日ロ首脳会談を終えたプーチン大統領は「平和条約について安倍総理と話し合った。日ロ関係を質の高いものに引き上げるため今後、政府間で大変な作業が行われるがその作業の成果こそが、両国の信頼と友好関係の発展に貢献する」と述べた。対話は継続されるべきとしたプーチン大統領だが、北方領土返還については述べなかったものの、今年秋にも観光やごみ処理などで試験的な事業を始めることでも合意した。
今回の会談について、6月29日放送の『みのもんたのよるバズ!』に出演した外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は「安倍政権にとって、G20の最大の狙いはここで4島のうち少なくとも色丹、歯舞について日本に引き渡すという基本合意を取りまとめ、それを成果として衆参同日選挙に、というものだった。しかし交渉しているうちにプーチン政権が次々とハードルを上げていったので、断念をした。ロシア側とすれば、主権の問題は別として、歯舞、色丹の2つが日本の施政権下に入ったとすると、日米安全保障条約の定めに従って米軍基地を置くことができる、それはダメだという立場だ。日本としてはアメリカ軍基地は作らないという説明をしているが、ロシア側は信用できない、トランプなら作るかもしれないと。現実的には歯舞、色丹は明らかに僕らの目の前から遠ざかっている。全く進展がなく、全く取り付く島もない、というのが本当のところだ」との見方を示す。
これに対し、外務副大臣の佐藤正久氏は「軍事合理性からいうと、在日米軍は北海道にさえない」とした上で、「安倍さんとプーチン大統領の会談で、2人のいるうちに解決しようと合意したのが出発点で、非常に重い話だ。批判もあるし、住んでいる方々が日本に返してもいいと思わないといけないので、そんなに簡単ではないのは当然だ。しかし共同経済活動や墓参など、少しずつ目に見える形で積み上げているのは間違いない。旧北方4島出身の方の思いを聞くと、ズシンとくる。歯舞漁港があり、組合もある。そこで漁をやりたいという気持ちはものすごく強い。両首脳のリーダーシップで1歩でも2歩でも進んで、最終的には平和条約に持っていくための努力を初めから諦めるのではなく、絶対にやるべきだと思う」と主張。
しかし手嶋氏は「佐藤さんは副大臣だからそのように言わざるを得ないのだろうが(笑)、この問題を地を這うように取材していると、"積み上げている"というよりも、段々と"積み下がっている"と思う。トランプ大統領の安保破棄発言はこの問題にも波及している。つまり、仮に色丹と歯舞が日本の施政権下に入ったとすると、日米安全保障条約の求めによって、色丹島にロシア軍が上陸して来た場合はアメリカに防衛義務が生じるという問題も発生してきてしまう。トランプ大統領がG20に来る時に投げた"剛速球"は、こういうところにまで波紋を広げている」と指摘した。
前東京都知事の舛添要一氏は「プーチンさん自身も複雑な状況にいる。ロシア人の考え方では、領土というものは戦争で取り返したり、奪われたりするものだ。クリミアを力で取り返した一方で、日本とは話し合いで領土を戻すってなんなんだ、ということだ。ロシアの国民は嫌だと言っている。日本国政府はずっと4島一括返還と言ってきたのに、なぜそれをやめたのか、国民に説明がされていない。その状況で、俺とプーチンに任せろというのは違うと思う」と批判した。
また、お笑い芸人のパックンも「ぜひ思い出してほしいが、ロシアがクリミア半島を併合した後、全世界から経済制裁の対象になったり、ならず者扱いされたりしたことだ。G8からも追い出された。ロシアが孤立化する中、安倍総理はプーチン大統領を山口に誘って、仲良くした。助け舟を出せば見返りがあるだろうという甘い考えがあったのではないかと思う。あれから4年経っても全く進展がない。前提条件なしで仲良くするというのは安易にやっていいことではない」との考えを示した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)