲民主党の牧山弘恵参議院議員は「憲法の議論から逃げるつもりはない。私自身は、今は環境が整っていないと思う。これは与党の責任だ。先の臨時国会でも相次いで重要法案が強行採決されている。お互いに冷静にしっかり話し合える環境が整わないと議論できないと思う」とコメントした。
■7月の参議院選挙と同日に国民投票の可能性も?
秋の国会閉会の日、安倍総理は「2020年は新しい憲法が施行される年にしたいと申し上げたが、今もその気持ちには変わりはない」と述べ、悔しさを滲ませた。自民党は今年の通常国会で改憲論議を加速させる方針を確認、改憲案の発議は早くても来年夏の参院選後との見通しだが、公明党の山口那津男代表は「来年は政治課題が目白押しだ。憲法改正についてしっかりと合意を熟成していくという政治的な余裕はなかなか見出しがたいと思っている」と慎重姿勢を見せている。
これについて福島議員は「本当は参議院選挙と同日に国民投票をやりたいと思っていると思う。単独で国民投票をやろうとすると852億円かかるので、国民投票は国政選挙と同日にやる。来年7月の参議院選挙と同日に国民投票ということもあり得るのではないか。7月末がもし参議院選挙であれば、5月末に発議をすれば間に合う」と指摘する。
政治ジャーナリストの安積明子氏は「新天皇の即位もあるし、4月には統一地方選挙、そして参議院議員選挙がある。公布されても、施行までの間に色々な環境整備をしないといけない。また、公明党は安全保障の面で創価学会の会員の方々の意思を無視するわけにはいかず、早急な改憲には与していけないという思いから山口氏の発言も出きたと思う」と話した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)