『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』で知られる周防正行監督の最新作『カツベン!』(12月13日より全国公開)のエンディング曲を奥田民生が担当することが明らかになった。

周防監督が今回選んだテーマは「活動弁士」、通称“活弁(カツベン)”。サイレントのモノクロ映画に楽士の奏でる音楽と共に、独自の“しゃべり”で観客を引き込む七色の声を持つ天才的な活動弁士の主人公には、本年度アカデミー賞新人俳優賞を受賞した成田凌が抜擢。「声」にまつわる壮絶なオーディションを勝ち抜き、映画初主演に挑戦する。ヒロインには若手最注目の黒島結菜。さらに永瀬正敏、高良健吾、井上真央、音尾琢真、竹野内豊、池松壮亮、成河(ソンハ)、酒井美紀など周防組初参加の面々に加え、竹中直人、渡辺えり、小日向文世、山本耕史ら周防作品おなじみの実力派キャストたちが集結。今まで自ら脚本も手がけてきた監督が、長年周防組の助監督をつとめてきた片島章三氏が書いた脚本にほれ込み、自身初となる自らが書いていない脚本の映画化へ挑戦する。
エンディング曲として奥田が歌うのは、大正7年に発表され、「ジョージア行進曲」のメロディに歌詞をつけ、「パイノパイノパイ」というコミカルな歌詞で大流行し、ドリフターズやなぎら健壱など多くの替え歌も生まれ、長年歌い続けられてきた「東京節」を、脚本の片島章三が『カツベン!』用に歌詞を書きかえた、その名も「カツベン節」。映画愛に溢れた本作にふさわしくアレンジされたカツベン節には、映画黎明期のスターであり、“めだまの松ちゃん”の愛称でも知られる尾上松乃助や、「怪盗ジゴマ」や、「椿姫」、「雄呂血」(おろち)や「不如婦」(ほととぎす)など、歴代の名作が登場。さらに一世を風靡した時代を代表する活動弁士・駒田好洋が活弁の際に口癖のように言っていた「頗る非常」という説明や、生駒雷遊の「ああ、春や春、春南方のローマンス」でも知られる名調子が歌詞にちりばめられており、まさに映画愛に溢れた曲であり、映画『カツベン!』のドタバタ群像劇を締めくくるに相応しい曲になっている。
映画クランクイン前から、音楽監督の周防義和からの提案で「東京節」を映画の中で使おうと構想していた監督は、「東京節がもつ時代感を現代にも通じる味わいに変える、そういう歌手は誰か」と考えたときに思い浮かんだという、自身も好きな奥田へオファー。 監督は、「奥田さんとお仕事するのは初めてでしたが、楽曲の狙い、映画の狙いを見事に表現してくれた」と、奥田の歌う「カツベン節」を絶賛。レコーディングで熱の入った歌声を披露した奥田も、「子供の頃、大人たちが歌っていた感じというか、ムードを思い出してやりました。自分が昭和の生まれなので、この歌がもっていた心は分かると思います」と曲に込めたその想いを語った。
奥田民生 コメント
「カツベン!」を観て、作品から昔の人の体力と気力のすごさを感じました。「東京節」というものが子供の頃よりさらに前の流行り歌みたいなことは、ほのかに覚えています。当時というのは今より自由な気がします。 子供の頃、大人たちが歌っていた感じというか、ムードを思い出してやりました。自分が昭和の生まれなので、この歌がもっていた心は分かると思います。
周防正行監督 コメント
「東京節」という、大正時代の流行歌がもつ楽しい雰囲気と時代感を活かして、この映画の音楽を作れないか。いつも僕の映画の音楽を担当していくれている音楽監督の周防義和さんのアイディアからエンディング曲はスタートしました。それならあの東京節を、この映画にふさわしい詩にしようということで、今度は脚本家の片島さんに作詞をお願いして見事「カツベン節」が完成したんです。 もととなった東京節がもつ時代感を現代にも通じる味わいに変える、そういう歌手は誰かを考えたときに僕の好きな奥田民生さんが頭に浮かびました。奥田さんとお仕事するのは初めてでしたが、楽曲の狙い、映画の狙いを見事に表現してくれて、この楽曲が持つ楽しさを活かし味わい深いものにしてくれました。現代に蘇る不思議な味わいを持つ歌となった「カツベン節」のおかげで、映画のクライマックスシーンをイメージすることができました。


