元AKB48グループのメンバーで女優の北原里英が東京・練馬区の実在の遊園地を舞台にした『映画 としまえん』でホラー映画初主演。“としまえんの呪い”が女子大生たちに降りかかるという物語だ。『凶悪』の白石和彌監督の映画『サニー/32』では主演を務め、その後もドラマ「フルーツ宅配便」(テレビ東京)、舞台「『新・幕末純情伝』FAKE NEWS」、舞台「どろろ」、そして本作と挑戦的な作品に数多く出演してきた北原だが、彼女の目指す女優像はどんなものなのか。卒業後に気づいたという自身の負けず嫌いな一面、“女優”としての日々について語ってもらった。
デビュー前のオーディションで『着信アリ』のワンシーンを再現
ーー北原さんはいつもユニークな作品に出演されていますよね。
運がいいなと思います。毎回勉強になりますし、出会えてよかったなという人に出会えているので。
ーー『としまえん』のオファーが来たときはどのように思われましたか?
ホラー映画主演は初めてだったのでうれしかったです。実は元々ホラー映画が好きで、憧れていました。
ーー海外と日本のホラー、どちらが好きですか?
ジャパニーズホラーが大好きなんです!海外のものももちろん好きなのですが、スプラッタなものが多くて、ストーリーよりも派手さ、グロさが目立つものが多い印象なのですが、ジャパニーズホラーはストーリーもあって繊細なので。海外に誇れる文化だと思います。
ーーホラー作品だと表情も普段の演技と違うかと思います。練習されましたか?
AKB48に入る前からいろんなオーディションを受けていたんです。あるオーディションで「特技を1分間見せる」というのがあったんですが、私には見せられる特技がなくて、なんでそんなことやっていたんだろうって感じなんですけど……『着信アリ』のワンシーンを再現しました(笑)。ドラム式の洗濯機を覗いたら、死体が落ちてくるというシーンです。まぁ、落ちたんですけど(笑)。
ーーすごく個性的な特技ですね!
もともと、ふざけて何かを再現するのが好きだったんです。学校で友達の前で見せたりしていました。それを大人たちの前で見せたんです…。女優になる前からホラーの演技練習していましたね(笑)。今回もいい目の開き具合だったとは思います(笑)。もともと目が大きいので、おそらくホラー向きの顔だと思います。
ローカルな遊園地が好き!基準は一風変わったアトラクションがあるかどうか
ーー今回、実際に「としまえん」で撮影されたとのことですが、今まで「としまえん」に行かれたことはありましたか?
ちょうど5、6年くらい前にAKB48のメンバーと遊びに行ったことがありました。4人くらいで行ったんですけど誰にも気づかれませんでした(笑)。なので、懐かしいなと思いながら撮影を楽しみにしていました。
ーーよくホラー作品の現場で怪奇現象があったみたいな話を聞きますが、現場でそういうことはありませんでしたか?
私もあるのかなと思っていたんですけど、なかったです。撮影はすごく楽しかったです。ほぼ同年代のみんなで青春を感じました。アトラクションも乗せてもらったりしました。休演日と閉園後に撮影する際の、お客さんがいない遊園地も新鮮でした。
ーー怖い雰囲気のアトラクションはありましたか?
「ミラーハウス」が怖かったです。お化け屋敷よりも怖い。外観もちょっとホラーな感じですし、鏡って怖いですよね。角度によって人が写っちゃうので撮影が大変でしたね。
ーーホラー好きだということで、実際に撮影した映画に何か映ってないかとか探しちゃったりしませんでしたか?
思いました!でも、1回しか観れていないので見つけられてないだけかもしれないです。影がない、とか!(笑)だから皆さんには是非探してみて欲しいな~なんて思っています。
ーー「ミラーハウス」もそうなんですけど、私の地元・大阪にも昔「エキスポランド」という遊園地があって「マイナス30度の世界」というアトラクションがあったんです。北原さんに、そういった個性的なアトラクションの思い出はありますか?
実は私、地方のローカルな遊園地が大好きなんですよ!そのローカルさの基準が「マイナス30度の世界」があるかどうか(笑)。寒さを体験するだけのアトラクションなんですよね!
ーーそうなんです!そういった不思議なアトラクションの思い出ってありますか?
「ビックリハウス」も印象深いですね。
ーー「ビックリハウス」はどんなアトラクションなんですか?
椅子に座って周りの壁が回るんです。それで、自分が回っていると錯覚するという。
ーーそのビックリなんですね!(笑)
そんなにビックリしないんですけどね(笑)。でもそういうローカルな遊園地のアトラクションが好きなんです。あと、遊園地ではないのですが…(笑)、遊園地と同じくらい、いや、それ以上に水族館も好きで、地方ロケに行っても空き時間に行ったりしています。先日まで舞台で三重に行っていたんですけど、そのときも鳥羽水族館にお邪魔しました。
ーー地方に行ったときもアクティブに活動されるんですね。
アウトドア派なので絶対にホテルにこもったりしないですね。ホテルにいたとしても、そこにある施設を満喫したいです。AKB48時代も、ホテルに温泉が付いていたことがあって、営業が24時までだったので、もう1人仲のいい同期と仕事から急いで帰って残り10分で温泉に入って、さらに朝も入りました(笑)。
卒業後、女優としての日々に充実感「どの卒業生ともかぶらない活動をしたい」
ーー座長として意識したことはありますか?
最初はもっと座長として振るまわなきゃと思っていたんですけど、最年少の浅川梨奈ちゃんが仲を取り持ってくれました。私も(浅川と)共演したことはなかったんですけど知っていましたし、向こうも仲良くなりたいと思ってくれていたみたいで。私、今は人見知りじゃないんですけど、その時卒業したてで、外の世界にビビっていたんです。特にメンバー以外の同年代の女の子とお仕事することってなかなかなかったので、怖くて。だけど梨奈ちゃんが頑張って心を開かせてくれました。
ーー仲良くなったきっかけは覚えていますか?
撮影何日目かにみんなでご飯を食べに行くシーンがあるんですけど、そのシーンのときに仲良くなりました。あとお化け屋敷のシーン。怖かったのでくっついて、それで仲良くなれた感じはあります!
ーー以前も『サニー/32』のインタビューに立ち会わせていただいて、今回も北原さんとお話ししているとすごくお上手で、人見知りだなんて思えないです。
今は人見知りじゃなくなったんです!『サニー』のときも自分から「リリーさん、しりとりしましょ~」って言ってたんですけど(笑)。
今回だと、同年代のメンバーの中で、明らかに自分の経験が少ないと思っていたので、「なんで北原が主演なんだ!」って思われたらどうしようとか(笑)。常に最悪のパターンを想像してしまうところがあるんです。料理してても、この包丁が足の上に落ちたら……とか妄想してしまいます(笑)。
ーー考えすぎです!ホラー見すぎですよ!(笑)
最悪を想像していたら、もし起こっても対処できそうじゃないですか(笑)?それで、撮影の時もそんな風にビビってたんです。そういう気持ちも、この1年間(キャリアを積んでいったことによって)克服してこれました。みんなと出会えてよかったです。みんなの活躍がいい刺激になっています。
AKB48グループの子たちに対してだと「負けたくない」「悔しい」という気持ちがどこかにあったんですけど、今回の共演者にそれはないんです。「すごいな~」って心から思える。そう思える自分に気づかせてもらいました。
ーーそのほか、卒業して変わったことはありますか?
最近本当に感じるんですけど、自分ってこんなに明るかったんだって(笑)。卒業してから毎日すごく楽しいです。もちろんグループにいたときも楽しくてみんなのこと大好きでしたし、今も仲が良いですけどね。あとは、1人になってからの仕事は、やりがいを感じます。自分でやったことが全部自分に返ってくる。充実しています。1人になるまでは怖かったんですけど、卒業したからと言って1人ぼっちになる訳ではないし、絶対裏切らない仲間もいる。そのことに卒業してから気づきました。
ーー素敵ですね。今後、どういう女優さんになりたいですか?
やっぱりAKB48グループにいたことが前提としてあるので、どの卒業生ともかぶらない活動をしたいと思います!
ーー今後の活躍を楽しみにしています!楽しいお話、ありがとうございました。
テキスト:堤茜子
写真:You Ishii