無期限停職処分のため、暇を持て余してヨーロッパ周遊していた杉下右京(水谷豊)が帰国して警視庁特命係の部屋を訪れると、そこは冠城亘(反町隆史)が常駐する場所になっていた。いきなり高く紅茶を注ぐ杉下に驚く冠城は、法務省から出向先として通常の警察庁ではなく警視庁を選んだ変わり種のキャリアだ。そのため、いつもは特命係というだけで敵対心を隠さず嫌みを投げつける捜査一課の面々が、「お客さんだから」と慇懃(いんぎん)な態度をとり続ける。初めて警察官ではない人物が杉下の相棒候補として登場して、Season14が始まる。

特命係の新・相棒である冠城は、惚れっぽくて女性へのアプローチが露骨だ。ところが、たびたび登場する、過去にいろいろ関係があった女性たちから憎まれ口は叩かれるものの、なぜか恨まれずに済んでいる。かといって、人好きする愛嬌たっぷりな人物というわけではなく、目的のためなら手段を選ばない、したたかさもある。“相手の守りをぐいぐい打ち破る”杉下を利用して真実にたどり着きたい、と杉下本人に言ってしまうほどだ。
出向という立場のため、再三にわたって法務省へ戻らないかと事務次官の日下部彌彦(榎木孝明)から声をかけられる冠城だが、何かと理由をつけて特命係に居座り続ける。スリルと冒険を楽しむ節があり、特命係にいることで体験する事件捜査に対して「新鮮で面白い」「暇つぶし」と平気で口にして、杉下に叱られたこともある。エリートであること、事務次官の後ろ盾を持つことに対する傲慢な自信の顔をのぞかせるが、様々な事件を杉下とともに追いかけるうち、天職として特命係の相棒であることを見つけてしまうまでが、Season14の物語だ。
冠城の出身省庁との関係や2015年から2016年にかけて放送した時代背景もあり、法曹界や政界も巻き込む事件が多いSeason14だが、危うさを漂わせる女優たちの存在感からも目が離せない。売れない芸術家を支えた内縁の妻の笛木優子、娘が誘拐された過去を隠す母親の新妻聖子、人生を賭けた芝居で対決する女優を演じた高橋かおりと多岐川裕美、短期間だけ特命係に在籍したことがある陣川(原田龍二)が片想いの相手に黒川智花、元公安調査官の高岡早紀など、「細かいことが気になってしまう、僕の悪い癖」を持つ杉下と、どのように向き合うのか気になる面々ばかりである。
またSeason14は、組織の論理と杉下の正義がぶつかり合う場面も多い。何があってもぶれない杉下の姿は、こうあってほしいと願う社会について、理想を失わない人がいてくれるという希望を持たせてくれる。きっと、そういう一人一人の努力の積み重ねが、平穏な日常を作り出しているのだろう。
現在放送中の『相棒』シリーズと同じ特命係メンバーと、彼らを取り巻く警察や法務省などの人間関係、利害関係を知るには、実は“入門編”として最適なSeason14。長く続くシリーズだが、何か安心感を与えてくれる最新の杉下と冠城をのぞいてみると、これまで見たことがないという人でもハマることは間違いない。
『相棒 season14』はAbemaビデオにて全話配信中。




