臨時国会の開会を前に、れいわ新選組の船後靖彦議員と木村英子議員を迎えるためのバリアフリー工事や電源設置の準備が行われた参議院の本会議場。1日、舩後議員と木村議員は介助者に付き添われて国会入りした。
しかし、この前日までに議論を呼んだのが、議員活動中の介護サポートの問題だ。
2人は国と自治体が費用の大部分を負担する「重度訪問介護」のサービスを受けてきたが、現行制度では自宅での生活以外、すなわち通勤や仕事の間はサービスを受けることができない。木村議員は「(仮に自己負担になると)月130万円くらいかなと。これがないと何もできない。国会議員になったものの、重度訪問介護制度が使えなくなるので、初登院にも参加できない状況」と語っており、れいわ新選組の山本太郎代表はTwitterで「厚生労働省が運用を変えればいい。それが合理的配慮。一億総活躍に反するでしょ、参議院に尻を拭かせるのは」と主張していた。
そこで参議院の議院運営委員会は7月30日、当面の間の議員活動中の費用を参議院で負担することを決定。議院運営委員会理事の大家敏志議員は(自民党)「これまでに整備をしてこなかったという反省もあるが、なかなか答えのない問題で、新たなテーマでもあったが、決着が見られたことは良かったと思うし、今できることはやって8月1日を迎えられるのではないか」とコメントした。
この決定に、与野党からは様々な反応があった。与党・公明党の山口那津男代表は「しかるべき得票を得て当選したわけだから、そうした議員が意見を述べられるような、意思を表明できるような、あらゆる努力をするのが基本的な参議院の姿勢だと思う」とコメント。立憲民主党の枝野幸男代表は「当面の策としてはやむを得ない策だと思っているが、そもそも重度障害者のサポートについて、通勤であるとか、勤務時間中については対象になっていないというその制度そのものについて、しっかりと見直す必要があるのではないか」と指摘した。
■東徹議員「制度改正を国会で議論することが大事」
他方、決定に反対の立場を取ったのが日本維新の会だ。松井一郎代表は「雇用者が責任をもってやる話。参議院議員の皆さんは個人事業主。参議院議員のポケットマネー?税金なんじゃないの?その人たちだけが特別扱い?」と話し、議院運営委員会に出席していた東徹参議院議員もTwitterで「れいわ新選組の要望は、『重度訪問介護サービス』では、通勤や経済活動については大臣告示で除外されており、制度の改善を求めている。参議院が負担するのは論点が違う」「制度上の問題を改善するのが立法機関である国会議員の職責であり、まさしく国会に来て議論するのが我々の役割です。税金で賄われている参議院の経費を使えばいいという問題ではないし、同じ境遇の障がい者の方をどうするかを議論すべきで国会議員のことよりも先に制度見直しを議論すべきです」との考えを示していた。
31日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した東氏は、「山本太郎代表のコメントは、やはり議論がずれていると思う。れいわ新選組としては重度訪問介護サービスの制度見直しを求めているわけだから、まずはそれを国会で議論することが大事であって、参議院が費用を出すのは違うんじゃないかということだ。自分のことよりもまずは、同じような境遇の人をどう救うか考えるのが、国会議員としての役割だと思う。登院できないということはないはずだし、8月で言えば本会議は1日と5日しか開かれない。その次は10月だ。それまでの間に議論をし、結論を出していく。それが本来の役割だと思う」と説明。
また、自身も参加した議院運営委員会の議事について「いけないのは、当事者に直接話を聞かないまま、山本太郎代表が持ってきた紙に基づいて、慌てて答えを出してしまったこと。円滑な登院をしてもらうためにという発想から、やれることは全てやりましょう、ということで、参議院がお金を出すことに決めたが、本当に木村議員と舩後議員がそれを望んでいたのか」とし、プロセスに問題があったとの認識を示した。
ここでジャーナリストの堀潤氏が、「もし自身が障害を持つ立場になったとしても、議員活動にかかる費用は自費負担にすべきだと思うか」と尋ねると、東議員は「自助があって共助があって公助がある」という考え方から、「自分が同じ立場だったらというのはすごく難しいことだが、まず自分だけでもできることを考えた上で、できないところについて"なんとかできないか"と言っていくんだと思う国会議員には報酬があり、何に使ってもいい、領収書も明細もいらない文書通信交通滞在費も月に100万円支給される。その中から出しても議員活動のパフォーマンスに影響は無いと思うし、れいわ新選組に対してはおそらく年間5000~6000万円くらいの政党助成金に加え、1人あたり65万円の立法事務費も出る。そういったことも含めて考えるべきだと思う。ただ、企業の負担のことも含め、今回のことをきっかけに本格的に議論が進むと僕は期待しているし、本当に良いことだ」との考えを示した。
■八代英太氏「れいわ新選組もしっかりサポートを」
舩後議員と同じALSの患者である酒井ひとみさんは、「介助費用は本人が負担すべき。特例を作ってしまうと、もしこの先制度ができることになった際に支障が出るかもしれないのが怖い」との考えを示している。
"車いすの国会議員"第1号として知られ、障害者に関する政策に取り組んできた元郵政大臣の八代英太氏は「例えば官房長官会見で側に立って手話をしている方がいるが、あれは国費でやっている。そうすると、両議員の国会活動においても、やはり参議院として配慮はしないといけないし、負担するというのは分からないでもない。ただ、どういうところでどんなふうに負担してもらいたいのか、議会活動の中の何時間なのか、あるいは委員会だけなのか、本会議だけなのか、といったことは詰めないといけないと思う。有権者が待っているんだから、負担がないから登院できないなんていうのはやはりダメだ。せっかく議場もバリアフリー化されて、エレベーターもあるのだから、それらが適切かどうかチェックする意味でも、堂々と、爽やかに、笑顔でしっかりと登院してもらいたい。れいわ新選組も、チームプレーでやるんだという思いを持ってもらわないといけない。両議員の活動をしっかりサポートする体制を、自分たちでもしっかり作らないとダメだ」と話す。
「親族もいない重度の身体障害の方々にとっては、移動や自宅での生活も大変厳しい。そこで高齢者についての介護保険制度があるように、重度障害者に対する重度訪問介護サービスが出てくる。これは生活保護世帯と非課税世帯は満額、所得があっても3万7000円以上の負担はない。さらに働きたい場合は雇用した会社側が負担することになるが、雇用促進法による助成金制度が設けられていて、重度障害者を雇った企業には6~7割の補助金が出る。そのようにして、収入よりも負担が大きいということにはならないよう、仕組みを作っている。私としては障害者もタックスペイヤーになるという気持ちにならないとダメだという思いを持っていたので、様々な提言もしてきた。まだまだ生活保護の方が額は上かもしれないが、重度障害者の在宅介護サービスについてはかなり充実していると思う。しかし障害者手帳を持つ780万人のうち、80万人くらいしか雇用されていない。議員の活動に関しても、かなりの制度は整ってはいるが、まだ穴は開いている。僕も28年間、それを塞ごうとしてきたが、十分ではなかったし、抵抗も多かった。これから両議員がその"総仕上げ"的に、なかなか障害者が雇用されない現実も含め、議論をしてもらいたいと思う。その意味で両議員の当選は、新しい時代の万人の社会、インクルーシブ社会の始まりだというような気がする」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)