韓国軍が自衛隊機にレーダーを照射した問題で、韓国側は4日、反論動画を公開。自衛隊機が威嚇的な飛行をしたと非難。"人道的な救助活動をしていた韓国艦艇に対する威圧的な低空飛行について謝罪すべきだ"と強調した。
5日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元防衛大臣の稲田朋美衆議院議員は「昨年の国際観艦式に海上自衛隊が参加しようとした時、日本にとって誇りである自衛艦旗を付けるなと言った。しかも韓国海軍は、秀吉が朝鮮出兵したときの韓国の将軍の旗を付けるという行動もあった。文在寅政権になってからと言っていいと思うが、韓国の行動が理性を欠いていて、国際常識に反している。今回もその一環だと思う」とコメント。
その上で、「今回、韓国側が公開した映像では効果音も足したりしているが、自分で撮影したのはたった10秒。"謝罪しろ"など、非常に感情的で遺憾だ。東アジアの情勢を考えれば、一緒になって戦略的にやっていかないといけない友好国なのに、残念だ。自民党の中でも事実確認をするために持っているものはちゃんと出して、反論していこうということになった。レーダーの照射は1回ではなく数回、しかも数分ずつということなので、間違えたという言い訳は成り立たないし、今は照射した事自体否定している。そこの事実関係を明らかにすべきだ。ただ、日本は謝れとは言っていない」と強調した。
一方、稲田氏は「留学生も来ているし、韓国軍と自衛隊の関係はむしろ良好だ」と話す。これを受け、「私が統合幕僚学校長の時にも韓国軍からの留学生がいた」と同意するのが、元海上自衛隊海将の伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授だ。
伊藤氏は今回の映像について「レーダーのデータも持っているが、日本側が出した映像には含めていない。つまり、"あとは考えて下さい"ということ。一言で言えば、とどめを刺さなかった。そうしたら、これが出てきた。"低空飛行"についてだが、日本の哨戒機の長さが大体35mなので、海の上からその5個分以上高いので、150メートル以上の高さで飛んでいるということ。また、韓国の軍艦の長さが大体135mなので、それから計算しても800メートル以上は離れている。日本の主張通りだと思う」と指摘、「今回の映像も、国民向けに"日本に対抗している"というのをアピールするためだ」との見方を示す。
「実は最後の方に"証拠があるなら実務者協議で出せ"と言っている。要するにデータの公表はやめてくれ、防衛当局者だけのクローズドな場でこそっと見せてくれということだ。裏のメッセージは実務者協議をもう一度やってくださいということだろう。一度目の協議では、海軍の話なのに陸軍の人が出てきた。韓国は陸軍国家なので、上の方は陸軍出身者ばかり。海のことが全くわからない人が喋るから、言っていることはでたらめで、海軍だったら恥ずかしいことを喋っている。海軍を貶めていると思うし、海軍は"やめてくれ"と思っているはずだ」。
伊藤氏はこうした状況が生まれた背景に、大統領府に対する韓国国防部の"忖度"があると分析する。
「自衛艦旗の時もそうだった。あのとき、韓国海軍は"韓国の国旗とあなたの国の旗の両方を出すことを原則とする"と通知した。これは大統領府に無茶を言われて板挟みになった海軍が"原則"という二文字を入れて、判断は皆さんに任せます、とした。だから各国は自国の軍艦旗を掲げた。今回も、レーダー照射の一報を聴いた時、韓国海軍は"うわ!あの馬鹿、何やったんだ!"となったと思う。だから本当はすぐに謝ろうと思ったのに、発言させてもらえないままなんだろう。日本側も、まず韓国海軍に問い合わせして1日待ったがリアクションがなかったから映像を公表した。そこで"ごめん"と言ってもらえれば、友好国だから映像の公表はしなかったはずだ。韓国では陸海空軍に参謀総長がいて、その上に国防部があるが、その長官は政権が指名する。初めて海軍出身で就任していた長官が一年でクビになった。人事権を握られている国防部としても"何だ、この政権は?"となっているときにこの事件が起きた。はっきり言えば、海軍の参謀総長が出てくれば"ごめんなさい"の一言で終わっていたと思うが、上がそれ言わせないでいる。今回、表に出てきているのは全て国防部の人。おそらく、"謝るな"という文政権の意向を忖度しているのだろう。日本側は事実関係、再発防止を求めているだけだ。このようなことを繰り返していても意味がない」。
伊藤氏が主張するように、再度の実務者協議で状況は打開されるのだろうか。