「生まれる可能性は99%ない」と宣告された“体重20kg”の女性が出産 夫婦で乗り越えた葛藤と母子生命の危機
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 愛知県名古屋市に住む一人の女性が、母子ともに生命の危機を乗り越えて母になった。女性の名は寺嶋千恵子さん(32)。寺嶋さんは、徐々に筋肉が萎縮していく国指定の難病「脊髄性筋萎縮症」を乳幼児の時に発症。以来、およそ10万人に1人が発症し、未だ根本的な治療法が見つかっていない重度の難病と闘っている。体重は小学校1年生の平均とほぼ同じ20kg。日々の暮らしにおいては筋力が足らないため車椅子が、さらに背骨が曲がって横隔膜を圧迫するため就寝時には呼吸器が手放せないという。彼女を支えるのは夫の成人さん(29)。現在は産休を取得し、ヘルパーと共に24時間付きっ切りで千恵子さんを介助と育児を行っている。

 二人の出会いは今から4年ほど前、難病を患う千恵子さんが、障害者の自立支援をする社会福祉法人の活動を行う中で、ヘルパーとして働く成人さんと知り合ったことがきっかけだった。成人さんは「すごいまっすぐ生きている彼女が最初から気になっていた」と二人の馴れ初めを振り返っている。

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 2年の交際を経て2018年に結婚した二人は、その年の4月に新しい命を授かることになる。その当時の心境を「子どもが欲しいなと思っていたところに来てくれた」と明かした千恵子さんだったが、妊娠・出産は難病を患う彼女にとって大きなリスクでもあった。千恵子さんが息をできない状態では、胎児も同じく息をすることができず、担当の医師からは「生まれる可能性は99%ない。母子ともに亡くなってしまう可能性もある」という宣告を受けた。また、生まれつき重度の脊髄性筋萎縮症を患う女性の出産は世界的にも前例がなく、千恵子さんの命を思えば医師の見解は妥当なものに思われた。

 子どもの命はもちろん、千恵子さんの命まで失われるかもしれない。その状況について成人さんは「本当に素直に二人で喜んで、嬉しかったけど、ずっと迷いがあった。『おろす』という言葉を出すのは正直つらかったが、その言葉を言えるのも僕しかいなかった。嫌でできた子ではなく、望んでいた子ども。それだけに葛藤があった」と説明した。

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「中絶するタイムリミットがあって早く決めなきゃいけないけど決められない。すごく悩んだが、やれるところまでやってみたい」

 リスクを承知の上で、出産に対する強い決意を固めた千恵子さんに成人さんは「もともとそういう人。そういうところに惹かれて結婚した。自分の命がかかっている中で、前向きに考え、決断してくれたので(自分も)頑張らないといけない」と腹をくくった。しかし、二人の決断に対して千恵子さんのご両親は「二つの命がかかっている」と猛反対だった。

「子どもを育てるとか、産むとか、命ってなんだろうってすごく考えた――」

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 思い悩んだ千恵子さんだったが、決意は揺るがなかった。ご両親を説得した二人は、出産に向けて医師と具体的な話し合いを進めた。一番の問題は、成長する胎児によって、千恵子さんの肺や横隔膜が圧迫されて呼吸が困難になること。実際に千恵子さんは次第に呼吸が苦しくなり、夜中に痛みが出て病院に駆け込んだこともあったという。そして2018年8月21日、千恵子さんと胎児に負担が最もかからない妊娠7カ月目に帝王切開で無事出産に成功。身長32.5cm、体重776gで誕生した男の子は篤郎(あつろう)くんと名付けられ、8カ月を迎えた現在は体重が6500gまでになり、すくすくと成長を続けている。当初千恵子さんの出産に反対したご両親は、後遺症もなく元気に育つ孫に笑顔が絶えないという。

「一生懸命考えて出した決断だったので『おろす』と決めていても(その決断もまた)間違ってなかった」

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 無事母になった今、千恵子さんは「お医者さんもどうなるかわからないけど、ヘルパーさんも含めて皆で支えようとしてくれたので勇気をもらった。そういう環境があったから産みたいって言えたと思う。支えてくれる人たちがいっぱいいれば、私みたいな障害のある人たちでも子育てして、生活することが可能な時代。私もその一員になることができた」と改めて感謝の思いと喜びを語った。

 成人さん、千恵子さん夫妻の出産について元衆議院議員で1児の母でもある金子恵美(41)氏は「妊娠中は健常者であろうが、障害者であろうが精神的に不安定にもなるし、出産自体が命がけ。さらに女性は出産して終わりではなく、産後の母体への影響もある。千恵子さんについては『出産してよかった』と言える現状があってよかったと思うし、障害や前例の有無に関係なく女として、母として夢や希望をかなえられたことは素晴らしいこと。次に続いて欲しい」と話した。

 厚労大臣や東京都知事を歴任した国際政治学者の舛添要一氏(70)は、障害を持つ女性への出産育児サポートについて意見を求められると「当初は千恵子さんの病気も含め、難病を持つ方への支援が少なく厚労大臣就任後に4倍まで増やした。しかし、出産後のサポートには人員が必要。現在の日本はお年寄りの介護のためにベトナムやフィリピンなどから人を受け入れている状況がある」と話し、サポートにおける人手不足の問題を指摘していた。(AbemaTV『Abema的ニュースショーより』)

(C)AbemaTV


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