「北村滋内閣情報官のNSC局長就任はインテリジェンス外交へのシフト」元産経政治部長・石橋文登氏
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 第4次安倍再改造内閣内閣が発足した11日、韓国政府は日本の輸出規制が不当だとして、WTO(世界貿易機関)に提訴することを発表した。両国の対立は深まる中、17人を入れ替えた新内閣で注目されているのが、この日韓問題の舵取りを任された河野防衛相と茂木外相だ。12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、政治ジャーナリストの石橋文登氏は(産経新聞前政治部長)に話を聞いた。

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 石橋氏は「前提として、文在寅政権は前の朴槿恵政権やリベラルと呼ばれた廬武鉉政権・金大中政権とも全く違う政権だということがはっきりしてきたということがある。大韓民国は日本の統治時代に日本に協力した経済人や軍関係者、そして戦後占領してきた米軍に協力した連中が作ったものであって、正統な国家だとは認められないと考えている面々が作っている政権ということだ。日韓請求権協定を反故にするということは日韓基本条約を反故にしているのと同じこと。これも大韓民国を正統ではないと思っているからだ。普通の外交というものが通じなくなってきているし、条約さえ踏みにじるという状態なので、アメリカや中国、ヨーロッパとの外交を通じて、"韓国はこのままでいいのか"という包囲網を敷かないとどうしようもない」と話す。

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 「いまだにメディアは日韓関係についてばかり語っているが、すでにこれは米韓関係の問題になっている。GSOMIA破棄の話が出てからは、それまで我慢していたトランプ政権が猛烈に怒り出した。しかも文政権で安全保障や朝鮮統一を担当している文正仁特別補佐官は、露骨に"米韓同盟はいらない"といった発言をしている。朝鮮戦争で北朝鮮、中国という旧ソ連営によって親族を亡くした方が随分いる中、"アメリカよりも中国や北朝鮮がいい"という人がそれほど多数派だとは思えない。ただ、文政権自体はアメリカを信用していないし、明らかに北朝鮮の方が正統な国家だと思っていて、統一朝鮮というものも前面に出してきている。つまり、同盟よりも同胞を取ってしまう。このまま米韓同盟が破棄されることになれば、戦争になりかねないし、金正恩は信頼できると話しているトランプ大統領が北朝鮮と結んで韓国の文在寅政権をつぶそうとなってもおかしくない。日本にとっても、韓国でクーデターが起きたり、日本の航空機対し韓国軍が発砲して戦争に近い状態になったりするなど、最悪の事態が起きかねない状態はしばらく続くだろう」。

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 そんな中、外務大臣として最前線で韓国に対応してきた河野氏は、去年、韓国最高裁のいわゆる元徴用工を巡る判決の際に「ケタ違いの影響を日韓関係に及ぼす極めて重大な出来事であるということを韓国政府にまずきちんと認識してもらう必要がある」と強い姿勢を見せた。今後はGSOMIA破棄を巡る問題など、日本の安全保障を担う防衛大臣として、「北朝鮮の脅威に向き合うためには、日米韓がしっかり連携していくことが大事だ」と連携を重視する立場を示している。一方、担当大臣として日米交渉をまとめ上げた茂木氏は外務大臣になり、「国際法違反の状態を一刻も早く是正することを引き続き強く求めていく」と強めのコメントを残している。

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 「まず、河野さんを外務大臣から外した最大の理由はロシアだ。安倍・プーチンの首脳レベルの下で河野・ラブロフの外相レベルでやってきたが、"一島たりとも戻さない"という膠着状態に陥っている。これを打破したいために代えたということだ。河野さんは英語もできるし、頭のいい人だ。だが、言い方は悪いが、ガキっぽいところがある。評価はしていたと思うが、ここは日露を動かすためにもカウンターパートを替えたということだ。安倍総理が残りの任期でやりたかったことは憲法改正、日露領土問題の解決と平和条約締結、そして拉致問題、核ミサイル問題の解決と国交正常化だった。ところが、韓国との関係がこじれて大変な問題になってきた。そこで今の状態の外交が分かっている河野さんを防衛大臣にした。安倍総理としては元々の戦略と違うが、そのような事態を避けるために韓国への対応が大事になる可能性はあるし、政権としては安全保障の問題として韓国を捉えている。そこで今回の布陣が活きてくるだろう。茂木さんはめちゃくちゃ頭のいい人で、マッキンゼーなどの外資系にもいたので、トランプさんが大好きなディール外交ができる人だ。これが中国に対してもロシアに対しても今までと違うアプローチできる。ただ、やはり韓国をどうするかという話にもなってしまうかもしれない」(石橋氏)。

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 さらに石橋氏は「今回の人事にはもう一つ、ミソがある」と指摘する。

 「安倍さんが最も重視する首相秘書官の中でも筆頭としてやってきた今井尚哉さんが首相補佐官と兼務になった。これは局長級のポストだが、次官よりも上だ。また、次官級の内閣情報官を務めてきた北村滋さんを、次官より上のNSC(国家安全保障局)局長にした。この人は第一次安倍政権では総理秘書官を務めた諜報のプロだ。アメリカでは解任されたボルトンさん、韓国で文正仁さんといった人のカウンターパートとして接触できる位置に2人を上げたということだ。これから彼らが裏で動き出すというのが今回の外交のキーだ。おそらく安倍さんは日本の外交システム自体を大きく変えようとチャレンジしている。外交は防衛、軍事、安全保障、諜報、それからいわゆる外交ルートを統合してやらなければいけない。その司令塔に北村さんを選んだということは、NSCをイギリスのMI6のような組織に変えていき、インテリジェンスの部分を全面に外交に使って大方針を決め、各大臣に動いてもらうという形にしようということだろう。日朝もそうだし、プーチン政権は諜報機関、軍がバックについているので、日露も外務省同士でやっていても領土交渉は進まない。外交ルートが使えない日露・日朝で動いてきた北村さんを韓国に対して使わなければいけなくなったという情勢ということだし、これがどれくらい機能するのかが活かされるのかもしれない」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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