2月20日、映画『ソローキンの見た桜』(3月22日公開/配給:KADOKAWA)の完成披露舞台挨拶が行われた。

日本とロシアの合作で、日露戦争時代を舞台に、愛媛県松山市に設けられたロシア兵捕虜収容所で出逢った日本人看護師とロシア将校の数奇な運命を描く映画『ソローキンの見た桜』。本作の完成披露試写会が都内で開催され、上映前の舞台挨拶に主演の阿部純子をはじめ、イッセー尾形、井上雅貴監督、井上イリーナ・プロデューサーが登壇。さらにミハイル・ガルージン駐日ロシア連邦特命全権大使も来場し、出演者のひとりである斎藤工のコメントも到着するなど、会場は大きな盛り上がりを見せた。
阿部は映画のお披露目を迎え「緊張しています」と少しだけ顔をこわばらせつつも「春を待ついまの季節にぴったりの映画ができました」と笑顔で作品を送り出す。英語が堪能な看護師役ということで「まず、セリフが英語ということで必死に勉強しました」と述懐。ロシアでのロケも行なわれたが阿部さんは「初渡航でしたが、ロシアの文化の中心地であるサンクトペテルブルクでロケをさせていただき、有名な冬宮殿やエルミタージュ美術館も映画に映っています。ネヴァ川のほとりで歩きながら撮影したのは気持ち良かったです。ロシアは少人数体制での撮影で、きれいな街並みでゲリラ的に撮影をして、スタッフさん全員で流動的に動いていただいて、そのおかげでものすごくきれいなシーンが映っていると思います」と振り返った。
イッセーは、収容所の所長を演じたが、ロシアの名優アレクサンドル・ドモガロフとの共演について「怖かったです(苦笑)。ドモガロフさんがやってくると貫禄100%!ちょっとした冗談で仲よくしようって雰囲気が全くなく、役に入ってるんだなと思って、僕も役に入って頑張りましたが…僕の小物感がすごかったと思います(笑)。一緒にやってるとロシアの舞台に立ってるような気持になりました」と明かした。
井上監督は、ロシア人俳優を起用し、全編ロシア語のSF映画『レミニセンティア』を監督したこともあり、その縁もあって今回の映画の監督を依頼されたが「最初からドモガロフさんというロシアの偉大な俳優さんの出演が決まってて、まいったなと…(笑)。ロシアの偉大な俳優さんには、日本の偉大な俳優さんに頼むしかないと、イッセーさんに『助けてください』とお願いしました」と明かす。
昨年から今年にかけてのロシアと日本の交流年に、この映画が制作・公開されることについて「日本人とロシア人が人として付き合える場が増えるといいなと思います。ロシアには親日家が多いのですが、日本人がそれを知らないことが残念なので、この映画を機にロシアの人々の考え方を見ていただき、お互いの国を行き来する交流できればと思います」と日露関係の国民レベルでのさらなる交流の深化を訴えた。
井上監督の妻でもあるイリーナプロデューサーは「この映画の一番のメッセージは、愛情と友情はいろんな状況、国境を超えて人を結ぶということ」と訴える。また、撮影中の出来事として、松山での撮影でロシア人の俳優が休憩中に現場を離れて衣装のまま散歩に出かけてしまったエピソードを明かし「公園の芝生だと思って田んぼに膝まで入ってしまい…(笑)。ロシア兵の軍服の衣装でしたが、衣装さんは困ってました」と語り、会場は笑いに包まれた。
ゲストとして来場したガルージン駐日ロシア大使はこの映画について「日露の映画の合作の素晴らしい伝統を受け継ぐ事業となりました。両国の俳優、芸術家がこうして付き合いを続けていくことを喜んでいます」と語り、今後のロシアでの公開を含め、作品が日露をつなぐ架け橋となることに期待を寄せた。
さらに、この日は来場できなかった斎藤からもビデオメッセージが到着! 「うかがえずに申し訳ございません」という謝罪の言葉にイッセーさんから「ホントだよ!」とツッコミが飛んだが、さらに斎藤は「この1本の作品が日本とロシア(の友好を)を紡いでいく事を信じております。みなさんの目に、心にこの作品がしっかりと届きますように願っております」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。
舞台挨拶の最後に阿部は改めてこの映画について「日本人の感性とロシア人のセンスがコラボした映画です。『日露戦争時代のロミオとジュリエット』と言ったらわかりやすいかと思います。優しさが優しさを生むような素敵なサイクルがこの映画から生まれたら嬉しいです」と語り、客席からは再び大きな拍手がわき起こった。
ストーリー
2018年、駆け出しTVディレクターの桜子(阿部純子)は、ロシア兵墓地の取材を皮切りにロシアに行くことが決定していたが、興味を持てずにいた。しかし祖母(山本陽子)から自身のルーツがロシアにあることを知り、さらにロシア兵と日本人看護師の、二人の日記を紐解いていくうちに衝撃の事実を知ることに—— 日露戦争時代、傷ついたロシア兵将校ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)の手当てをすることになったゆい(阿部純子、二役)。日本はハーグ条約を遵守し、ロシア兵捕虜はアルコールの購入や外出などの自由が許されていた。兄弟を戦争で亡くしたゆいは、ソローキンを憎みながらもいつしか惹かれ、愛し合う。だがソローキンが捕虜になったのはある密命のためだった。密命の為、収容所を脱走しロシアへ帰ることにしたソローキンは、ゆいも一緒に連れて帰ろうとするが……。
(c)2019「ソローキンの見た桜」製作委員会





