今月3日に第一子妊娠を発表したモーニング娘。OGでタレントの矢口真里が、まもなく母になるという人生の節目を前に、休業、再婚、妊娠と激動の6年間を振り返って「失敗したからこそ、今の自分がある」と率直な心境を吐露した。失ったものが多ければ、得たものも多かった期間で彼女が手にした大切なものとは、一体何だったのか? 復帰を支えた友情秘話、ファンとの交流や感謝も含め、決意の妊娠発表から1週間が経過した彼女の本音とこれからを探った。
今年1月、モーニング娘。やミニモニ。などで活動を共にした辻希美が第四子を出産した。その他のモーニング娘。OGのメンバーも次々と結婚、出産を経て家庭を築いている。そうした状況が「母になる」ということに対して与えた影響について、彼女は次のように説明する。
「確かにOGメンバーはもちろん、仲のいい同級生でも今年5人ほどの子どもが生まれるという状況を意識しないと言ったら嘘になるかもしれませんが、一番はやっぱり年齢。36歳になるので、もうアラフォーですよ。今では40歳を過ぎて出産される方も少なくありませんが、私の母の年代では、20代前半で出産することが当たり前でした。子育てに体力は必要という思いもあったので、焦りがあったことは事実です。本来の人生計画では20代後半で出産している予定ではあったのですが……少し歯車が狂ってしまったので」
「2度の失敗はできない」という思いが強く、結婚して1年になる旦那さんとの子づくりは慎重にならざるを得なかった。結婚してからも互いの様子を確認し、自分たちが父として、母として“やっていける”という確信が欲しかったという。
「2回目となるとやはり慎重になりますし、何よりもう一度失敗することはできないという気持ちが強くありました。今までの経緯もあり、子どもに悪影響が出てしまうことも極力避けなければいけないとも考えていました」
具体的にコレといったきっかけは無かったと振り返るが、二人の関係に子どもが一人加わること、三人で過ごす未来を自然にイメージできるようになったことで、不安は和らいでいった。
「付き合って4年、結婚して1年。彼とは計5年も一緒に居たので、二人のところに、あと一人増える(子どもができる)という状態に違和感を覚えなくなった。何かきっかけがあるとすれば、そんなことでしょうか」
しかし、妊娠発覚は二人の予定より数カ月早まることになる。今年3月の挙式を終えてから子づくりに励もうということで、互いに検査に通いながら準備を整えていた矢先、年末ぐらいから「あれ、ちょっと怪しいな」という回数が増えたという。そんな折、今年の元旦に実家に帰省すると、妹が使用しなかった妊娠検査薬が1本余っていた。
「お姉ちゃん、これやってみたら?」
妹に促されるまま半信半疑でやってみると、本人曰く「あれ!?」、結果は陽性だった。
「妊娠が発覚した元日は私のお母さんの誕生日。何ともおめでたいタイミングでした。彼はあまり多くを発するタイプではないので、その場の反応は淡々としていましたが、家に戻ってから「すごい嬉しい」と短い言葉で気持ちを伝えてくれました。彼はとても子供を欲しがっていたので、そんな彼の様子が見られ、私もとても嬉しかったです」
この話には、続きがある。今月3日までは極力周囲に伏せておいたということだが、家族以外でその場に居合わせた人物が二人居たのだ。それは、彼女の実家に正月の雑煮を食べに来ていた女装家タレントのゆしんと、お笑いコンビ・ザブングルの松尾陽介である。
「実家に普通にお雑煮を食べに来ていましたね(笑)。私が大変な時も、再婚してからもずっと私たちを見守ってきてくれた二人だったので、陽性反応が出た時に『この人たちだったら、いいかな』と思えたんです。色々と知っている二人からの『よかったね』という言葉はとても印象に残っています」
「子育てには体力も必要」と不安を抱いていた彼女は、妊娠を発表する前に四児の母である出産・育児の大先輩・辻希美にもメッセージを送っていた。「普通分娩と無痛分娩はどっちがいいの? といった他愛もない内容だった」と本人は恥ずかしそうに笑顔を浮かべたが、心強いアドバイスをいくつか受け取ったという。
「覚悟はしていた」が妊娠発表後には心無い言葉も
今月3日の妊娠発表を受け、自身のSNSには1日でおよそ1300件のコメントが寄せられたというが、その中身は祝福ばかりではなかった。さらにネット記事なども介して心無い言葉も数多く浴びせられた。
「印象に残っているのは『美談にするな』ですかね。まだ生まれてきていない子どもに対する中傷も多々ありました。もちろん覚悟はしていましたが、今では『失敗したからこそ、今の自分がある』と心から思えているので、『色々あったけどよかった』なんて美談にして片づけるつもりはありません。この喜びと幸せは、失敗も含めて自分の胸にしっかりと秘めておきます。それに苦しい時期の一番の味方は家族だったので、誹謗中傷よりも“味方が一人増える”という期待や楽しみの方が勝っています。自分たちの過ちは自分たちで払拭していかなければならないし、家族が一つになって乗り越えていかなければいけない。でも、子どもが傷つくことが無いよう『しっかりやっていこう』と二人では話し合っています」
行いと非難を受け入れ、苦境を乗り越えたことで、最近になり時折テレビで見かける姿は以前にも増して肩の力が抜け、楽しそうにすら見える。この数年間の経験や学びが、公私ともにどのような心境の変化をもたらしたのか。彼女の笑顔の裏には、ファンの支えとファンへの感謝があった。
「苦しかった時、私のSNSにはファンからのメッセージが多く届きました。そのメッセージには励ましに加え、それぞれの体験なども書かれており、一つひとつ確認しながら思ったことは、人生は十人十色。正解がないのが人生ということでした。私と同じ経験をした人、された人、もっと壮絶な体験をした人など本当に様々で、私にとっては特別な状況でも、世の中においては特別でも何でもない。私は私の人生を生きなければと前を向けるようになりました。『アイドルはこうでなければいけない』という思いが常にあり、どこか優等生を気取っている部分もありましたが、そういうことを気にしなくなった今の自分は、最も矢口真里という個性に満ちている。おかげさまでこの6年間でファン層が広がり、身近なファンが増えました。アンチも含めてですけどね(苦笑)。力を与えてくださったファンに、今度は私がお返しをする番だと思ってお仕事に臨んでいます」
「平成」の時代を代表するアイドルグループの一つで活躍した母の子どもが、新しい時代「令和」元年に誕生する。さらに母子ともに「亥(イノシシ)年生まれ」ということも重なって「なんだか嬉しいですね」としみじみ。そんな彼女に子育てについて聞くと「役割分担みたいな話はとくにしていませんが、私は間違いなく叱る役目ですね。自分の両親がそうだったように、挨拶とか基本的な事に対して厳しいんですよ。旦那さんには、私が怖いお母さんで行くから、あなたは優しいお父さんでよろしくね、というお願いはしてあります」と家庭内のバランスについても笑顔で話した。
今年の夏の終わりに出産予定とのことだが、ファンとしては出産後の活動も気になるところだろう。
「ネットで“矢口、ママタレへの壁”みたいな記事を拝見しましたが……私はその枠には絶対に入れないと思うんですよね。なので、より自分ができることは何かを模索し続けています」と話すと、“自分にできること”について次のように続けた。
「先ほども話しましたが、お仕事を休んでいる時に多くのファンの方のエピソードを聞く機会に恵まれました。その経験を無駄にしないためにも、思い悩んでいる人の話を聞く側に回って、かつて自分が救われたような気づきを与えられればうれしい。爽やかな時間帯の番組に出ることは当面難しいと思いますので……まずは深夜の時間帯で、ドロドロした人生相談とかやってみたいですね」
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