来年度から、働き方改革関連法による残業時間の規制対象が中小企業にも拡大する。これに伴って増加が予想されるのが、真っすぐ家に帰らずにフラフラと時間をつぶす「フラリーマン」だ。
アサヒ飲料が20~60代の男女1万人を対象にした調査によれば、4人に1人が"ほぼ毎日"早く帰宅する一方、1割以上は"フラリーマン"化していることが明らかになっている。また、「仕事が終わってもまっすぐ帰宅せずブラブラ寄り道をしながら帰ることはあるか?」と30~40代に尋ねたアンケートでは、男性の54.1%、女性も43.7%が「ある」と答えている。
立ち寄り先の1位はコンビニだ。2位が本屋、3位が居酒屋・バー、4位が家電量販店、5位がファストフード店となっている。1人で時間を過ごすことが多いようで、神田にある"ひとりカラオケ"のお店は、午後5時の時点でサラリーマンたちで満室だった。
■「情報交換とか、自己研鑽の一環」
東京・有楽町にある飲み場を尋ねると、あまり長居はせずにほろ酔いしたいというサラリーマンたちが集っていた。広告代理店勤務の山口武人さん(仮名・35)は「ハイボールが自販機で180円。居酒屋で飲むと500円でも安い方ですよ」。連れ立って来た大手IT企業勤務の佐々木瞬さん(仮名・35)と、月に3~4回は利用する。
しかし、「今日は水曜日なので定時退社日」と話す佐々木さん、聞けば妻は妊娠5か月で、今も仕事をしているという。「山口さんは異業種なので、普段聞けないような情報交換とか、自己研鑽の一環だと私は思っている。そうやって平日好きにしている分、土日は妻に捧げている」。
「高田馬場ゲーセンミカド」も、子ども時代に熱中したゲームが50円からという安さで楽しめるとあって、早くから30~40代のサラリーマンで賑わう。店舗統括マネージャーの川島裕二さんは「早い人は午後5時過ぎくらいから。売り上げが上がった要因の一つだと思う」と話す。
■「これだけは許してちょうだい」
街で聞いてみると、ある会社員(40代)は「居場所がないから家に帰れない。だから1時間くらい、家の近所をぐるぐると回る」と明かした。結婚して35年の会社員(60代)も「家に自分の居場所がない人たち。僕もそういう感じだ。なかなか家に帰らない」と話した。
"フラリーマン"になるという結婚して4年、育休中の妻と1歳の子どもがいる産業機器メーカーに勤務の桜井伸介さん(仮名・32)に同行すると、自宅近くのコンビニでおつまみのチキンと缶酎ハイ1本(合計250円)を購入。草が生い茂る、"妻の知らない"お気に入りの公園にやってきた。
「景色を眺めていた方が、ちょっと無になれるというか、会社では当然頭を使っているし、帰ってからもそうだし。昭和時代に造られた団地も結構あったりして、数十年前、自分らの親世代もこういう所に住み始めて、そして引退していったというか。自分も同じように結婚して子どもができて、郊外に住み始めて同じことを繰り返しているのかなって。高度経済成長期の残り香を感じると言ったらちょっと大げさですけど…」。
この、わずか15分の時間が、桜井さんにとっての唯一の息抜きだという。そんな時にも、"少し帰宅が遅れる"というメッセージに、妻からは「ガオー」と叫ぶ動物の絵文字が送られきた。「どうだろうか。怒っているようで怒っていない時もあるし、怒っていないようで怒っている時もあったりするので。まぁこれだけは許してちょうだいという感じ(笑)」。
■男性から探偵に相談も…
さらに意外なところにも影響が出ていた。それぞれに家庭を持つ男女の写真を手に、「男性からの"調査の依頼"が殺到していると話すのは、ある探偵だ。「旦那さんから頼まれて、女性(専業主婦の妻)を追いかけて行ったら、結局男性と会っていた」。調査を進めるとホテルでの密会などが判明したという。
オハラ調査事務所の小原誠所長は「ノー残業デーで旦那さんが家に帰ると、家に奥さんが居ないという"異変"がある。"えっ?ウチの奥さんはどこに行ったの?何をしているの?"ということが重なって、探偵に頼むケースが多くなっている」と話した。
■「男性にとってはかわいそうな時代」
夫婦問題カウンセラーの小林美智子氏は「結婚すると、独身時代とはライフスタイルが随分変わる。やっぱり男女ともに1人の自由な時間が欲しくなる。男性の中でボーっとした時間、リセットした時間というのが必要みたいだ。何も考えない。ただ家に帰ってしまうとそういう時間がとれないからちょっと寄っていきたいという気持ちは分かる。ただ女性は家事などの負担が増えてくるし、まして子どもさんができるともっと負担が増えてくるので、家で待つ女性から "こんなに大変なのに、何のんびりしてんの"みたいに映ってしまう。フラリーマンによる問題は、子どもさんができてからというのがほとんどだ」と話す。
離婚・夫婦問題カウンセラーの住吉久子氏は「残業が当たり前という中で過ごしてきた人にとって、いきなり"残業しないで"というのは困る。残業がなくなる=収入が減るという中、英会話などの習い事はお金がないとできないことがほとんどだし、男性にとってはかわいそうな時代だと思う」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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