「皇位は、皇統に属する男系の男子たる皇族が、これを継承する」。天皇陛下の即位に伴い、皇室典範が定める皇位継承資格を持つ皇族は皇嗣殿下となられた秋篠宮さま、悠仁さま、上皇さまの弟の常陸宮さまの3人のみとなった。
将来の安定的な皇位継承のため、立憲民主党では皇位継承資格を女性・女系の皇族にも拡大することや女性宮家を創設することなどについて議論を呼びかける方針だ。
1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した同党の阿部知子衆院議員は「ただ単に"少ないから女の人も"ではない。党の中で詰めているのは女性宮家の論議だが、国民的には女性天皇の問題が一番に来ると思う。社会は男性と女性の半々で成り立っている。天皇の場合はずっと男系で、そこに女性がお嫁に入る形だっただけのことだ」と話す。
■竹田恒泰氏「"1杯だけ付き合ってくれ"と言っているようなもの」
4月18日付の朝日新聞デジタルによると、「女性宮家」の創設に賛成が50%、反対が37%、その他・答えないが13%となっている。
この「女性宮家」の問題について、作家の竹田恒泰氏は「私は一代限りであろうがなかろうが絶対反対という立場だ。仮に女性宮家の制度が数年前にできていたら、小室圭さんが皇族になって、今年のお正月の一般参賀で手を振っていた可能性がある。小室さんがいいか悪いかという話ではなく、民間出身の女性を宮中に入れて皇后になって頂くというのは1600年前から山ほど事例があるが、民間出身の男性が皇族になったということは一度もない。もし男系の血筋を引かない人だとした場合、ある人は認めるが、ある人は認めないという天皇になってしまう可能性がある。上皇さまや天皇陛下のことを認めないという人はいないはずだ。それは男系だからだ。人徳があるとかやさしいとかそういうことで選ばれたわけでもない。仮にこの人は国民思いで祈ってくれるからということで選んだら、それは大統領制だ」と話す。
これに対し、ジャーナリストの堀潤氏が「感覚的に綿々と受け継がれてきた何かが変わるのではないかというご指摘はごもっともだ。僕も女性宮家創設には反対だ。立憲民主党が議論を女性宮家から始めるということにも違和感がある。女性天皇の話から始めたほうが馴染むのではないか。ただ、女性の場合は外からいらっしゃっても大丈夫だが、男性の場合は何かざわつく。この違いは何がそうさせるのだろうか」と尋ねると、竹田氏は次のように回答した。
「結論としては分からないが、我々の先祖が2000年の間そうやってきたところに何か意味があるのだと思う。もし婿のような形で男性が宮中に入れたとしたら、織田信長や徳川家康は自分の息子を皇族にしただろう。皇室には変わることもあるが、変わらないこともある。古いから正しいというわけではないし、何でも変えてはいけないということではない。ただ、取捨選択の中で守り続けられてきたことには何か意味があるはずだ。もしそれを変えようとするならば、謙虚な気持ちで見た上で変えないといけない。結局、女性宮家創設の話自体が女性天皇、女系天皇論が装い新たに出てきたようなものだ。例えば"これから100杯飲みに行こう"と言っても誰も行かないが、"1杯だけ付き合ってくれ"と言えばと大体の人は付き合ってくれる。それでも結局1杯で終わることなんかない。女性宮家の話はあくまでも呼び水で、女性天皇の話の始まりだ」。
■八木秀次氏「システムを変えてしまったら、私の予想では2代で壊れる」
麗澤大学教授の八木秀次氏は「"女性皇族が結婚後宮家の当主として皇室に残れるようにする"ということだが、それが一代限りかどうかで、その後の展開が大きく変わる。一代限りでない場合、皇族以外の男性との間に生まれたお子さまは女系になるため、女系継承の始まりになる。世論調査もその辺りのことを聞いていないので、正確なところはよく分からない。誰もが認めるすばらしい人格者の男性が入ってくればそれでいいのかと言えば、それもダメだ。皇室とは何なのか、今の天皇がなぜ天皇なのか、皇族がなぜ皇族であるのかという正統性の問題だ。ここをきっちり正確に理解した上で国民が判断するならいいが、生半可な理解のもとで男女平等やジェンダー論が前面に立った議論がなれている。判断を誤るのではないか。官房長官が会見で"古来一度も例外がなく男系で継承されてきた重みを踏まえて"とおっしゃっていたが、そもそも普通の家で純粋な男系継承をしているところはないので、ほとんどの人は皇位継承の仕組みを誤解している。男系継承、女系継承の意味を国民にどれだけ正確に理解してもらうのかが政府にとっても課題だ」と指摘。
その上で、小泉政権下の「皇室典範に関する有識者会議」での資料を元に、「天皇に女子Aから男子Kに至るまで11人の子孫がいるとして、女系男子・女系女子はいずれも皇室から出て、我々と同じ民間人の立場になっていく。それに対し、皇族になれる、皇位継承権を持つのは、男子Bと男子Fと男子Kだけだ。つまり男系継承を重ねていくというのは、対象者を限りなく限定していくということだ。この細い糸に連なっている方だけが正統性を持つ、そういう100%の血統原理で成り立っているシステムだ。これを変えてしまったら、私の予想では2代で壊れる」とした。
皇室ジャーナリストの山下晋司氏は「女性宮家創設の話と、女性天皇・女系天皇=皇位継承の話が二本立てであるように議論がなされているし、マスコミもそういう取り上げ方をしている。単に女性宮家を創設し、公務を手伝ってもらうという皇位継承権とは関係ない話だ。逆に女性、女系天皇が認められれば、女性宮家も自動的にできることになる。そこから配偶者は皇族なのか皇族ではないのか、子どもは皇族なのか皇族ではないのか。どこに住むのか、といった議論の枝葉が分かれていく。私は消極的女性・女系容認論者だが、要は女性、女系天皇の話がうまくいかないので、皇位継承の問題と切り離し、"攻め方"を変えた。私も竹田さんがおっしゃった通り、女性、女系天皇の入り口になると思っている」。
■八木氏と竹田氏の策は「旧宮家の皇族復活」
そこで八木氏と竹田氏が"対案"として示すのが、過去に起きた皇位継承の際の先例だ。
八木氏は「武烈天皇(25代)の後に男系が続かなかったので、その系統は終わりとし、遡って先祖を同じくする別の男系の系統である継体天皇が後を継いだ(26代)。あるいは今上天皇の直系のご先祖にあたる光格天皇(119代)は先代の後桃園天皇(118代)から見て、ひいおじいさんの弟の孫にあたる。この時も、後桃園天皇に男系が続かないのでこの血統は終わりとし、その70年前に創設されていた閑院宮家から光格天皇が即位した。初代が神武天皇かどうかについては議論があるが、お互いの血が遠くても、純粋な男系だけで継承を繰り返してきた。そこで、竹田さんもそうだが、昭和22年10月に皇籍離脱を余儀なくされた、元皇族の血統から宮家の数を増やす」と主張。
竹田氏は「私しかテレビなどに出ていないから"竹田さんが天皇になるんだ"とか言われるが、実は何十人もいる。GHQが廃止した宮家があるからそこを活用すると言っているだけで、大体、私が皇族になってしまったら言論活動も何もできなくなる。皇族となって皇室を守るのではなくて、皇室の外から皇室を守るのが私のポジションだ」と強い口調で訴えた上で、「宮家というのは、万々が一の時に天皇を立てるための"血のスペア"の家だ。実際、皇位継承の危機は800年に1度くらいの頻度で起きたが、全て同じ方法で乗り切ってきた。光格天皇の場合、後桃園天皇の娘と結婚することで、元々あった本家は途絶えたが、閑院宮との結婚によって融合し、皇室の血筋となった。先人たちは実によく考えている」と説明。
「江戸時代には3宮家あったが、心もとないので4宮家にした結果、その閑院宮家から天皇を立てることができた。戦後、3宮家にしてしまったからこうなってしまった。だから宮家を最低でも4つ、できれば5つ用意するのが問題解決の根本だと思う。そのためには旧皇族を復活させる方法、あるいは旧皇族から今の皇族が養子をとることによって宮家を存続させる方法。結婚を伴う入婿で宮家に入ることもできるし、夫婦で養子に入ることもできる。こんなことを言うと血も涙もないと言われるかもしれないが、場合によっては生まれたての赤ちゃんが養子にいくこともある。特別養子縁組という民法で定められた方法だ」。
両氏の主張に対し、宮澤エマは「もしお二人システムで誰かを探すとなると、私たちがどなたかも知らない方が"次の天皇です"となるのではないか。また、天皇陛下のおことばには、上皇さまを一番近くで見てきたからこそ、という思いがあったはずだ。それが宮家の方に務まるのだろうか」と懸念を示していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)