日本でも人気ジャンルとして定着した感のあるアメコミ・ヒーロー映画。今年は「バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生」「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」「X-MEN/アポカリプス」と話題作が次々と公開されますが、その中で異色中の異色、センセーショナルを巻き起こしたのが『デッドプール』です。

元々はX-MENシリーズに登場するキャラクターで、ビジュアル的にスパイダーマンと忍者をかけあわせたようなビジュアル。とにかく型破りなヒーローでお下劣なジョークを連発しながら日本刀と銃を使い悪人どもを抹殺します。

しかも、自分がコミックの中のキャラクターということを知っていて、読者に話しかけてくる<第四の壁を超える>という力を持っているのです。映画でもこうした魅力をうまく活かし、デッドプールが画面から観客に語りかけます。

「スパイダーマン」のようなアクロバティックなアクション、「テッド/TED」のようなお下劣さ、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」に通じるクレージーさが合体しています。当然15歳未満厳禁のR指定映画なのですが、なんとアメリカではR映画史上最高のオープニング記録を樹立する大ヒットを記録。現時点ではアメリカだけで3億5000万ドルを超える空前の大ヒットとなっています。

アメコミ映画好きにとっては待望の作品なわけですが、この映画で注目したいのはソーシャルの力で生まれた映画ということなのです。実はこの「デッドプール」は09年から映画化の噂があったのですが、なかなか実現しませんでした。しかし14年に“製作準備段階で撮られていた”とされるテスト映像なるものがネットに流出。その出来栄えの素晴らしさにファンが狂喜しソーシャルネットワーク上で拡散。その反響が後押しとなって映画会社がゴーサインを出し今回の映画化が決まったのです。

毎夏アメリカの西海岸で、アメコミ&ポップカルチャーのイベント<サンディエゴ・コミコン(SDCC)>が開催されます。15年のSDCCで「デッドプール」の発表が行われたのですが、壇上から主演のライアン・レイノルズが満員のファンに対し「デッドプールの映画が決まったのは、1年前にリークされた映像とそれを盛り上げてくれた君たちファンのおかげ」という旨の挨拶を行い、大喝采を浴びました。(筆者もその場にいたのですが、空前の盛り上がりでした)

この言葉からも分かる様に、映画『デッドプール」はファンの声とソーシャルが生んだ奇跡だったのです。

文・杉山すぴ豊

映画『デッドプール』は6月1日(水)、TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー

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