7月1日から受動喫煙対策の一環として学校や病院、行政機関などの敷地内を原則禁煙(屋外喫煙所設置は可能)とする「改正健康増進法」が施行される。それに合わせて「来年4月から就業時間内禁煙」を決めたソフトバンクをはじめとする各企業の喫煙対策も進んでいる。就業時間内の喫煙は“働き方改革”を阻害すると厳しい対応をとる企業が増える中、先日には大阪府の職員が勤務中に9年間で2318回も職場を抜け出してたばこを吸っていたとして、訓戒処分を受けたことでも波紋を呼んだばかりだ。
そんな中、喫煙に関して新たな試みを導入した企業もある。ウェブ広告やアプリ開発事業を手掛けるアキナジスタ株式会社の代表取締役・小林祐介氏が導入したのが「たばこを吸わない4休暇」だ。これはたばこを吸わない申請をすれば、喫煙者よりも最長で年4日有給を多く取得できるというもので、以前から非喫煙者から多く寄せられていた「吸う人と吸わない人では休憩する時間が全然違う」という声、さらに社内の「喫煙=サボり」ではという不公平感を是正するために取り入れた制度である。
この制度に関しては「1日4回、それぞれ5分間ほど」就業時間内に喫煙するという仮定で計算した場合、年間で80時間。出勤日数では12日分ほどに相当するという考えに基づいており、非喫煙者の不平不満も減ったことで、会社全体として「効率は上がっている」と小林さんは手ごたえを感じている。一方、喫煙者についても、たばこを吸っている時間はその他の人が働いている。デスクに戻った時には、自分も集中してその時間を取り戻そうという意識が見られるようになったと、小林さんは導入前後での変化を語った。
「嗜好品として、(喫煙は)認められるべき」
そう話すのは、自ら4年前に禁煙に踏み切った実体験を持つ映画監督の井筒和幸氏。井筒氏は「嗜好品なんだから、それは認めてあげないといけない」と話したが、大の嫌煙家を自称するテレビ朝日の三谷紬アナウンサーは「喫煙所までの行き来は時間の無駄」と喫煙行為を一刀両断した。
「日本は政策を間違えた」
そう主張したのは、東京大学大学院卒で元日経新聞記者の愛煙家である鈴木涼美氏。鈴木氏はその理由について「最初に屋外を禁煙にしてしまったことで、店(屋内)の禁煙が後手になり、対応に追われている。外も中も禁煙にしたら、吸うことができるのは自宅だけになる。外国に行けば、基本的に屋外での喫煙は可能だ」と熱弁した。
これらの時代の流れを受け、国内の老舗カフェ「ルノアール」が2020年4月から紙巻きたばこの禁止を発表するなど、愛煙家に対する社会の風当たりは増す一方だ。そんな中、東京大手町に去年オープンした「スモーカーズカフェ・ブリケ(大手町プレイス店)」が、いま愛煙家の注目を集めている。
「喫煙具やライターなどが事業の柱になっている」と話すのは、同カフェのプロジェクトリーダーを務める堀江哲也氏だ。堀江氏は今回のシガーカフェ開店の経緯について「喫煙者の方には弊社を大きくしていただいた。昨今、そんな喫煙者の方々が吸う場所が無くて困っているので、何とか恩返しをしたかった」と語る。
しかし、同店はオフィスビル内に店舗を構えている。社会問題にもなっている受動喫煙対策について「給気とのバランスを排気に強く振っている。1分に1回空気が入れ替わるくらいの排気を確保している」と説明した堀江氏は「たばこを吸う人間でも煙たいところで吸うとおいしくない。空気がきれいな状態でお客さんをお出迎えしたい」など、嫌煙家はもちろん、愛煙家双方を気遣った店づくりであると胸を張った。
いずれにしても、7月1日から改正健康増進法は施行された。愛煙家と嫌煙家が共存できる社会の模索はこれからも続いていく。
(C)AbemaTV
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