「毎日いつ辞めようかと考えている」「毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った」「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」「入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」。
職員やOBから寄せられたそんな声を集め、圧倒的な人員不足にもかかわらず増え続ける業務、そして前時代的で非効率な労働環境など、省内の"ここが変"というポイントを列挙。それらを改善することでミスや不祥事を減らし、国民の期待に応えることができる「緊急提言」として根本大臣に手渡した厚生労働省若手改革チーム。
会見でメンバーの久米隼人課長補佐は「圧倒的な人員不足という状況となっており、これによってミスや不祥事が起こる。それにより、またさらに業務量が上乗せされる」と指摘。「厚生労働省は働き方改革を進めていかなければならないという一番手の役所であるべきだ。働き方改革の旗振り役として、しっかり働き方改革をしていく」と訴えた。
年金、医療、介護、子育て、労働、さらには食品までを所管する厚生労働省の業務量は中央省庁の中でも圧倒的。また、昨年の国会答弁回数でも8327回と、2位の文部科学省の3839回を大きく引き離し1位となっており、審議会などの開催数でも2位の総務省の708回を上回る厚生労働省は1569回となっている。さらに、抱える訴訟の数も2位の財務省(259件)を圧倒する4437件に上っている。その一方、定員数では3万1820人と4番手で、最多の財務省の7万2157の半分以下だ。
2007~2009年の約2年間、厚生労働大臣を努めた舛添要一氏は「労働環境が"暑い、狭い、汚い"ということだが、"省エネをやりましょう。率先して電気を消しましょう。暑くても室温は28度にしましょう。冬はカーディガンセーターを着てやりましょう”というのは、私に言わせれば軍国主義時代の日本のようだ。そうではなくて最も快適な環境で仕事ができるようにすべきだ」と指摘。
その上で、慢性的な人手不足の状態になっているとの主張に対しては、「私に言わせれば皆が忙しいわけではなく、ちゃんと仕事をしていなくても済んでいる人もいるし、必要のない職場もある。やはり役人の全体数は減らしていかなければいけないので、無駄な仕事をしている役人を他の省庁含め持ってこいということで、政治家がスクラップ&ビルドさせなければいけない」と話す。
実は今回の若手チームの改革案についても、政治家の発言を受けてチームが作られたという流れがあるという。官僚という立場上、やはり自分たちで中から組織を変えるのは難しいのだろうか。
舛添氏は「どこでもそうだが、外からの大きな衝撃がないと変わらない。だから結局は政治主導でやらなければいけないと思う。ただ、今は官邸に比べて自民党の力が弱いので駄目だとも感じる」との考えを示した一方、「私が大臣の時には年金問題でめちゃくちゃだった社会保険庁から日本年金機構という組織を作った。もともと厚生労働省は20年前近くに省庁再編で厚生省と労働省が一つになってできた省だが、統一したことの利点は全体の2割くらいしかないと思う。例えば緊急医療の現場で働くお医者さんが死にそうなくらい働いていたとしても、労働省の立場は"過労死するぞ"でも、厚生省の立場では"医療は大事なので目をつぶる…"、といったことも起こってしまう。再編案には大臣を2人にする案もあるが、トップは1人でなければ動かないので、全く意味がない。私は新たに"年金省"を設立した方がいいと思う。他の国でも年金分野は独立している。また、"働き方担当大臣"や"少子化担当大臣"などの業務も、私の経験からすれば結局は厚生労働省に仕事を頼むことになるので結局は意味がない。いずれにせよ、やはり巨大な権限を持っておきたい財務省が反対するので、やはり総理大臣が決断するしかない」と主張した。
また、厚労省改革だけではなく、国会改革も必要だとし、「国会答弁の回数が多いのは、厚生労働省には保育園の問題や医療・介護など身近な問題が多く、それらを取り上げれば野党としては人気が取れるから。その答弁の原稿を書かなければいけないので、こういうことになる。ただ、その作業を徹夜でやらせるひどい。質問は2日前に出さなければいけないが、朝のワイドショーで話題になったことをやると注目されるということで、13時からの会議なのに12時に質問を持ってきたりする。だからまともに昼飯も食べられない。それが一番ひどかったのが年金問題をやっていた頃の長妻昭議員で、1日に160問持ってきて、最高記録を作った。中身も"こういう案件が何件ありますか"というような、役人が答えるか、データで出させれいい質問を、"絶対に大臣が答えろ"ということだった。私はその経験があるから、質問は必ず2日前に出すようにしていた。だから役人に"今日はこれで帰れます"と非常に喜ばれていた。やはり国会も抜本的に変えて、国会議員がまともに自分で勉強して、役人に答弁を書かせないで済むような本質的な議論しないと、他の省庁でも変わらない」と警鐘を鳴らした。
働き方評論家の常見陽平氏は「厚生労働省が担当する分野は突発的な問題が起こるので、そもそも案件が多い。関係者によると、厚生労働省は今、"強制労働省"と呼ばれているようだ。働き方改革のまさに"旗振り役"がそこから脱することができないということ自体、日本人の働き方の問題だと思う。これだけは声を大にして言いたいのは、"人が死なないと変わらない"というのは絶対に良くない、誰かが死ぬ前にやらないといけない」と問題提起。仕事帰り、深夜にタクシーで霞が関周辺を通ることがあるというカンニング竹山は「けっこう電気が点いているので、"働いてんだな"って思う。官僚って良くないイメージや敵だというイメージを持っている人もいるかもしれないけれど、この人たちが働かないと、世の中は回らない。本当に大変だなって思う」と話す。
他方、慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は、「厚生労働省には年金や労働の他に、医療の分野もやっているが、その予算規模は税収の半分以上の40兆円にも上っていて、さらにその半分以上は高齢者に消えている。皆さん薄々気づいていると思うが、病院では待たされるかもしれないが、薬の値段は我々が3割負担、高齢者なら1割負担で買えてしまうまた、この国は薬局の数がコンビニよりも多い。そういうところはすべて医師会や薬剤師会、そして獣医師会といった既得権益の塊、いわば"ダークサイド"に落ちた人たちが握っていて、自民党の厚労族の票を支えている。これから医療分野の支出はどんどん増えていくが、中の人では現実を変えられないと思う」と持論を展開。
さらに「人生の墓場だと思うのなら、転職すればいい。優秀なんだから死ぬことはない。そもそも先進国で官僚が終身雇用という国はほとんどない。だから日本も専門職を除いて国家公務員は10年までしか勤められないようにし、そこにベンチャー企業で成功したようなやつが入ってくるようにすればいい。転職のために10年で実績を残さなければいけないとなれば、みんな国民のために燃えて頑張ると思う」と提案した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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