絶賛開催中の4年に1度の祭典「ラグビーワールドカップ」。前回大会で強豪・南アフリカを倒した日本が、今回は優勝候補のアイルランド相手に大金星を上げるなど、日々の試合を楽しみにしている人も多い。
1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、ノンフィクションライター山川徹氏、TBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』にも出演したラグビー芸人のしんや、そして元ラガーマンのケンドーコバヤシを交え、競技の魅力やみどころをビギナーにもわかりやすく解説した。
ニュースを見ていて気づくのが、日本代表の31人のうち16人が外国籍、外国出身、もしくは帰化した選手であること。強豪のアメリカやスコットランド代表も、多様な選手たちで構成されている。実はラグビー代表選手の選出条件は"出生地がその国"、"両親、祖父母のうち1人がその国出身"、そして"その国に3年以上継続して居住(今回のワールドカップ後、5年以上の居住に変更)または通算10年にわたり居住"のうち1つを満たせば良いことになっている。
宗教対立が原因で社会が南北に分断されているアイルランドだが、代表チームとしては一つ。さらにニュージーランド代表"オールブラックス"の"ハカ"は先住民文化が由来と、まさに多様性を受け入れて進化してきた競技なのだ。
この点について、8月に『国境を越えたスクラム ラグビー日本代表になった外国人選手たち』を上梓した山川氏は「ラグビーが多様性のスポーツと言われているのは、体重が100kg以上あるような選手も身長2mくらいある選手もいるし、日本代表の田中史朗選手のように166cmという選手もいる。様々な選手がそれぞれの体格を生かしながらプレーできるのも魅力だ」と説明する。
その上で、「オリンピックなども含めて国籍主義だが、ラグビーだけは自分の暮らしている地域の代表になれるスポーツ。例えば日本代表のキャプテンであるリーチ・マイケル選手はニュージーランド出身だが、お母さんはフィジーの人で、日本に3年以上住んでいるので、選択肢ががそれだけある。ラグビーは19世紀初頭にイングランドで誕生、隣のスコットランド、ウェールズ、アイルランドに伝わって各地のパブリックスクールなどで盛んに行われるようになった。また、大英帝国が世界の覇権を握っていた時代ということもあり、ラグビーをしていたエリートたちが各地の植民地に散らばる中、自分の生まれ故郷だけでなく、住む場所に合わせてどちらの国の代表にもなれるという形になっていったのがルール化されたと考えられている。日本代表のヘッドコーチのジェイミー・ジョセフさんは、1995年大会ではニュージーランド代表でプレーしていたが、来日して3年が経過したので、1999年大会では日本代表として出た。ただ、それが海外で批判を受けたので、翌2000年からは基本的に1か国の代表にしかなれないというルールが新しく加わった」と話した。
そんな日本代表の中で山川氏が注目するのが、韓国籍の具智元選手だ。
「彼のお父さんはアジア最強のプロップとして、韓国では"伝説"と呼ばれる具東春選手。そういうルーツを持っているにも関わらず、お父さんは"良い環境でラグビーをさせてあげたい"と、中学時代に日本に留学させた。僕がインタビューをした際、"こういう国際情勢の中、躊躇や、韓国代表になりたいという気持ちはないか?韓国からの批判はないか?"と尋ねた、すると具選手は"韓国のラグビー仲間は、お前は日本代表でもあるが、俺たちの代表でもあるんだから頑張ってくれ"と言ってくれたと教えてくれた。彼自身も、"両方の国の人から応援してもらって嬉しい。自分がワールドカップで活躍することによって、日本人が韓国人を好きになってくれて、韓国人が日本人を好きになるような、そういう橋渡しのような役割をしたい"と話していた。人柄が良く、とても若いのに立派だ」。
しんやは学生時代の経験について「ルームメイトがニュージーランド出身の留学生だったが、"夜食を食べよう"となった時、自分らは鍋を食べるが、彼はシリアルを食べていた(笑)。最終的には一緒に鍋を食べるような仲になった」と振り返り、「日本人の自分らは高校から泥臭い感じの練習をしていたが、ニュージーランドは割とルーズな感じで、練習時間もそんなに長くない。だから初めは合わなかったが、4年間を通して日本が好きになっていって、最終的には優勝という結果が出た」と話した。
また、指導に対するユニークな発想にも注目だ。一般社団法人リディラバの安部敏樹氏は、ラグビーについての知識が全くないにもかかわらず、U-20代表の合宿に呼ばれて講演をしたことがあるという。
「自分の仕事について話したが、終わった後は自分たちで考えさせているようだった。日本語以外の言語で話している選手もいた。使えそうなものを取り込んで、引退後のキャリアも考えているのではないかと思った。そういう試みをしているのが面白いし、コーチングも進んでいると感じた」。
これに対し、しんやが「大学時代には"学生コーチ"というのがいて、その上に別のコーチ、さらにその上に監督がいた。コーチが学生コーチに教え、それを上級生が理解し、下級生に教えていく。だから、監督からの指示はあまりなく、グランド内で終わっていた」と説明すると、山川氏は「それも歴史が生んだ文化だ。ラグビーの前段階のフットボールのルールがパブリックスクールごとに違っていて話し合いをするのが大変だったので、両チームのキャプテンが信頼できる人にレフリーを任せていた。なぜ監督が直接指示をしないかというと、それだけディスカッションの場がすごく重要だったからだ。グランドではヘッドコーチよりもキャプテンの方が権限を持つ」と話した。
日本代表の勝利に「衝撃を受けた」と話すケンドーコバヤシは「僕が高校生だった30年前に比べてプレーの幅も広がっているし、自由で楽しいスポーツになった。日本代表も格闘技の練習を取り入れている。よく言われるのが、ラグビーはあらゆるスポーツの中でも番狂わせが少ないと言われるスポーツ。そう考えると、今回の勝利は実力だと言える」と、さらなる今後の熱闘に期待を込めた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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