世間をざわつかせた"闇営業問題"の渦中にいたお笑い芸人たちが、続々とボランティア活動を始めている。しかし、そうした動きに対し「反省=ボランティアは違くない?」「ボランティアは罰ゲームじゃないから」「禊だから、自分がやりたいからやっているわけじゃなく、助けてあげようと思ってやっているわけじゃないと思うんで。やらされてる感」という疑問の声も少なくない。
そもそも欧米各国ではボランティア活動が日常の中に浸透しているが、日本は遅れ気味。それどころか慈善活動や、社会貢献に対する"うがった見方"も後を絶たず、有名人がSNSなどに活動報告を投稿するだけで「偽善」や「売名行為」などと言われてしまうことも。実際、街で聞いてみると「過度にアピールするのはちょっと偽善なのかなって。やたらとボランティアしたことが良いことかのようにアピールする投稿は違うのかなって」「人のためにやるんだったら、自分のメリットは考えなくていいんじゃないかなと思う」「ボランティアをしている自分がかっこいいとか、自己実現的なことを思ってやっている人は多そう」と言った声が聞かれた。
東日本大震災以降、福島県のあちこちを訪ねては土地の魅力を発信してきたカンニング竹山は「遊びに行ってるだけだし、楽しいよって言ってるだけなんだけど、確かに過去には何度も偽善だと言われたことがあった。でも、偽善で結構。俺がやりたいからやってんだ馬鹿野郎って(笑)。後輩も連れてって、何十万円も使ってるのも、俺がやりたいやってるだけ。偽善でもなんでもないと思う。だからボランティアにしても、本人がやりたいかどうかが一番大事だと思う。また、ボランティアしますって言った時に、すぐ老人介護施設などに行くが、専門の職業として働いているのに、そこでボランティアってどうなの?とも思う。人のために、ということなら、その辺の道路を清掃したり、窓を拭いたりするのでもいいんじゃない?って」と指摘。
タレントの池澤あやかは「事務所からこのイベントに参加してくださいというメッセージが来たとして、仕事ではないが断りづらいと感じる部分があると思う。また、チャリティーオークションで有名人のサインなどが出品されることがあるが、落札している人の動機はチャリティというよりも、単にサインがほしいだけだと思う。そういうところに疑問を感じてしまうこともある」と話す。
■専門家「利他的なものでなければ思っているのではないか」
大阪ボランティア協会理事長の早瀬昇氏は「"禊"と言われると、罪を償うために、というイメージがあるが、ボランティアは償いのためにするものでは本来ない。ただ、問題を起こして社会に迷惑をかけたことに対し、自分にできる形で社会のためになることをしようというのはあっていいと思う。また、ボランティアはそれぞれが自分の得意なこと、あるいはその世界に近づいてみたいなというところで楽しみ、自分自身も元気になる活動でもある。例えば一生懸命ウィキペディアを更新することもボランティアだ。いわば最も多くの人々に貢献しているのはボランティア活動がウィキペディアだと言えるかもしれない。そうやってイメージが広がったら面白い」と話す。
ボランティアへの関心を海外と比較すると、日本の数字は低い。関心ある人の割合は、アメリカ65.4%、イギリス52.7%、韓国52.6%、フランス51.7%、ドイツ49.6%、日本33.3%となっている。早瀬氏は「ここのところ内閣府は"経験"については統計を取っているが、あまり"関心"については取っていないが、以前は6割くらいの関心度だった。宗教心と社会参画活動の相関関係はないというデータが出ているが、やはりアメリカはボランティアで作った国だというところもあって、日本に比べてボランティア活動が活発だ。日本も、例えば大阪のように幕府にほったらかしにされた地域では自分達で橋を架けたり、堀を作ったりしていた。やはり社会を自分たちで作っているという思いがあるかどうかだ」と指摘。
また、毎年8月末に放送されるチャリティ番組『24時間テレビ』に対し「企業の利益とイメージアップ目的だろ」「感動を押し売りする偽善番組」「その募金が全部寄付されているのか疑問」といった批判が繰り返されることについても、「放送局としての力を活かした社会貢献活動としては面白いと思う。株主の資金を託されている営利企業である以上、一定の効果が返ってこないとすれば、それは背任になってしまう。ブランド価値向上すら期待してはいけないと言われたら、企業は社会貢献活動ができなくなってしまう」と述べた。
その上で、批判をする人たちについては「やはり、自分のことは全て抑えた、完全に利他的なものでなければならないと思っているのではないか。実際には他人のためにもなるが、自分のためにもなる。また、"売名行為のためにやっている"とも言われるが、楽しく元気になることだと伝えてもらう意味で、活動したことをSNSなどで発信してもらうのも良いことだと思う。やはりバランスだ」との考えを示した。
■制服向上委員会「長く続けていれば、見られ方は必ず変わる」
1992年に結成されアイドルグループ「制服向上委員会」は、ライブ活動と並行してマナー向上などのキャンペーン活動、障害児や児童養護施設などへの寄付や交流、東日本大震災の被災者への定期訪問などを行ってきた。
現在「会長」を務める橋本美香さんは「グループ結成当初から、社会活動とボランティア活動、そしてライブを軸にするグループだというコンセプトでやってきた。例えば、目の前で子供が転んだ時には起こしてあげる。目が見えない人がいたら"こちらにどうぞ"と声をかける。特別なことではなく、困っている人がいたら助けてあげたいという、普通の気持ちの延長がボランティアだと思う。そして1997年にニューヨーク公演を行った際、ニューヨーク大学の方々にセントラルパークに植樹をする"グリーンファウンデーション"というものを教わり、身近なことからできるという精神を学んだ。そして日本に帰ってから、それぞれが身の回りでできることを考え、テーマを出していった。その中の一つが、児童養護施設などへの訪問だ。一緒に歌を歌ったり、グラウンドで遊んだり、写真を撮ったり。本当に他愛のないことだが、みんなで楽しく2時間くらい過ごす。山梨の施設に行った時には、6年生くらいの女の子に"芸能人は1回来るともう2度と来ない"と言われた。すごく衝撃的で、その時に決心した。"毎回、同じ場所に行こう。できるだけ多く、毎年行けたらいいな"と。そこでいくつかの児童養護施設や知的障害者の授産施設に絞り、交流を深めてきた」と話す。
「制服向上委員会はもう27年もやっているので、今は"売名行為"だと言われることはない。長く続けることはすごく大変だが、そのうちにきっと見る目が変わってくるのではないかと思う。禊だったとしても、ボランティアをやるのは大変だ。動機がどうであれ、"やってよかったな、笑顔になる人がいるんだったらよかったな"という実感を得られるんだったら、それはやるべきだと思うし、続けていればその行動を見てくれている人が必ずいると思うし、批判はなくなっていく。それでいいと思う」。
また、「私が入る前、ある大手の募金活動に協力している時に"イベント出演料は200万円でどうか"という交渉があっと聞いた。それはちょっと違うなと思った。大きな団体ではあったが、お金をもらってやりたかったわけではないし、もし出演者の方に多大なギャランティーが発生していたら、ちょっと不信感を抱いてしまうかもしれない。また、やりたくて行くならいいが、嫌々だったり、人の評価のためだったりとか、カメラを連れて行って20分くらいで帰ってしまうようなものだったら、きっと誰かを傷つけてしまうと思う」とも語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)