海外では過激な行動も…”ビーガンは不自由な生き方”?実践する人々の悩みとは
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 好きな時に食べたいものを食べられる現代において、肉や野菜を食べない「完全菜食主義」を貫く人たちがいる。野菜を中心とした食事を送る、いわゆる「ベジタリアン」とは異なり、動物からむやみに搾取しない生き方として、卵や乳製品も口に入れず、人によっては服やカバンなど動物製品は使わないという「ビーガン」だ。

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 そんなビーガンをめぐって、海外では騒動も起きている。オーストラリアでは両親が1歳の娘にビーガンを徹底した結果、重度の栄養不良に陥り処罰(社会的奉仕)を受けた事件、フランスでは一部の過激なビーガンによる精肉店への襲撃事件が昨年だけで50件以上も発生。イギリスではステーキハウスで食事をする人に暴言を吐いたり、日本の"肉フェス"でも動物の写真と共に「ビーガンになろう」と抗議する人も現れた。

 9日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、ビーガンの実践者に話を聞いた。

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 ビーガンとベジタリアンの違いについて簡単に整理しておくと、ベジタリアンは植物性食品と乳・乳製品を食べる「ラクト・ベジタリアン」と、植物性食品と乳・乳製品・卵を食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」に分かれ、ビーガンは乳製品や卵などを含む動物性食品を一切摂らず、植物性食品のみを食し、蜂蜜も食べない「ダイエタリービーガン」(主に健康や環境のために完全菜食)と、食事だけでなく、衣食住において動物製品の商品化を否定、毛皮・ダウン・シルクなどの製品の一切を拒む「エシカルビーガン」(主に動物福祉・愛護の観点から完全菜食)に分けられるという。

 日本ベジタリアン協会代表理事を務める垣本充氏は「明確に統計はない。ただ、エシカルビーガンには動物愛護の人たちが多く、ダイエタリービーガンは健康志向の人たちが多いという分け方はできると思う。ポール・マッカトニーが"週一ベジ"として、月曜日に菜食をしようという運動を展開している。彼が提唱したので、全世界に一気に広まった」と説明する。

 食物繊維の研究をしていた30代の頃、アメリカの学会誌を読んでいると頻繁にベジタリアンの研究が出てくることに気づき、興味を持ったという垣本氏。その後、渡米した際に研究者と交流、そこから畜肉、次いで魚を食べるのを徐々にやめていき、「ベジタリアンの深みにはまった」という。「体調は良くなり、体重は減った。それまで腸が弱かったが、菜食に変えたら便が臭くなくなった。ベジタリアンというと野菜を食べると思われるが、全然違う。穀類が中心だ。穀類に豆やイモ、野菜も食べるというのがビーガンだ」。

■ビーガン歴は約30年「身体にとっても楽で調子がいい」

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 次に取材班が訪れたのは、肉や魚を使わない料理教室「つぶつぶ料理教室」。ビーガン食を学ぼうと、多くの主婦が参加している。「大学時代に動物愛護サークルに入って、そこで食肉工場の実態を知った時に、私は肉を食べるのをやめた」「おいしいと思うが、食べたら具合が悪くなってしまう。頭が痛くなったりとか」「子どもが2人とも小さい時からアトピーで、1人はぜんそくもあってアレルギー体質なので、何か身体に良いものはないかな、とずっと色々考えていた」と、参加を決めた理由は様々だ。

 講師を務めるのは、日本ベジタリアン学会認定アドバイザーで、自身もビーガン食を長きにわたって実践する郷田優気氏だ。この日のレシピは、卵の代わりに雑穀のもちキビや豆腐を使ったオムレツ風の料理だ。受講者からは「ヤバい」「卵よりあっさりしていておいしい。これなら子どもに安心してあげられる」「皆さんが考えるオムレツとは違うと思うが、とてもおいしくフワフワとした食感だ」と喜びの声が上がる。

 肉や魚を使わないメニューの栄養バランスについて尋ねると、郷田氏は「ビーガンによってビタミンB12が足りなくなるとも言われているが、実際、悪性貧血になったりといった問題はある。ただ、それは海苔や発酵食品などで補うことができるし、牛肉など動物性の食品に含まれるたんぱく質に代わって、植物性のたんぱく質として大豆や雑穀もある」と説明する。一方、海外の研究では「ビーガン食では脳が必要とする栄養素を十分補えない」とする趣旨の論文も発表されており、栄養面の観点から是非を問う論争は収束していないのが現状だ。

 垣本氏は「2016年にアメリカの学会誌に発表された論文で、適切に計画されたビーガン食は健康的にも栄養学的にも適切であるというようものがある。例えが適切ではないかもしれないが、青汁だけ、葉っぱだけを食べるようなベジタリアンは悪性貧血を起こす。20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で作られない必須アミノ酸だ。これは大豆で摂ることができるが、問題になるのはは植物性食品にほとんど含まれないビタミンB12だ。そこを欧米の人はサプリメントで摂っている」と説明した。

 両親が菜食主義者で、ダイエタリービーガン歴は約30年という郷田氏。「学校では給食ではなくお弁当だったが、牛乳は飲まなかった。理解されず、特別視されることもあった」と、偏見や誤解の連続でもあったという。「それでも家のご飯が一番おいしいと思っていたし、身体にとっても楽で調子がいいので今も続いている。中華、イタリアン、エスニック、和食ももちろん。日本の伝統の調味料と雑穀に現代風のアレンジを加えて、パスタにしてみたり。雑穀は食物繊維が豊富で消化が良くて、お通じが良くなる。20代前半の頃、みんなと同じ食事をしてみたいなと思って試してみたこともあったが、体調があまり良くなくなった。色々考えた結果、やはりビーガンの方が居心地がいいなと思った」。

■社会からの偏見、そして過激なビーガンも…どう向き合う?

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 ただ、日常生活の中では苦労も付き物のようだ。

 「以前付き合っていた人はお肉が大好きだった。お互いに強要しなければいいかなって思ってたが、やはりご飯に行った時に楽しめないことを嫌がる感じはあった。また、何も知らない知人が作ってきてくれたクッキーにバターが使われていたことがあり、そのときは"その人の気持ちをいただく"という意味で食べたこともあるし、コンビニで食事を済ませないといけない場合はすごく難しい。おにぎりの海苔に動物性の調味料で味がついている場合もある。そこまでこだわるかどうかだが、ビーガンの主義の人からしたら"ビーガンじゃないだろう"て思われるかもしれない」(郷田氏)。

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 普段はほとんど料理をしない番組スタッフがビーガンの食生活にチャレンジしてみると、予想以上に難しいことがわかった。例えば納豆のタレなど、スーパーやコンビニで売られている食材には肉や魚のエキスが入っていることも多く、野菜をそのままむさぼったり、味付けも単純なものになりがちで、10日間で3kgほど痩せる結果になった。欧米の状況に詳しい垣本氏は「日本に来たビーガンのイギリス人が蕎麦をしょうゆで食べていた。味噌汁は昆布だし。欧米人のビーガンはそういう所にすごくこだわる。ただ、欧米と比べて、日本では料理をしないと手に入らないといった違いがある」と指摘。郷田氏は「海外に旅行に行くとわかるが、意外と選べるし、お願いするとお肉を抜いてくれたりする」と話した。

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他方、一部のビーガンによる過激行動について垣本氏は「国の内外に関わらずそういう人たちがいるということだが、多くはエシカルビーガンだ。動物愛護、福祉の活動をしていて、その中の一部のビーガンの人たちがそういうことをやっている傾向にあると思う。しかし、同じテーブルで肉を食べる人がいても、魚を食べる人がいても、宗教的な食事をする人がいても、お互いに理解しあってコミュニケーションをするというのが私の考え。過激なビーガンとはまったく違う」とコメント、郷田氏も「ビーガンになったきっかけは、動物にやさしくありたい、地球にいいことをしたいという思いからだと思う。そうだとしたら、攻撃することではなく、地球にも人にも動物にもよりよい世界のためにできることをしたいという気持ちを持って、批判ではなく、"こっちの方がおいしいし楽しいよ"、というポジティブな感じでビーガンの主張が広まっていけばいい」との考えを示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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