日韓関係の悪化に伴い、韓国の世論調査(韓国ギャラップ社調べ)では「日本」に対する好感度は「高い」が12%、「低い」が77%、さらに「日本人」に対する好感度は「高い」が41%、「低い」が43%となってしまっている。その一方、「日本人」に対する好感度を世代別に見たてみると、20代は「高い」が51%、「低い」が29%と、他の世代とは傾向が異なっていることがわかる。
この結果について、28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した同志社大学の浅羽祐樹教授は「これは非常に面白い。7月第2週の調査だが、日本に対する高感度が高いと答えた人が12%というのは史上最低だ。ところが、日本人は、と聞くと半々になる。これは国としての日本と、人々という意味での日本人を異なった基準で判断しているということだ。また、世論調査では平均値しか出ないので全員が同じように考えていると思いがちだが、年齢によって同じ問題でもどう見るかは全く違う。とりわけ突出しているのは、20代の日本に対する好感だ。これがどういう理由によるものなのかはこれから見ていかないといけないが、"ここの層は違うんだ"、ということは記憶しておくべきだろう」と指摘する。
浅羽氏が最近執筆した論文内(小林哲郎氏・香港城市大学准教授や多湖淳氏・早稲田大学教授らとの共著)では、日韓1人当たりのGDPの今後のシミュレーションが示されたグラフについて、「日本は下がり、韓国に抜かれる」「日本だけが下がる」「韓国だけが上がる」の3種類に分け、それぞれ反応の違いを調べたデータが用いられているという。「日本が下がって韓国が上がる、という将来展望を見せられたグループは、竹島領有権問題とか慰安婦問題に対して強硬な姿勢を示すという研究結果が出ている。個人レベルでも、自分が伸びてきたなとか、あいつ迫ってきたな、抜かれたなという時、やっぱりその人との関係や抱えている問題に対して強気に出ないとなめられてしまう、と思ってしまうところがある。同じようなことが他の国に対しても言えるかはまだ分からないが、少なくとも日本人が韓国に対して"抜かれる"と見た時、様々な問題に対して強硬な姿勢を示すということだ。GDPについては過去20年、あるいは今後10年くらいの間に起こりそうな構造的な変化なので、GSOMIA破棄や日韓慰安婦合意の反故、徴用工問題に関して異なる見解が出ているといった、短期的なイベントとは異なる。しかし日本の韓国に対する認識、あるいは韓国の日本に対する認識がマクロな変化、トレンドによって大きく規定されているという部分は知っておかなければいけないと思う」。
一方、「日本では最近、"K文学"の『82年生まれ、キム・ジヨン』などが読まれているが、会社や学校で直面する様々な悩みに対して考えようという時に、韓国人が書いた、韓国人の生き様が描かれた小説からヒントを得ようとするのは、歴史上おそらく初めてのことだろう。これまで韓国の小説が読まれるのは、済州島での四・三事件が描かれた『火山島』など、歴史的な出来事について知りたいということで、自分の生きる上での問題に取り組む上で韓国の小説を読むことはまずなかったと思う」とも話す「つい先日までソウルに行っていたが、一番大きい書店である教保文庫(キョボムンゴ)ではベストセラー第2位に日本の『おしりたんてい』が並んでいた。これだけ不買運動だなんだとやっていても、そういう日本のものは依然として読まれている。あるいは韓国の延世大学や高麗大学といったトップ校に留学しているゼミの学生が夏休みで帰ってきているので話を聞くと、"韓国人はとにかくすごい、むちゃくちゃ勉強してるし、むちゃくちゃインターンとか行ってるし、サークルで何かやるにも選考があって、プレゼンテーションもむちゃくちゃうまい"と言う。女子の場合、"コスメは韓国の方が日本より10年進んでいて、しかも安い"と。そういう感覚だ。若い世代は70年前の歴史のことは知らないかもしれないが、今を生きる韓国人とは共通の課題、共通の悩みを持っているとしてフェアに見ている。これは新しい現実だし、日本の世論調査を見ても、20代は依然として韓国に親しみを感じている。しかし日韓関係は今、本当に底が抜けているような状況なので、政治や外交の課題を絶対に解決しないと、下支えができなくなってしまう」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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