堤真一主演の映画『泣くな赤鬼』(配給:KADOKAWA)が6月14日より公開。本作は『ビタミンF』『とんび』『その日のまえに』『流星ワゴン』など多数の著書が映像化される、ベストセラー作家・重松清が書いた、短編集『せんせい。』所収「泣くな赤鬼」が原作だ。監督を務めたのは、長きにわたり是枝監督をはじめとする有名監督の助監督として活躍してきた兼重淳だ。今回は、兼重淳監督の過去の作品を紹介する。

■『ちーちゃんは悠久の向こう』(2007)
<あらすじ>
主人公・僕(モンちゃん)は、オカルト好きな幼馴染・ちーちゃんに振り回れてつつも穏やかな日々を送っていた。高校入学を機に弓道部へ入り、ちーちゃんはオカルト研究会へ。学校には定番の「七不思議」があることを知ったちーちゃんは、僕を探検へと誘う。しかし僕は両親の離婚の危機や、部活の先輩から想いを寄せられていたことなどに戸惑ってとてもそんな気分ではなかった。しかしそこで、僕が遥か昔に忘れていた、ちーちゃんに関するある事件を知らされることとなる。
<見所ポイント…青春×オカルトを美しく演出>
兼重監督の得意とする学園青春ドラマに、オカルト要素を加えた本作は同世代の若者の心に響く。お互いの気持ちを上手く伝えられないことで少しずつすれ違っていく中で、どうしたら良いのだろう、と思い悩む心の揺れの表現は、兼重節が効いている。ラストシーンの衝撃は、賛否両論を呼び話題になったという。キャストとして若かりし頃の林遣都や、仲里依紗が登場しているところも注目ポイントだ。
■『キセキ -あの日のソビト-』(2017)
<あらすじ>
メタルバンド「ハイスピード」のボーカル・ジンと、医大を目指す受験生・ヒデは兄弟。厳格な父・誠一と明るく優しい母・珠美の下で育てられてきた。父の想いに反し音楽にのめり込んでいくジン、それとバランスを取るように勉強に勤しむヒデ。浪人しながらも、翌年に歯科大に合格したヒデは、学内で出会った仲間とバンドを結成。その頃音楽に苦しんでいたジンがヒデのデモテープを聴き胸打たれ、兄弟で音楽を始めることとなるが…。
<見所ポイント…夢を追いかける人たちの背中を押してくれる>
GReeeeNの超ヒット曲「キセキ」を題材にした本作は、”歯医者で歌手”という異色の夢を追いかける兄弟と、その家族の物語。大人になるにつれ、「なりたいもの」から「なれるもの」に切り替わってしまうことが多い中で、兼重監督は「なりたいものを諦めない、立ち上がる。そして突き進む。こういう想いをカタチにしたかった」と話している。
■『泣くな赤鬼』(現在公開中)
<あらすじ>
その高校教師は、陽に焼けた赤い顔と、鬼の熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた。甲子園出場を目指し、強豪チームを率いた黄金の時代から10年の月日が流れ、野球への情熱が衰えかけていたある日、かつての教え子・斎藤(愛称:ゴルゴ)と思いがけない再会を果たす。野球の素質を持ちながらも、挫折して高校を中退した生徒だった。しかし、立派な大人に成長したゴルゴは、病に侵され、命の期限が迫っていた。厳しさでしか教え子に向き合えなかったあの頃の後悔。赤鬼先生は、ゴルゴのために最後に何ができるのか―。
<見どころポイント>
揺れ動く心を上手く切り取った描写 兼重監督の得意分野である学園青春ドラマ、そして繊細な心理描写は、まさに原作者重松清の作風にぴったり。不器用ながらも、自分の気持ちを伝えようと頑張る姿や、どんなに苦しくても大切な何かのために気丈に振る舞う人の切ない姿を美しく描いている。役者が演じる姿を見ていて思いつくポイントもどんどん出てきたという。
細部にまでこだわった地元・群馬での撮影 監督が特にこだわったのは野球のシーン。「試合の撮影では、元高校球児や、現役に強豪校で活躍していた俳優などを集めました」と兼重監督。カメラマンも元高校球児だったため、全て撮り方を任せての撮影を行ったという。監督のオファーを受けてから高校野球の関東地区予選を全てチェックし、インタビューなどの映像を研究し、ドキュメンタリーのようにいきなりカメラを回すことで臨場感を演出した。また、本作は全編、兼重監督の故郷でもある群馬県で撮影されており、「北関東の広い空と鉄塔の画が欲しかった」というこだわりも。印象的なシーンには必ず空が差し込まれ、それは夕焼けや快晴の青空など、様々な顔を見せる。




(c)2019「泣くな赤鬼」製作委員会
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