講談社の女性ファッション誌『ViVi』のウェブ版が掲載した、自民党との広告企画記事が批判を浴びている。
企画は同誌の公式ツイッターでも拡散、「みんなはどんな世の中にしたい?自分の想いを #自民党2019 #メッセージTシャツプレゼント のハッシュタグ2つをつけてツイートすると、メッセージTシャツがもらえるよ!ViVi公式Twitter(@vivi_magazine )からDMにて当選連絡をするのでフォローをお忘れなく #PR 詳しくは」としている。
"元気でミーハーな女の子"がターゲットで、アジア各国版も展開。メイン読者は18~25歳という店から、ネット上には「ViViがこんな特集やる必要あんの?」「好きな雑誌なのに…自民党の宣伝みたい」「政治や社会問題が普通に話題になるきっかけになるといいな」など声が上がっている。
批判を受けて講談社は「このたびの自民党との広告企画につきましては、ViViの読者世代のような若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません。読者の皆様から寄せられておりますご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたいと思います」とコメントしている。
この問題について東京工業大学の西田亮介准教授は「#自民党2019 について。自民党広報の割と優れた創意工夫の範囲内。いまのところ違法性も、サブリミナル等倫理的に問題のある手法も認められない。政治広報といったとき、これしか目に入らないのは他党の展開不足もある。さすがにこれだけで批判するのはどうか。むしろ積極的かつ健全に競争すべきでは」とツイート。一方、コラムニストの町山智浩氏は、講談社に取材したBuzzFeed Japanの記事を踏まえ「ここで講談社は自民党との関係について回答を拒否したけど、プライバシーではなく、メディアと政治の関係なのだから、ちゃんと答えないと、今後、ジャーナリズムを続けていくうえで、取材先の回答拒否を批判できなくなっちゃうよ」と指摘している。
公職選挙法に詳しい片木淳弁護士は「Tシャツに特定の候補者の名前を記載しておらず、特定の候補者への投票を呼び掛ける文言もないとされている。これについては公選法で規制される選挙運動・政治活動にはあたらないだろう」と話す。また政党による買収行為にあたるかについては「過去判例から見ても、違法性が認められるような事実は認められない。」としている。
タレントの山田菜々は「私は読者層と同じ世代。そもそも選挙がいつあるかとか、今こういう状況だから選挙が行われるというところから入らないといけないと思っているので、影響力のある女の子が言うことで見ると思うし、最初の入口としてはいいと思った。ハッシュタグが"#自民党2019"なので否定する人もいると思うが、若い子が自民党の味方になるとか、そういうのではないと思う」と話す。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「講談社には色々な意見をもった雑誌があるし、キャンペーン自体が悪いわけでもない。説明の前半の趣旨もいいと思う。ただ"政治的な背景や意図はまったくございません"という部分はちょっと無理があるし、自民党とだけやっていたら、やはり特定の意図や背景が出てしまう」と指摘。「自民党の若い世代への広報・宣伝力には優れているところがあるし、こういうことの積み重ねがあるから、若い世代の支持も高いんだと思う。その意味では野党がちゃんと努力すべきだとも言える。一方で、キャンペーン競争が加熱すると最後は資本力の差になるので、必然的に自民党が強くなりそうなので、何か一定の規制をかける必要があるのかもしれない」との見方を示した。
華僑マーケターの陳暁夏代氏も「ハッシュタグに"自民党"と入っている時点で政治的なキャンペーンの一環なのに、それを認めないという状況になっているからこじれている。"政治的な背景や意図はまったくございません"という説明や、"コメントを差し控える"という回答には違和感がある。今こそちゃんとした見解を出すべきだった」とした上で、「出稿した、タイアップした、ということと、その内容は分けて考えないといけない」と話す。
「後者に関して言えば、『ViVi』という媒体の選定、ハッシュタグなどの手法が完璧ではなかったためにこうなったんだと思う。前者に関していえば、若者向けの施策は絶対に必要になってくる。広告代理店にいた頃、政党や選挙のキャンペーンを扱ったこともあるが、ここがすごく難しかった。自分がどの政党を支持しているのかといったことを明らかにしている芸能人が日本にはほぼいないし、ポリシーを発表している、意志のあるメディアも少ない。だから多くの人が集まっている媒介・媒体を探すのが大変だし、そこを通さずに広告を打っても、それは誰にも見向きされない。そのバランスを取るのが難しいのは事実だ」。
大王製紙前会長の井川意高氏は「私は皆さんと意見が違って、本当に政治的な意図はなかったと思う」と話す。
「出版社も大変なので、あくまでも商売、ビジネスだったと思う。アメリカではFOXニュースは共和党寄りだということがはっきりしているし、日本でも反権力の色をはっきりさせている新聞もあれば、自民党寄りの新聞もある。講談社に関していえば、『週刊現代』『FRIDAY』にしろ、グループ企業が出している『日刊ゲンダイ』『FLASH』にしろ、どちらかと言えばアンチ自民だし、常に権力批判をしてきた媒体。その中で『ViVi』がこの程度のことをやったからといって、"講談社が思いきり政権にすり寄っている"とヒステリックに批判するのは違うんじゃないか。反応を見ていると、ローラさんが沖縄について発言した時、"芸能人だって発信するべきだ"と言った人が今回は講談社に批判的だったりする。結局は自分の政治的スタンスで言っているポジショントークも多いのではないか」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)












