アメリカ軍普天間基地の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票は、「反対」が7割を超えるという結果になった。安倍総理大臣は25日、「普天間基地の固定化は絶対に避けなければならない」として辺野古移設に改めて理解を求めるとともに、辺野古新基地の阻止に全身全霊を捧げるとする玉城デニー知事との会談を行う意向だ。

 今回の選挙結果について、これまで沖縄でも取材を重ねてきたジャーナリストの堀潤氏に話を聞いた。

ーー今回の選挙の結果について、どう受け止めていますか。

堀:52.48%という投票率で、そのうちの70%以上の人が「反対」を選び、「どちらでもいい」という人は限られていた。賛成は残りの20%程度だったということです。これまでの選挙に比べても、明らか反対に振れています。中央政府への見方の現れだと思います。

 辺野古には軟弱地盤の問題も出てきましたし、住民投票でこれだけの結果が出てしまった以上、移設計画が今まで以上に難航するのは必至です。果たして計画が完了するのは何年後なのか、それすらも不透明になってきています。

 移設先が辺野古でなくてはならない理由について、よく推進派は"地政学的に"ということを言いますが、かつて防衛大臣を務めた森本敏さんは"政治的な判断もある"、という意味のことをおっしゃっていました。しかも今、海兵隊の必要性そのものが根本的に問われている状況でしょう。そういう中で、これから半世紀以上も機能する基地を作る必要がどれだけあるのでしょうか。

 それでも現政権は「辺野古が唯一の解決策」「普天間基地の危険性を除去するため」と説明するばかりです。沖縄県民だけでなく、国民に対しても理解してもらおうとする姿勢が見えません。政府が"普天間基地の早期移設実現"を掲げるのであれば、自衛隊の基地との共用の方法や、本土も含めた他の候補地を改めて洗い出して、辺野古以外の道を模索する必要があるのではないでしょうか。このタイミングだからこそ、米軍に対しても今一度、交渉をしてほしいと思います。"やめてもらえませんか?"と国民が言っているのに、それに聞く耳を持たない政府って、ちょっと非常識だと思います。

 そして野党に求めたいのは、政権に反対するのはいいけれど、普天間の危険を除去するためには、他にどんな方法があるのか。どうすれば県外移設は進められるのかということです。きちんと根回しもしながら、与党に対抗できるだけのプランを提示してほしいと思います。

ーー今回の住民投票には法的拘束力がなく、実施すること自体が本土と沖縄、あるいは沖縄の中でのさらなる分断を生むのではないか、という見方もあります。


 本来、政府と地方自治体の関係は対等ですし、地域住民がどういう気持ちでいるのか発言するのを止める権限は誰にもありません。しかも今回の住民投票のルールは自分たちの議会で決めたものですし、実施にあたっても、選挙で選ばれた首長たちが全ての自治体でやろうと最終的にまとまっていきました。非常に民主的だったと思います。"一部の人たちの声で決めるのか"、"この結果は有効なのか"と批判する人もいるけれど、それなら国政選挙の投票率はどれだけだったでしょうか。そしてその結果として選ばれている政権はどうなのでしょうか。それはあなたのことを言っていますよ、と思いますね。

 ある基地を抱える自治体の前首長は、"問題化させないための努力を水面下で続けるということが役割だった"と言っていました基地問題は必ず分断を生むから、米軍基地側側には配慮を要請し、解決するための努力をしながら、メディアに対しては対立や大きな問題に発展しないよう、"改善のための話を進めているんだ"と丁寧に説明することを心がけてきたと。もちろん、社会問題化しないことで火種や不安は残されていくわけですが、少なくとも住民投票まで至ってしまうというくらい、現政権が水面下での交渉も上手くできていないということなのではないでしょうか。

ーーこれまでも、本土にいる私たちの意識の問題も大きいとおっしゃっていました。

 大田昌秀元知事にお話を伺った際に聞いた話です。橋本龍太郎元総理は普天間の移設を決めた時、太田さんを官邸に招き、話をするときにはネクタイを外して、本当の意味で胸襟を開いて、リラックスしてゆっくり話しましょうと言ってくれたそうです。そういう姿勢ですよね。いとこを沖縄戦で亡くした橋本元総理は、沖縄をどのようにして豊かにしていくかを考えるのも政治家としての役割の一つだと考えていたんだと思います。

 歴史を遡ると、ああいう形で琉球を併合し、本土の犠牲を強いてきました。沖縄返還前には、反米・反基地運動をかわすために、アメリカ施政下の沖縄に負担を移して本土の負担を軽減し、結果として米軍専用施設の多くが沖縄に集中するという結果になりました。

 与那国島に自衛隊のレーダーサイトが作られたとき、推進の方々は「本土の皆さんは知らないかもしれないが、日本の防衛を担っているのは私たちでもあるんだ」と誇りを持っておっしゃっていました。「与那国島、沖縄の私たちも日本人なんですよ」と。沖縄戦の時代と同じよう思いを抱かせてしまっている気がして、さみしさ、申し訳無さを感じました。

 太田元知事も少年兵部隊「鉄血勤皇隊」の一員として沖縄戦を戦いました。あの当時、沖縄は本土の人たちに差別され、文化を見下され、やってきた役人には"早くヤマトになれ"と言われてきたわけです。少年少女たちにも、私たちも日本人だと認められたい、そういう気持ちがあったからこそ、玉砕覚悟で臨んでいたんだと思います。そうでもしないと対等でいられなかったという構図は、今でも続いていませんか。

 沖縄こそが、国を守る役割を果たしてきてくれたから、私たちは平和を享受できた。そう考えたら、沖縄には感謝以外の気持ちは起こらないはずです。それなのに、沖縄を蔑むようなことを言う人に限って、Twitterのアイコンは日の丸だったりします。

 そうであれば、今まで負担を強いてきた部分を少しでも軽減させていくことを考えたいですよね。安倍総理も沖縄県民を説得したいと思うのなら、沖縄に通うということがあってもいいと思います。それをしない政権を誰が選んでるか、という話になれば、やはり"本土の人は冷たい"と思われてしまっても仕方ないと思います。

 もちろん、沖縄の中にも問題があります。巨大な公共事業に関わってくる利権の構図にも目配りをしないと問題は解決しません。沖縄で市議会議員を長く努めていたある方は、「利権やしがらみが多すぎる。もう沖縄出身の政治家には任せられない。県外の人に立ってもらいたい」とおっしゃっていました。そのくらい、良くも悪くも基地と共存してきただけに、あやとりの糸が絡み合うように多くの関係者がいて、利権が存在します。だから橋本元総理が国政から退いた時には、県知事としてお迎えしたいという声もあったそうです。


ーーそんな中で、これから具体的にすべき議論はどういったものでしょうか。

堀:自衛隊のあり方だと思います。

 鳩山政権時代、僕はNHK「ニュースウオッチ9」のリポーターとして、沖縄で久しぶりに開かれた大規模な県民集会を取材した。その時に、やっぱりこれは米軍の話である以上に、自衛隊の話なんじゃないかと感じました。基地問題というのは日米同盟の話であり、その先に憲法9条、自衛隊の話があるわけですから。しかし政治もメディアも触りにくいのか。あまり真正面から取り上げてはこなかったと思います。

 海兵隊の広報官が、「我々はどこにいても、与えられた環境で迅速に対応できる仕組みを構築するのが使命。現状でもそれはできています」と話していました。どちらかと言えば辺野古についても、"思いやり予算"ができた背景のように、"日本から出て行かないでくれ"という日本政府からのリクエストでもあるんではないか、と。

 "中国の脅威が"と言いますが、本来それを取り除くための交渉をするのが国の役割でしょうし、自国の防衛についても、まずは自分たちの手で行うのが先のはずです。地政学的に必要であれば、まずは沖縄に防衛は自衛隊がきちんと担い、地元の地域社会と共存していく。そして、それを補完する米軍が本土で展開するという道はないのでしょうか。日米同盟、憲法9条、そういったこともふくめた安全保障について、政治もメディアもしっかりと議論していく時が来ていると思います。

■プロフィール

1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』などにレギュラー出演中


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