「アメリカの強盗のような態度が事態を危険に曝すだろう。我々と会議室で会うか、核対核で決着をつけるかはアメリカの判断にかかっている」。そう述べて非核化交渉の中断を示唆した北朝鮮の崔善姫外務次官に対し、韓国大統領府の秘書官は「いかなる状況にあっても、韓国政府は米朝交渉の再開のために努力する」とコメント。しかし北朝鮮は仲裁者としての韓国の役割を全面否定、崔氏は「文在寅大統領は米朝対話のために苦労しているが、アメリカの同盟国である韓国はプレーヤーであって仲裁者ではない」と言い切った。
米朝首脳会談を前にしたトランプ大統領との電話会談で、文大統領は制裁の一部緩和の材料として金剛山観光や開城工業団地の再開など南北協力事業を活用して欲しいと売り込んでいたという。しかし期待に反して制裁は緩和されず、北朝鮮からもはしごを外された格好となり、文在寅政権には大きなショックが広がっている。韓国メディアは段階的な制裁緩和を求めれば韓国の立場がさらに狭まることを懸念しており、世論調査では文大統領の支持率は就任以来最低の45.0%を記録。不支持率も50.1%と、初めて50%を超えた。
北朝鮮は追い打ちをかけるように開城南北共同事務所からの撤退を通知。さらに22日、北朝鮮の対外宣伝メディアが「韓国政府は南北宣言履行を叫びながらも実際にはアメリカの表情ばかり眺め、いかなる実践的な措置も取っていない。アメリカに対して要求すべきことは要求する“当事者”の役割を担わなければならない」と韓国政府を批判した。
23日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元駐日韓国公使の洪熒氏は「神様である金正恩委員長がハノイで恥を晒し、権威は完全に地に落ちてしまった。アメリカの態度をなぜ事前に予測できなかったのか、誰に大きな責任があるのかという大問題になっている。みんな生き残るため必死で、崔外務次官は"悪いのはポンペオ、ボルトンだ"と言っている。そのポンペオ氏は最近、北朝鮮とアメリカの間に信頼関係などない、あるのは検証だけだと言い出している。そうなると、北朝鮮としては米朝会談を演出、企画した文在寅を非難するようになる」と説明。
「アメリカが経済支援をできない理由は、国連安保理の制裁委員会が先週出した写真が理由だ。去年9月に文大統領が平壌に行った時に、金正恩と一緒に乗ったベンツが、国連決議で禁止されている"ぜいたく品"の輸出に当たるといことだ。つまり、"非核化詐欺"について、文在寅と金正恩は共同正犯だという象徴的な写真だ。この写真だけは出さないで欲しいと、文在寅の部下たちが必死の工作をしたという。だからアメリカは怒っている。アメリカは金正恩だけではなく、文在寅も敵として判断せざるを得なくなる」(洪氏)。
佐藤正久外務副大臣は「文在寅大統領が金正恩の代弁者として、非核化の意思は間違いないと何回も伝えていることを洪さんは問題にしている。文大統領がぜいたくな車に乗るのは制裁とは関係ないが、ダメなものに乗っているということをわざと国連の制裁委員会が出した。違反なものに大統領が乗っていることが問題だ」と補足した。
米国弁護士の湯浅卓氏は「洪さんが言っていることはかなりの部分で正しい。ただ、同時に気をつけなければならないのは、崔外務次官が愚痴を言っていたことだ。それでも金正恩委員長の元気がなくなっているとは限らない。あれだけポーカーフェイスのキャラだから、今も降仙(カンソン)で核を作り続けているかもしれない。それがむしろ問題だ。それを止めないといけない。トランプ大統領が金正恩委員長に対して直接メッセージを出すタイミングだ」との考えを示した。
また、洪氏は「どうやって非核化をするかだが、それは簡単だ。ソ連にゴルバチョフがいなかったら今の歴史はなかったように、金正恩政権を変えればいい。みんなできないと思っているが、アメリカは、ボルトンはできると思っている」と示唆。するとケント・ギルバート氏は「ボルトンはそれを考えている可能性がある。簡単にできてしまう。殺してしまえばいい。しかし人道的に大きな問題だから、最終手段として取ってある」と、一時期取り沙汰された「斬首作戦」に言及していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』)より