”米中貿易対立” アメリカに締め出されても痛くない!? ファーウェイが描く”植民地化”計画とは
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 アメリカとその同盟国によって事実上の"締め出し"を受けている中国のファーウェイが、ヨーロッパで存在感を示しているという。

 同社は拠点を置いているイタリアに、マーケティング、部品などの調達、研究開発の分野で3300億円を投資する(今後3年間で)と発表。イタリアはこれまでも中国が提唱する巨大経済圏「一帯一路」構想にG7として初めて支持を表明するなど、結びつきを強めてきた。

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 米中が熾烈な争いを繰り広げる"5G戦争"で一歩後退してしまうかに思われたファーウェイ。しかし開発部門責任者の汪涛氏は5月、「わが社は全世界で事業を展開しているので、アメリカ一国でトラブルが起きても大きなダメージにならない」と主張。任正非CEOも「2021年までに人類の生活に必要な新たなサービスを始めることとしよう」と強気の姿勢を見せていた。

 実際、アメリカと歩調を合わせてファーウェイ製品を自粛しているのは日本やオーストラリアなどのわずかな国で、トランプ大統領は米中首脳会談で安全保障上の問題がなければアメリカ企業がファーウェイに対し、部品を売ることを認める意向を示してもいる。

 講談社特別編集委員の近藤大介氏は、中国、そしてファーウェイの狙いについて、次のように説明する。

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 「G7の一角を崩したい中国が中心となって、2015年にアジアインフラ投資銀行(AIIB)というものを作った。そして親中派であるイギリスのオズボーン財務大臣を味方につけ、ドイツ、フランス、イタリア、カナダを巻き込んで行った。まだ参加していないのは日本とアメリカだけだ。一帯一路の"一帯"は中国からヨーロッパにかけての陸路で、"一路"は海。最初はその終点をイギリスだと言っていたが、ブレグジットになってからはイタリアと言い出した。漢帝国とローマ帝国は2000年前からシルクロードでつながっていたので、フィーリングも合う。政治的には非常に揺れているが、経済的にはEUの28か国中で4位の大国で、中国との貿易額も500億ドルを突破している。ファーウェイはヨーロッパに進出した際にイギリスのブリティッシュ・テレコムと契約を結び、ドイツ、フランス、イタリアと、どんどん契約を結んでいった経緯がある。今回もイタリアと大型契約を結ぶことによって、EU28か国と次々に結んでいきたいという思惑があると思う。世界の3大市場はアメリカ、中国、EU。中国は本拠地で、アメリカでは排除だとすると、EUが1番大きな市場ということになる。EUでは今年秋に多くの幹部が交代するので、このタイミングで一気に取りに行きたい。すでに3G、4Gではファーウェイが取っているので、さらに5Gでも、ということだ。ただ、中国政府とファーウェイが密接になってきたのは、アメリカが中国を叩き始めてから。習主席はこれまで深センを二回視察しているが、ファーウェイには来ていない。本当に関係が近ければ、これだけの会社なので必ず行くはずだ」。

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 そんなファーウェイの5Gの基地のコンセプトは極短、超シンプル。基地局の設備は約20kgと軽量で、設置は1人でも可能なレベルなため、ヨーロッパの狭い道に適応しているだけでなく、4Gの基地局にそのまま設置することも可能。ここが他社の追随を許さない理由なのだという。

 「5Gは4Gに比べて狭い範囲しか繋がらないため、多くの基地局を作らないといけない。これまではトラック1台分ないとファーウェイの基地は作れないと言われていたところ、20kgにしてしまった。"帽子方式"といって、4Gのシステムに帽子を被せるようにくっつけるだけでいいように工夫した。これがファーウェイマジックと言われている」。

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 また、ファーウェイはある地域の物価や交通状況、天候などの情報を一瞬にして分かるようにするスマートシティ構想も掲げており、戸籍、納税、各種届などの行政の業務も統合することで、スマート教育、スマート医療、スマート航空、スマート油田といった展開も目指しているようだ。

 「IoT、5Gが進んでいくと、プライバシーがなくなる。そのことを私が指摘すると、向こうの人は"そうかもしれないが、中国だけがそうではない。10年もすれば、日本もアメリカも、世界中がそうなる。世界からプライバシーという言葉は死語になるのではないか"と言っていた。中国人にプライバシーの話をすると、"そもそも中国人はプライバシーというものを持ったことがない。自分は法律に違反したことがない。悪いことをしていないので、いくらプライバシーが出ても全くやましいことはない"と。ここがちょっと日本人とは違う感覚だ」。

 さらにファーウェイ本社を取材した経験も持つ近藤氏は「ファーウェイがなぜ上場しないのか聞いてみると、政府や株主からの規制を受けないためだということだった。創業者の任正非CEOは考え方が鄧小平にそっくりだ。軍人気質というところに始まり、効率重視で、長期的に考えていて視野が広い。哲学者的なところもある。中国はなぜ今までダメだったのか、それは安かろう悪かろうを作って、短期的なことばかり考えるからではないかと。だから研究開発費にお金をつぎ込む。"ファーウェイ基本法"では、売上の10%を必ずつぎ込むことを謳っていて、今は15%近くまで来ている。そして、不動産業と金融業には絶対に手を出さないことにしている。そして、ファーウェイは技術やデータを提供するだけだというスタンスだ。自動運転に関しても、ファーウェイは絶対に車を作らず、システムだけを提供して、あとは車を作る会社がお使いください、ということだ」と説明。

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 「なぜシリコンバレーが発達したかというと、ワシントンから遠いからだという説がある。本社を深センに置いているが、北京からは2200kmも離れていて、すぐ隣の香港の気質に近い。 創業者である任正非さんの理想郷ではないかと思った。12のヨーロッパの都市を模して作った、東京ドームの30倍の敷地に、研究開発をするのに最もすばらしい環境を作ることを目指している。ランチは30か所のレストランで5万人が食べられるようになっていて、お昼寝タイムもある。"予期せぬリスク"を心しておけ、という任CEOの教えを象徴するブラックスワンが全ての池や湖で飼われていて、トランプがブラックスワンではないかと言っている人もいた。アメリカ留学組、清華大学、北京大学など一流の理科系の大学院を出た、本当のエリートの若者たちが集まっていたし、アメリカに叩かれたことによって内部の結束も強くなっていた。19万4000人もの社員がいるので、任CEOが歩いていても分からないくらいだが、そういう中で、完全な縦割り社会を打破し、"改善のために、誰でも物を言おうよ”という雰囲気にもなっていた」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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