川崎19人殺傷事件 ノンフィクション作家・石井光太氏「同じような構造の事件はこれからも起きるのでは」
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 川崎市多摩区で小学生ら19人が刺され女の子と39歳の男性が死亡、身柄を確保された男の死亡も確認された事件で、安倍総理は記者団の取材に「子どもたちの安全を何としても守らなければなりません。先程、関係閣僚に対して、子どもたちの登下校時の安全確保について早急に対策を講ずるよう指示いたしました」とコメントした。

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 元埼玉県警の佐々木成三氏は「稀に見る凶悪事件だと思う。こういった犯罪は学校レベルの対策では防げなかったと思う。学校だけではなく、地域、行政も含めた防犯体制を作らないといけないと思う」と話す。

 「高速バスがハイジャックされた場合、犯人に分からないよう緊急電子掲示板で外に伝える仕組みがあるが、日本でスクールバスが襲われた事件というのはほぼないと思うし、そこの防犯意識はなかったと考えてもいいのではないか。アメリカのスクールバスの場合、運転手もトレーニングを受けたり、複数のルートをランダムに使ったりするなど、テロ対策の観点からも市や州レベルで安全規定がある。また、ニューヨーク州では警察官が児童に付き添っているし、コネティカット州では降車時に保護者が見えない場合は児童を学校に連れて帰ってしまうという。さらにイギリスのサリー州ではバスに監視カメラとGPSを搭載していて、オンライン上で保護者がバスの位置を確認することもできる」。

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 明星大学心理学部の藤井靖准教授は「教育現場に関わる中で心配していたことが起こってしまった。国土の問題もあるが、日本のように100%の子どもが自分の足で歩いて学校に通っているというのは先進国で珍しい。海外の教育関係者から"なんで日本ではこんなに子どもたちが1人で歩いているのか。集団登下校だとしても、子どもたちだけで通って安全なのか"と聞かれたことがある。その裏返しとして、犯罪者の"狙い所"になってしまう場合があるということ」と指摘。

 「スクールバスだけの話ではない。大阪教育大学附属池田小学校の事件の後、学校のセキュリティは明らかに厳しくなった。校門には南京錠をつけ、防犯カメラも設置されるようになった。しかし、時間が経つとともに実際は南京錠が外れていたり、防犯カメラも誰も見ていなかったり、ということがある。ただ、そうした防犯対策を教職員に全てやらせるのには無理がある。ご高齢の方が警備員をしていたり、いることに意味がある、という形だけのものになったりしていることも多い。学校任せにするのではなく。国レベルで予算を付けることが必要ではないか」。

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 ノンフィクション作家の石井光太氏は「今回の事件や大阪教育大学附属池田小学校の事件や秋葉原無差別殺傷事件のように大きな事件にまで至らなくても、構造という意味では同様の事件はかなりあると思う。国や学校はきちんと対策をとってきたし、カリタス小学校もできる範囲のことは全てやっていると思うし、非常に優れていると思う。一方、なぜこういった事件が定期的に起きてしまうのかといえば、おそらく行政や学校だけでは対応しきれない何かがあるからだと思う」と指摘する。

 「無差別の事件を取材したことがあるが、犯人たちは多くの場合、病気などの要素を複合的に抱え、そしてパッと切れてしまう。その時、たまたま自分よりも弱い者がいて、今回はそれが小学生だったのではないか。虐待家庭に生まれていたり、精神疾患や知的障害を抱えていたり、イジメに遭って不登校になったり、社会でうまくいかなくなったり。そういう、僕たちの人生で一度あるかないか、みたいなことが次々と起き、災いが雪だるま式に膨れ上がっていく。そこで社会構造を見た時に、引き受けてくれる病院がなかったとか、家族が支えられなかったとか、経済的にもうまくいかなかった、刑務所を出ても行き先がなかった、といった要素がある。犯人が特異なところにまで行ってしまった要因は本人だけではなく、社会にもあると思う。それを直さないまま、バスに乗っている時間を長くしようとか、警備員を1人増やそうとか、そういう対策だけでいいのか、と思う。たとえば刑務所から出た後に一人暮らしをするのではなく、施設に行って理解者がいれば、そこまで視野が狭くならずに済むケースもあると思う。やはり犯人自身の問題や、犯行の前の段階でどう抑えていくかなど、全てを包括的に考えていかないと、これからも同じような構造の事件は起きてしまうのではないか」。

 さらに、「犯罪において一番難しいのが、犯人が希死念慮、"死んでもいい"という感覚を持っているケース。少年院や刑務所が更生させようと思っていてもどうしようもない。だから根本にある自己否定感とか希死念慮の部分をどう取り除いていくかを考えていかなくてはいけないが、これは長い年月をかけて生まれてきてしまうもの。やはり学校や会社など、環境の中で自己否定感が生まれない状況を僕らが作っていかなくてはいけない。犯罪を防ぐという意味からするとものすごく遠い話に見えるかもしれないが、そこから積み上げていかないとなかなか難しいのではないかと思う」との考えを示した。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「自殺という文脈で見るなら丁寧に調査してほしいと思うし、同時に一般論として多くの人に知ってもらいたいこともある。例えば足立区で調査をすると、自殺に繋がる因子にうつ病があるが、特に高齢男性が社会的な孤立でうつ病になるケースが多い。報道によれば周囲とのコミュニケーションがなかったということも見えてくるので。そういう可能性も考えられるとは思う」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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