現在、全国ロードショー中の映画『きみと、波にのれたら』にて、声優としてW主演を果たした片寄涼太と川栄李奈。かけがえのない恋人・港を失ったひな子を川栄が、この世を去った後もユラユラと水の中に登場し、ひな子を見守る港を片寄が、誠実に演じ切った。
ふたりの掛け合い、語りが柱となる本作では劇中、何度も「ふたりの思い出」の曲として片寄がヴォーカルを務めるGENERATIONS from EXILE TRIBEによる主題歌『Brand New Story』が流れる。特に、アフレコの際、ふたりで一緒に歌ったというシーンには絶賛の声も相次いでおり、作品の余韻を強く残す。
『マインドゲーム』、『夜は短し歩けよ乙女』などを手掛けた気鋭の湯浅政明監督のもと挑んだ『きみと、波にのれたら』。ふたりが懸けた想い、寄せる波について聞いた。
歌ともお芝居とも違う“声の演技“ 片寄「本当にいい経験になりました」
――まずは、声の演技に挑戦したことへの感想から教えていただけますか?
片寄: 声の演技、難しい部分はたくさんありました。声を録られることに関しては、普段レコーディングなどをやっているので、そんなに抵抗はないんです。でも、全然そういう(歌う)ものとは違いますし、実写のお芝居の現場とも違うので、いろはもわからない状態から始めました。湯浅監督、アフレコ演出の木村さんほか、スタッフの皆さんが温かい方たちばかりだったので、楽しい現場でした。本当にいい経験になりました。
川栄: 片寄くんがお話したように、本当に、声のお仕事はすごく難しいと思っています。本作で4回目なんですけど、やらせてもらうたびに、毎回ドキドキなんです(笑)。自分の声に関しては、自分が出ているテレビなどを観たときに「思いのほか低いな」と感じますし、普段、元気に見られることが多いので、今回も湯浅監督から「元気にお願いします!」と言われたので、そこは意識しました。
――特に苦戦したところ、緊張したところはどこでしたか?
川栄: 港と『Brand New Story』を一緒に歌うところです…!全部、声を録り終えた後に歌の収録だったんです。歌がどんどん近づくにつれ、終盤は、もう歌に気がいっちゃって(笑)。「どうしよう、どうしよう…」と思っていました。
――アフレコは先に川栄さんから録ったそうですが、完成作を観て片寄さんの声の印象はいかがでしたか?
川栄: 片寄くんや、ほかのボイスキャストの方の声を初めて聴いたのは、予告で、だったんです。片寄くんは港にぴったりで、驚きました。特に、水の中から出てくる場面なんかは、すごく難しいから大変だっただろうな…と思って観ていました。
片寄: 僕は、ほぼ川栄さんの声が入った状態でやらせてもらえたので、ひな子の声を頼りに、という感じでした。実際、試写で観たときはアフレコをさせてもらっていたときの印象と全然違いました。アフレコの段階では画もそんなにできていなかったので、画と声が合わさると、「うわ、こうなるんだ!」と感動しながら楽しませてもらいました。
川栄、巷(片寄涼太演じる)の努力家の一面に胸キュン!
――港とひな子は特に前半、ラブラブな恋人同士の描写が多いです。「ここがキュンとした」というシーンはありますか?
川栄: 港が、隠れてすごく努力家なところがいいと思います!たぶん女子は何かをアピールされるよりも、「えっ、こんな努力してたんだ!?」と思うほうがキュンとくるというか。
片寄: そこ、そうだね。僕は、予告にも使われている夕陽バックの画とか、一緒に大きなハンバーガーを食べている画とかが、アニメーションらしくキュンとするな、と思いました。あと、ひな子は本当にかわいらしいキャラだから、まさか「ずっと手をつないでいたいから」という理由で、左手でご飯を食べる練習するなんて(笑)。そこも、すごいキュンとしましたね。
――ところで、おふたりと言えば、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』でも共演されていましたよね。
片寄: はい。でも、先に『きみと、波にのれたら』を収録したんですよ。
――初対面とドラマでの印象の違いなど、ありましたか?
片寄: 初対面のときは、川栄さん、すごく忙しそうでしたね。
川栄: (笑)
片寄: 今の印象も、すごい忙しそうだなと!
川栄: いえいえ!片寄くんのほうが忙しいです!
片寄: いやいやいや、そういう印象でした。ドラマの時間のほうが同じ時間軸で動いていたので、関わりとしては濃いというか。そこで、より知れた部分はあったかもしれないです。
――どういうところを知れたんですか?
片寄: 意外と人見知りなところ。
川栄: (笑)。片寄くんは『3年A組』の撮影のときにも、物怖じしないで前室とかにいるので「すごいな」と思っていました。私は扉のすみっこに立っていたりとか、結構すぐ楽屋に帰っちゃったりしたので(笑)。
片寄:帰ってましたね!人見知りなのに、俺、たぶん厚かましかったんだろうな…とか、後から思ったりしました(笑)。
片寄「悪い波がきたら自分のせいだと思った方がラク」
――青春ラブストーリーであり、喪失と再生を描いた物語の本作において、おふたりは特にどこに魅力を感じていますか?
片寄: タイトルの通りですけど、どんな人の人生も、やっぱり波があるんだなというのを感じさせてもらえる作品だと思っています。良いときもあれば、悪いときもあって。でも、そういった、言葉にすると重くなるようなテーマを、アニメーションの世界ですごく鮮やかに、素敵に描いてあるのが素晴らしい作品だと、僕は思っています。
――片寄さん自身、メディアを見ている側からしたら、そういったことは感じないんですけど、悪い波がくるときは、どう乗りこなしていっているんですか?
片寄: そうですね…いっぱいありますよ。どんどん波は激しくなっていく一方だなと思うんですけど、波にのせていこうとしているというか。…うーん、どう乗り越えてるんですかね(苦笑)?でも…、悪いことが起きたとき、自分のせいだと思っちゃったほうが楽かな、という考えです。自分で責任を取ろうと思いながら、日々やっています。自分のことは、弱くはないと思っています。
――本作の公開があり、夏にはライブツアーが始まったり、ほかの作品の公開を控えたり、露出が目白押しです。息つけるようなお時間は持てていますか?
片寄: 最近、外の空気を吸うとかは、意識してやっていますかね。例えば、1時間、時間があったらテラスのカフェに行ってみたりすると、ちょっと気分転換になったりするんです。今は「休みがほしい」という思いはあまりなくて、どちらかと言うと、自分が動きたい時期というか、「今、休んでたらもったいない!」と思っているほうなんです。すごく、今、充実しています。
川栄が思う作品の魅力「誰しもが起こり得るかもしれないこと」
――川栄さんにも、作品の魅力、いい波、悪い波について、お伺いしたいです。
川栄: 作品の魅力からお話すると、誰しもが起こり得るかもしれないことが、アニメーションならではのファンタジー感をもって、映像ですごくキレイに描かれているところだと思っています。ひな子が恋人の港を亡くして、周りの人に助けてもらうあたりも、自分の周りの友達をもっと大切にしよう、と思えるところでした。悪い波に関しては…あるんですけど、最早「いい波」が、よくわからないです(笑)。「いい波だ、イエー!」みたいなのは、あまりないんですよね。
片寄: そんな「イエー!」じゃなくてもいいんじゃない(笑)?「うれしいな」とかさ。
川栄: でも、うれしいことがあると、大体、次はどん底に落ちたりするじゃないですか。現実をすごい見ちゃうタイプなので、あまり喜びすぎずないようにというか、ほどよく盛り上がって、フラットに生きています(笑)。
片寄: 波をできるだけ立てない方法なんですね(笑)。
主題歌『Brand New Story』は映画の世界観とリンク
――劇場公開日に『Brand New Story』のMVも解禁になりました。
川栄: 朝、情報番組で観ました!
片寄: ありがとうございます!
川栄: 「アニメになっている…!」と思って。
片寄:そうです。ひな子も出ているの。
川栄:すごいですよね。
片寄:GENERATIONSとしても、初めてアニメーションのミュージックビデオなんです。今回、サイエンスSARUさんに制作していただけるお話をいただいたので、「ぜひ!」ということになりました。
――世界観などは、やはり本作とリンクしているんですか?
片寄: はい、作品とすごくリンクするMVに仕上がっていて、GENERATIONSが、『きみと、波にのれたら』の世界にいる感じなんです。
川栄: すごい!
片寄: 感動しましたね。映画本編のその後の世界の設定なので、ある意味、アフターストーリーの雰囲気と言えると思います。もちろん映画を観る前でも全然ご覧になっていただける作品です。
――片寄さんもですが、メンバーの皆さん、非常にリアルにアニメーションとして躍動していますよね。
片寄: 似ていますよね。特徴も捉えていただいていてお上手ですし、すごく面白かったです。それでも、着ている洋服とかは、すごくアニメーション的なので新鮮でした。たぶん、みんなも喜んでいたと思います。
――プロジェクトで言えば、映画『ウタモノガタリ-CINEMA FIGHTERS project-』(『アエイオウ』)で楽曲が使われることはあったかと思いますが、こうして劇中でニュアンスを変えて何度も何度も曲が流れることは珍しいですよね。
片寄: 本当に、そういう意味でもありがたい限りです。最後エンディングで流れたときに、この作品がすごく素晴らしかったので、「いい仕事をしたな…」みたいな気持ちになったというか。「世のためになったんじゃないか」と思うような主題歌の流れ方をしたのは、今までの作品でも初めてだったので、うれしかったです。
取材・文:赤山恭子
撮影:映美
映画『きみと、波にのれたら』
もう会えないと思っていた恋人。あの歌を口ずさめば、またきみに会える。
海辺の街を舞台に描かれる感動の青春ラブストーリー
大学入学を機に海辺の街へ越してきたひな子。サーフィンが大好きで、波の上では怖いものなしだが自分の未来については自信を持てずにいた。ある火事騒動をきっかけに、ひな子は消防士の港(みなと)と出会い、二人は恋に落ちる。お互いがなくてはならない存在となった二人だが、港は海の事故で命を落としてしまう。大好きな海が見られなくなるほど憔悴するひな子が、ある日ふと二人の思い出の歌を口ずさむと、水の中から港が現れる。「ひな子のこと、ずっと助けるって約束したろ?」再び会えたことを喜ぶひな子だが…。二人はずっと一緒にいることができるのだろうか?港が再び姿を見せた本当の目的とは?
全国ロードショー中
(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会