近年、問題視されている“ブラック企業”。長時間労働、低賃金、残業代の未払い、上司のパワハラなどの告発が後を絶たない。
SHELLYがMCを務める『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(AbemaTV/アベマTV※毎週土曜23時から放送中)では、想像を絶するブラック企業を生き抜いた女性たちが登場。衝撃的な実体験を打ち明けた。
(▲フリーライターの小林リズムさん)
フリーライターの小林リズムさんは自身の経験を元に『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった8日で辞めた話』を出版。
「広告系の会社で、20~30人規模のベンチャー企業だった。創業10年も経っていないくらい。新卒で大学4年の冬に内定をもらい、すぐにインターンを始めて、そのまま4月に入社した。勤務したのは8日間ですが、インターンで2~3カ月働いていたので、会社の実情は知っていた。その間に辞めれば良かったが『今から新卒で探すのも大変』と思い、そのまま入社しました」
元勤務先の異常ぶりを、小林さんはこう語る。
「セクハラとパワハラが主でした。特に朝6時半から始まる『暁の講座』という習慣が苦痛だった。経営者から直々に会社の経営理念を学ぶ時間で、教えの一つが『男は穴に入れたいと思っている』でした。二つ目は『夫婦はお互いを殺し合いたいと思っている』で、それを世の中の“真理”としてホワイトボードに書いていました」
明らかにおかしい社内ルール。新卒の社員が真理を認めないと、経営者は男性社員を連れてきたという。
「経営者は『一流のビジネスマンになるためには、まず一流の人間にならなければならない。一流の人間になるためには、人間の真理をきちんと受け入れていかないとなれない。だから、まずは真理を受け入れろ』と話していた。朝6時半から1時間、真理の講義を受けていた。私を含む新卒3人の女子がこの真理を認めないと、経営者が男性社員を連れてきて『お前らも真理について教えてやれ』と言う。従わないと、その男性社員も左遷になってしまう」
経営者は社員をどのような存在だと思っていたのか。小林さんは「経営者は社員全員を“発達障害”と呼んでいた。『お前らは発達障害で他の場所でやっていけないから、俺が雇ってやっている』と言っていた」と明かす。番組MCのSHELLYは「そうやって洗脳しているんだね」とブラック企業の手口に言及した。
(▲MCのSHELLY)
面接時にブラック企業だと見抜けなかったのか。小林さんは「面接を受けたときに、その場で『即採用』と言われた。そこで、経営者は事務の人にロールケーキを買いに行かせて、一緒にロールケーキを食べながら世間話。5年前の話ですが、当時は『アットホームな会社なんだな』と思ってしまいました。今は方針を変えて10代の子を採ったりしているようです。普通の求人サイトに載っていた会社だったので、大丈夫だと思ってしまいました」と語った。
最も辛かった経験を聞かれると、小林さんは経営者との飲み会に言及。
「朝6時半から仕事して、仕事が終わったら経営者と飲みに行かないといけなかった。行くのは、けっこういい店。でも、たまたま自分以外の新卒がいない日があって、鉄板焼き屋で“真理”について話を聞くことになった。それで『ワシのこと男としてどう思っとるんや』と経営者から聞かれて『なんて答えたらいいんだろう』と。経営者はおじいさんだったのですが、『おじいさんだと思ってます』とは言えなかったので。適当にはぐらかしていたら、経営者は他の新卒の子に『あいつは俺に惚れとる』と言いふらしていました。経営者と過ごす時間が一番苦痛でした」
(▲『ウートピ』編集長の鈴木円香さん)
一方、アラサー女性を応援するメディア『ウートピ』で編集長を務める鈴木円香さんは「新卒ルールにも問題がある」と指摘する。
「就活ルールは変わってきている。長期インターンする学生が増えていて、社会人経験を早く積まなきゃと思っている。そんな中で、学生はアルバイトより安い時給で働くことに慣れてしまっている人もいる。気になるのは、勢いのあるベンチャーが『裁量権を若いうちに与える』と言って、やりがいを搾取しているようにも見える。やりたいことをお金をもらって『やらせてもらっている』という気持ちになっているのでは」
ベンチャー企業にありがちな“やりがい搾取”を指摘した鈴木さん。一方で、労働組合であるプレカリアートユニオン・執行委員長の清水直子さんはブラック企業が欲しがる人材の条件についてこう述べる。
「会社にもよりますが、あえて未経験者を採用したり、中途採用でも『経験不問』を謳って、こき使う傾向があります。理不尽なことに耐えるクセを付けさせられている。辞めるのが怖いと思うくらいの会社には、他にも必ず違法行為があるんです。退職自体は書類を送るだけで済みますが、有給休暇の取得や賃金未払いなどは労働組合や弁護士の助力・交渉が必要になります」
清水さんによると、日本の若い世代は労働法の知識が圧倒的に不足しているという。
「昔だったら、ストライキで電車が止まることを通学中に経験して、大人になった人がそれなりにいた。そういう経験によって『働くことの条件はこうやって駆け引きして解決できるんだ』ということを頭の隅に置きながら大人になった。けれど、今はほぼない。そうすると、権利交渉の仕方が分からない中で大人になってしまう」
清水さんは「労働は修行ではなく契約です。契約であることを意識しないと、体を壊したり、命を落とすことになりかねません」と警鐘を鳴らし、労働知識の必要性を訴えた。
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(AbemaTV『Wの悲喜劇』より)