暴力、麻薬、死が日常のアメリカとメキシコ国境の町フアレス。血で血を争う無法地帯の最前線に3人が送り込まれた。巨悪メキシコ麻薬カルテルをどんな手段を使ってでも撲滅せよ―。
アカデミー賞技術賞3部門<撮影賞/作曲賞/音響編集賞>にノミネートされたサスペンスアクション映画『ボーダーライン』(4月9日公開)。<謎の男・アレハンドロ>を怪演した名優ベニチオ・デル・トロにインタビューを敢行した。
――最高の映画でした。世界中で観客が大絶賛しています!でも、メキシコの国境付近だけは行きたくないです!
デル・トロ あぁ・・・。
――アカデミー賞で『ボーダーライン』が作品賞、デル・トロ兄貴が助演男優賞がノミネートされてないのも納得がいかないです!
デル・トロ あぁ・・・うん。
――す、すいません!取り乱しました。命だけは!さて、デル・トロ兄貴が本作で一番好きなシーンはどこですか?
デル・トロ シーンというかこの作品に参加できて、一部になれたことが一番嬉しかったな。キャストと監督、ロジャー・ディーキンス(撮影監督)と一緒に作品を作れて良かった。この作品はいろんな法則を破っている。スタートは女性視点だったのに、途中からアレハンドロの視点に変わる。とても実験的な構造を持った映画で本当にうまくいくのか疑ってたよ。
結果、うまくいったけどね。新しい体験をできたことが嬉しかった。
――バンバンを人撃ってましたけど、銃の使い方が上手いですし、いつもより怖さが増していました。特訓など受けたんですか?
デル・トロ この作品のためには特に訓練は受けていないよ。ただ、前にプロからみっちり教えられているからな。その時の経験が活きていたと思うね。
――ジョシュ・ブローリンとの共演はどうでしたか?2人が拷問するシーンは映画史に残るトラウマシーンでマジで怖かったです!
デル・トロ 拷問シーンはオレも好きだよ。よくできたと思う。
ジョシュは長年の友人であり、共演経験もある。彼のファンだし、いい俳優と仕事をするのはとても楽しいよ。あと彼はものすごいエネルギーがあるからさ!
――エミリー・ブラントとの共演はどうでしたか?最後のシーンまでヒリヒリしました
デル・トロ 彼女との最後のシーンはよく覚えている。撮影をしていると脚本にはないことが起きる時がある。このシーンは一体どうなるんだろう?と疑いをもっていたんだ。
だけど、彼女が・・・。それがあのシーンの本質だった。あのシーンを目撃できたことは俳優としては良かった。あの一瞬でこのシーンがぐっと高まったんだ。
――本作のメガホンを撮ったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(『プリズナーズ』『灼熱の魂』)とのコラボはどうでしたか?役作りなど具体的な指示はありましたか?
デル・トロ 彼は人の話をすごく聞いてくれる。時間をかけてやらせてくれて、そのまま活かしてくれた。何かあると一緒に解決しようと歩み寄ってくれる。彼の作品に出演できたことはとてもいい経験になったよ。
――アレハンドロの役作りで大変だった点はありますか?どのようにして作り上げましたか?モデルなどいたのでしょうか?
デル・トロ モデルはいなかった。これはフィクションだからね。役作りは、他の作品と同じようにストーリーとキャラクターに集中することだ。アレハンドロに起きたことを考える。そして、その瞬間を演じる・・・。
役は演技をしている中で考えてもいない方向に行く時もあれば、撮影を続けているうちにみつかる時もあるんだよ。
――さ、さすがっす!デル・トロ兄貴は「トラフィック」で刑事、「野蛮なやつら/SAVAGES」で殺し屋、「エスコバル」で麻薬王と、麻薬カルテル映画専門俳優みたいになっていますが、実際に関係者などにアプローチしたりしたのですか?
デル・トロ 今回は会っていない。長年、麻薬カルテルを題材にした映画に出ているけど、テレビシリーズ「ドラッグ・ウォーズ/麻薬戦争(1990)」の時は、役作りのために麻薬カルテルの人間には会ったよ。
――アレハンドロというキャラクターは好きですか?デル・トロ兄貴だったら、大切な人を失ったら復讐しますか!?
デル・トロ アレハンドロの気持ちは理解はできるけど自分がどう行動するかは分からないな。目には目を、というのは必ずしも正しいとは限らない。(復讐について)痛みや怒りを覚えるだろうけど、賛同は出来ないかもしれない。でも理解はできるよ。
演じる役としてはアレハンドロは好きだよ。キャラクターとして複雑だし、興味深い。こんな役は俳優であれば誰でもやりたいと思うんじゃないかな。
――では、最後に。本作は既に続編の噂があります。また、最近では「スター・ウオーズ」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」にも出演して振り幅が広すぎです。頑張ってください!
デル・トロ 続編の話はまだまったく聞かされていないんだよ!でも、あるなら早く脚本が読みたいね。
『ボーダーライン』は4月9日(土)角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
■『ボーダーライン』ストーリー
巨悪化するメキシコ麻薬カルテルを殲滅すべく、アメリカ国防総省の特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)。特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)に召集され、極秘任務に就く。それは謎のコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に、アメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織・ソノラカルテルを撲滅させるミッションであった。
仲間の動きさえも把握できない常軌を逸した極秘任務、そして人が簡単に命を落とす現場に直面したケイトは、善と悪の境界が揺らぎ始める。麻薬カルテルを捕えるためにどこまで踏み込めばいいのか?法無き世界で悪を征する合法的な手段は、果たしてあるのだろうか?得体の知れない悪を前に、知れば知るほど深くなる闇の行く末とは―
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