
きのう、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩委員長による初めての首脳会談が行われた。北朝鮮の最高指導者がロシアに訪れるのは実に8年ぶりのことだ。
会談を終え、金委員長は「ロシアとの関係を発展させることは地域の平和と安全を保障するのに不可欠だ」とコメント。プーチン大統領も「非核化問題についても自由で具体的な話をした。(金委員長は)核を廃棄するためには北朝鮮の安全と主権が確保されることが重要だとの発言があった。北朝鮮は、安全の保証が欲しいという印象を持った」と話している。ただ、会談後の会見に姿を見せたのはプーチン大統領だけで、共同での会見や文書の発表が行われることもなかった。今回の首脳会談の意味合いはどこにあるのか。そして、なぜ今、ロシアなのだろうか。

実は去年9月、ウラジオストクで行われた東方経済フォーラムに金委員長を招いていたというプーチン大統領。しかし金委員長は出席しなかった。
ロシアと北朝鮮の関係性について、ロシア情勢に詳しい新潟県立大学の袴田茂樹教授は「旧ソ連の時代から共産主義国として密接な関係にあったが、ペレストロイカが始まるとスターリン主義的な体制は撲滅しないといけないという動きが強まり、北朝鮮はその権化のような見方をされていた。その後のエリツィン時代の民主化、あるいは先進国に追いつくんだという時代においても。北朝鮮というのは、指導者の眼中になかった。そういう意味で旧ソ連、ロシアが北朝鮮を無視してきたのも事実。しかしプリマコフ首相が90年代半ばになって、これはまずいと、北朝鮮をはじめ、かつての社会主義諸国との関係を強化する方向性を打ち出した」と説明する。
その上で、プーチン大統領の思惑については「プーチン大統領自身としては2015年からずっと招き続けていて、ようやく実現したという状況。たしかに経済的にも北朝鮮の存在は大きくはないし、核の脅威もそれほど感じていない。ただ、東アジアでのロシアのプレゼンスを大きくしたいし、世界的に重要な問題にには"大国ロシア"は当然関わるべきであるという強いプライドがある。核問題に関してもアメリカと並んで最大の各大国という自負があるのに、北朝鮮問題では蚊帳の外に置かれてきたという屈辱感が非常に大きかったし、トランプ大統領と金委員長の間だけで決められてしまうのは絶対に認められない。だからロシアは6者協議の復活を訴えている。金委員長にとっても、中国だけでなくロシアという後ろ盾があったほうが対米スタンスで強くなれる。その意味で両方の思惑が一致したということだと思う」との見方を示した。
また、北朝鮮情勢に詳しい日本大学の川口智彦准教授は「どちらといえば金委員長の方が気持ちは強かったと思う」と話す。
「お父さんもおじいさんも強い関係を維持してきロシアに自らも足を運び、核問題、経済問題を話し合うということには意義があったのだろう。ハノイの米朝首脳会談でこれといった成果を出せなかった金委員長としては、行ったことのないロシアに行く方が、国民に"また中国か"と思われずに済む」。

では、両氏は今回の会談の結果をどう見ているのか。
袴田氏は「ロシアが蚊帳の外に置かれる状況ではなくなった。ロシアの有力なアジア問題専門家は"2人で写真を撮ればそれだけでプーチン大統領の目的は果たせた"と指摘していたが、少なくともロシアにとっては首脳会談を行うこと自体が目的であったと言ってもいいくらい」とコメント。「実は2017年に中国の習近平とプーチンが北朝鮮の非核化に関するロードマップを作っていて、その内容がまさに段階的な非核化だった。ただしロシア人は我々が思うよりもはるかにリアリスト。北朝鮮が非核化を"ツール"として利用したとしても、最終的に放棄することはあり得ないので、どうコントロールするかが問題だと考えている」と指摘した。
川口氏は「国際的にも国内的にも、金委員長の動きは去年の1月あたりからトータルではうまくやっていると思う。そもそも合意文書のことは考えていなかったと思うし、トランプ大統領の"一気に"ではなく、"段階的な"非核化についてロシアに後押ししてほしい金委員長としては、プーチン大統領が表現を変えて言ってくれたので、この点については70%くらいは満足したのではないかと思う。もう一つ大事なのは、事前にアメリカのビーガン北朝鮮担当特別代表とロシアの外務省関係者が会っている。つまり。アメリカとロシアが北朝鮮の核問題について共同歩調が取れてきたということだ」と説明した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)









