「安倍総理はノーベル平和賞の選考委員に送ったという美しい手紙のコピーをくれた。彼は、日本を代表して敬意を込めて私(トランプ大統領)を推薦したと言ったんだ」と明かしたトランプ大統領。
推薦を受けた理由についてトランプ大統領は「日本上空をミサイルが飛び、警報が鳴っていた。それが一転、日本人は安全を感じている。私のおかげだ。オバマ政権にはできなかった」とアピールしているが、ニューヨーク・タイムズは「ノーベル平和賞を意識するトランプ大統領は朝鮮戦争の終戦宣言に意欲を示しているが、そうした宣言は歴史的な出来事であっても、非核化を進める上ではほとんど役に立っていない」と指摘している。
トランプ大統領が主張する"推薦"の真偽について国会で問われた安倍総理は「コメントは差し控えたい」「事実ではないということを申し上げているのではない」と答弁。これに対し、立憲民主党会派の小川淳也衆議院議員は「トランプ氏は中距離核戦力全廃条約から離脱を打ち出している。イランの核合意からは一方的に離脱を表明した。ノーベル平和賞に推薦するなんてことはありえないし、日本国として恥ずかしいことだと思う」と厳しく批判した。
かつてノーベル平和賞を受賞した政治家には、佐藤栄作元総理が非核三原則の制定で(1974年)、ゴルバチョフ氏が東西融和に貢献で(1990年)、アウン・サン・スー・チー氏がミャンマー民主化で(1991年)、金大中氏が韓国民主化・南北和解(2000年)、そしてバラク・オバマ氏が核なき世界主導で2009年に受賞している。上智大学の前嶋和弘教授(アメリカ政治)は「実際問題、トランプにとってノーベル平和賞はこだわりがある。前にノーベル平和賞を取ったオバマ前大統領への対抗心」と推測する。
23日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した政治学者の中林美恵子氏は、アメリカの一般市民の中での日本や朝鮮半島への関心はあまり高くないとし、「韓国系アメリカ人は日系人よりも多くなっている。しかし日本人はなかなか移民としてやってきたり、アメリカ国籍を取ったりしない。そうすると数で負けてしまうので、カリフォルニア州では韓国系の住民が日系の議員を使って政治化していくことが行われてきたアジア系の人に限らず、アメリカ全体を見れば、極東はまだまだ遠い国で、北朝鮮のこともアメリカにミサイルが飛んでこないということでひとまずホッとしたという経緯がある」と説明。「それでもやっぱりノーベル平和賞が欲しいと思っているから、今回のような発言がポロッと出てしまうんだと思う。推薦状については、安倍総理と文在寅大統領を勘違いしているという話もあるが、拉致のこともお願いしないといけないし、在韓米軍だってちゃんとやってほしいし、北朝鮮の制裁もやってほしいし、核の完全廃棄もしてほしい安倍総理はとしては"そうではない"とは言えない」と指摘した。
トランプ大統領は今週行われる2度目の米朝首脳会談について"今回が最後ではない"として、非核化の協議が長引く可能性を示唆している。実務者協議も溝は埋まっていないようだが、それでもトランプ大統領は「非核化すれば北朝鮮の経済が良くなることを金委員長は十分に理解している」と期待感も示している。北朝鮮の非核化や朝鮮戦争終結が進展すれば、トランプ大統領がノーベル平和賞を受賞する可能性があるのだろうか。