昨年、「第43回報知映画賞」で自身初の主演女優賞に輝いた篠原涼子。「第42回日本アカデミー賞」においても、優秀主演女優賞と優秀助演女優賞をダブル受賞するなど、今や実力派女優として確かな地位を確立している。その一方、私生活では7歳と11歳の男児の母でもあり、子育ての真っ最中。そんな篠原が、反抗期の娘を持つシングルマザー役で主演を務める映画『今日も嫌がらせ弁当』が、6月28日(金)に公開される。
本作は、篠原演じる八丈島で暮らすシングルマザー・持丸かおりが、高校に入り反抗期を迎えた娘・双葉に対し、3年間毎日“キャラ弁”を作ることでメッセージを伝える様を描く、実話に基づくストーリー。「kaori(ttkk)の嫌がらせのためだけのお弁当ブログ」を書籍化したエッセイが原作となっている。
今回AbemaTIMESでは、娘との関係に悩みながらも、ユーモアに溢れポジティブなかおりを自然体で演じた篠原に、インタビューを実施。役作りからロケ地・八丈島でのエピソード、さらには普段作っているお弁当の中身や、反抗期を迎えつつあるという息子への接し方など、プライベートな話題まで話を聞いた。
原作者と丁寧に話しながら作り上げた、明るい母親像
――かおりを演じる上で意識されたことや、心がけたことを教えてください。
篠原: 原作者のkaori(ttkk)さんともお話したんですけど、私とは真逆のタイプで、大人しい感じの方だったんですね。kaori(ttkk)さんが映画を観た時に「これ私じゃないわよ」と思われる箇所がたくさん出てくるかもしれないですけど、そこはご了承いただいて、面白いキャラクターのお母さんにイメージを組み立てていきました。自分自身が鼻息荒くガツガツやるというよりも、肩肘張らずにリラックスして演じるようにしましたね。あとはお弁当を作る時の海苔の貼り方とか、チーズをカッターでカットするとか、繊細ですごい難しいんですけど、「手慣れているな」「やっているな」という感じが出るように、練習させていただきました。
――反抗期の娘と心を通わせる手段が、なぜお弁当だったのでしょうか?
篠原: 原作者のkaori(ttkk)さんに伺ったら、言葉があまり上手ではないと。それに、手紙では読んでくれない可能性もある。でもお弁当は毎回開けるし、食べなきゃいけない。だからそこでメッセージを絵にしたら嫌でも伝わるということで、お弁当にしたとおっしゃっていました。手紙だと硬く感じちゃうけど、お弁当を通してだとすごくユーモアがあるし、毎日努力して作っていることに対して、有難みも返ってくるので、うまいやり方だなって思いました。真似はできないですけど(笑)。
――ブログやエッセイをご覧になった時には、どのような感想を持たれましたか?
篠原: 一言で言って、「全然違うな」という印象でした。「女の子を育てているとこういう感覚になるのか」とか「喋っちゃえばいいのに」って思っちゃったりしたんですけど、その人その人の家庭でやり方ってありますから。私はその場で白黒はっきりつけたいタイプなので、「忍耐強いお母様だな」と思って、読んでいました。
多忙な母と息子をつなぐ「手紙」のコミュニケーション
――本作ではお弁当が母と娘のコミュニケーションツールになっていますが、篠原さんご自身がご家族とのコミュニケーションで、心がけていることなどはありますか?
篠原: 基本的に会った時には会話をするようにしているのですが、そういうことがままならない時は、息子宛てにお手紙を書いたりします。あまり深くというよりは、その時に思った気持ちをサッと。書いた手紙を息子が全部とっておいてくれていたので、すごく嬉しいのかなって思って。
――息子さんからお返事はあるんですか?
篠原: それに関して文通的なことはないですけど、時々、彼も彼で(手紙を書いて)カバンに忍ばせたりしていますね。「頑張って」とか。男の子なのであまり長文ではないですけど、手紙が入っていたりすると、嬉しいなと思います。
篠原涼子が語る反抗期への向き合い方
――篠原さんご自身は、お子さんが反抗期を迎えた時、どのように接すると思いますか?
篠原: 今まさしく反抗期に突入し始めていて、すでに始まっているんですよ。でも反抗期とか思春期って絶対に大切なもので、ある方が健康体だと思っています。うちの場合は、自分のことが言えないとストレス溜まっちゃう子なので、なるべく吐き出してもらうようにしていますね。わざとムカつくようなことをやるんです。そうすると暴言を吐いてくるんですけど、すごいすっきりするみたいで、その後仲良くなれるんですよ。
あと、最終的には泣かす。今はどっちかと言うと小さいので、まだ泣かすことができるんですよ。思い切り泣くとデトックスみたいになって、終わった後にはケロッとしています。あとは無視ですね。相手をすると「僕がこういう風にするとかまってくれるんだ。じゃあこれからもこの手を使おう」ってなっちゃうので。家出するって言っても、どうせすぐそこまでなので、黙っています。玄関のドアをドンッて閉めてアピールするんですけど、何も言わないで「帰ってきたことも知らないよ」ってすると、あまり家出の手は使わなくなりますね。
「ある意味、嫌がらせ弁当(笑)」ふたを開けてびっくり、衝撃の中身とは
――息子さんたちにはどのようなお弁当を作ることが多いですか?
篠原: 定番はだし巻き卵。入れると色がきれいで、「お弁当作ったよ」って感じになるので。あとはウインナーとか炒め物とか、スタミナつけてほしいからお肉を入れるとか。お野菜で豚肉を巻いたり、鶏肉は照り焼きとか唐揚げにしたり、ひじきを入れたり。本当にごくごく普通の当たり前な感じ。残して帰ってくるとショックなので、彼が本当に好きなものしか入れないですね。
――ご自身が子供の頃に作ってもらって、印象的だったお弁当はありますか?
篠原: うちの姉が部活をやっていたので、お弁当を作る時に、私のお弁当も作ってくれることがあって、その時の玉子焼きは嬉しかったですね。私の中のイメージでは、お弁当に玉子焼きが入っているとテンション上がるんですよ。人に見せて、隠さずに食べることができるというか。
何でそういう風に思うかというと、小学校3年生ぐらいで好きな男の子もいた頃に、おばあちゃんが作ってくれたお弁当のふたを開けて、思わずすぐに閉じちゃった事件があって。何が入っていたかというと、全面納豆だったんですよ(笑)。さすがにこれはないだろうと思って。においも怪しげだったので(笑)。でもおばあちゃんに悪気はなくて、本当に愛情で。「涼子は納豆が好きだから入れておいたんだよ」って感覚だったと思うんですけど、私にとってはある意味、嫌がらせ弁当でした(笑)。
自然、人、食事、ジャージー牛…滞在して感じた八丈島の魅力
――八丈島での撮影で、思い出に残っていることはありますか?
篠原: 明日葉とか島寿司とか、食べ物が本当にびっくりするぐらい美味しかったです。あとはある朝、ホテルの部屋の窓をガラッと開けた瞬間、目の先にジャージー牛がいたんですよ!270番っていう名札を付けた女の子がかわいくて、目をつけていたらこっちに来て。「かわいいなぁ」って写真を撮っていたら、目の前でおしっこされて、それも愛嬌があるなと思って(笑)。それ以来、毎朝ジャージー牛見てたんですよ。だんだん自分のペットみたいになっちゃって(笑)。
初めはホテルの窓がなかなか開かなくて戸惑ったり、静かで寂しくなったりしたこともあったんですけど、最後には帰りたくなくなっていました。自然、人、食事、ジャージー牛、ホテルも「すごくいいな」って。また1年ぶりぐらいに八丈島行った時には、同じホテルの部屋を予約して、窓を開けたらやっぱりジャージー牛がいて、「あぁいいな」って思いましたね。
――これから映画をご覧になる方に向けて、メッセージをお願いします。
篠原: 色々な方に観ていただきたいです。面白いキャラクターもいっぱい出てきますし、お子さんにも観ていただきたいですね。お弁当を作る上でも参考になると思うので、男女問わず、色々な方にリラックスして楽しんでいただけたらと思います。
取材・テキスト:水野梨香
撮影:mayuko yamaguchi