ビルの立ち退き交渉を巡る不適切発言が明るみになり兵庫県明石市の泉房穂前市長(55)が2日付で辞任した一件は、録音音源の切り取り拡散発覚後に一転して泉前市長の擁護論が高まった他、報道の在り方など様々な議論を生んだ。
今回の報道のきっかけになった音源について、3日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』の取材に応じた明石市職員労働組合の大岡久展中央執行委員長は「以前から市長が職員に対してキツイ言葉で叱責することはあった。おそらく職員が市長室に録音機を持って入ったんでしょう。4月が市長の任期満了で統一地方選挙が(4月に)予定されている中で、選挙に近い時期なので、それが影響しているのでは」と答えた。
衝撃の一報は「火をつけてこい」という市長の過激発言と共に一気に広まった。その後、市長の「市民の安全を守りたい」と思うゆえの発言だったことが明らかになると、世論の形勢は逆転。泉氏は辞任会見で否定したが、一連の報道を受けて職員の“職務姿勢”に対する疑問の目が向けられたことも事実。そのことについて前東京都知事の舛添要一氏は「猛烈な勢いで仕事することを嫌がる職員はいる。前任者のときに“ぬるま湯”に浸ってきた場合はなおさら。また政治的な意図を持って録音をすることに関しては、卑怯だなと思います。7年間進まないというのは、泉さんのお気持ちもよくわかる」と私見を述べると「政治の世界では、そういうこともあるということを構えていない方も悪かった」と泉前市長の辞任を残念がった。
さらに舛添氏は取材を受ける側と取材する側の信頼関係に言及し「記者懇談会という形で記者と話をするとき、今からはオフレコですが、本音を話しますねということはよくあった。今はペン型のボイスレコーダーもあって、いつしかオフレコの話を録音して週刊誌に売ってしまう記者が現れるようになった。そのため、厚生労働大臣のときから記者懇談会をやらなくなった。特に給料の低い記者には気を付けていた。それは“アルバイト原稿”だから」と自身の経験を踏まえて語った。
漫画家の江川達也氏(57)は「いまの時代はスマホでも簡単に録音ができる。そのため発言に裏表があると問題になる。選挙活動中にも『火をつけてこい』みたいなことを言っていれば、あぁ、あの人だったらとなる」と極端な例を交えて話すと、舛添氏は「麻生大臣みたいなキャラがいい。いつも変なことを言っていれば、まったく問題にならない」とスタジオの笑いを誘った。
「録音には異議あり」
和やかな雰囲気を一変させたのは、東大卒の元日経新聞記者で現在は社会学者として活動する鈴木涼美氏(35)。鈴木氏は「新聞記者としては、オンで話を聞くときと、オフレコで話を聞く場合がある。オフなら話してあげるというときに、こっそり録音していたら一生話してくれなくなる。それは新聞記者と政治家の間でのルールであり、一般人に適用されるものではないが、今はSNSがあって誰もがジャーナリストになれてしまう時代。だからこそ、相手にオンなのかオフなのかを明らかにするのはマナー」と語気を強めた。
「公僕に相応しくなく、辞任相当」と話したのは、ネット時事問題に詳しい文筆家の古谷経衡氏(36)だ。古谷氏は「選挙の時に同じことを言うかと考えれば、絶対に違う口調になる。これは“ツイッター人格”と同じで、ツイッターだと“べらんめえ”口調になるのに対して、実際に会うと敬語を使う。市役所の中や職員同士という閉鎖的な空間。つまり周りが監視していない、民主化されていない空間だからこその発言。つまり、泉前市長の素なんですよ」と理由を説明すると、その意見に納得できない鈴木氏が「名言も問題発言も文脈次第。文脈によっては問題発言になるが、文脈によっては(今回のように)ドラマチックに怒りを表しただけにもなる」と反論。
その様子に元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三氏(42)は、「(音源だけでは)情報が足りないので」と前置きをしたうえで、「人は足りない部分を自分の先入観でストーリーを作ってしまう傾向がある」と指摘すると、さらに刑事視点で「間違って市の職員が本当に火をつけてしまえば、泉前市長は共犯になる。『火をつけてこい』という指示のもと動いているので、教唆にあたります。後の音源があったとしても、言葉の責任はあると思います」と今回の発言の危険性を解説した。
(C)AbemaTV
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