写真集や小説など現役アイドルが主役となる本が出版業界で勢いを見せる中、「元アイドル」をテーマとした本が3度の重版を記録し、話題を集めている。本を手掛けた著者自身も、元アイドルだった。
今年5月に発売された、元アイドルから全く別の道に進んだ女性8人の「今」を追った書籍『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)。執筆したのは大木亜希子さん、30歳。AKB48よりも“ちょっと大人のお姉さん”がコンセプトの「SDN48」に、約2年半在籍していた。
2012年にグループが活動休止となった後は、清掃員やウェブメディアの記者などを経て、2018年にフリーライターとして独立した。
「記者として社会に出てみたら『元SDN48だったんでしょ?』って色眼鏡で見られちゃうし、どう扱ったらいいか分からない“腫れ物”“危険”みたいな部分でもあったんです。元アイドルという屋号が。この8人の取材を終えて気持ちが晴れ晴れとしてきて、私自身も当時の悶々とした気持ちを成仏できた」(大木さん)
紅白歌合戦にも“出演”は果たしたが、その姿はテレビ画面に一切映っていなかった。アイドルの一員でありながら、「アイドルにはなれなかった」大木さん。今回インタビュアーを務めた元NMB48研究生の瀧山あかねアナウンサーも「大変という言葉で伝わらないくらい、(アイドルは)本当に大変ですよね」とうなずく。
「競争とか他の子への嫉妬、自分を磨くために下準備が必要だったりするので、結果的に人間力が鍛えあげられることもあるのかなと思いますね」(大木さん)
本に登場する8人は会社員や保育士などとして活躍しているが、8人のエピソードは普遍的なメッセージも伝えている。
「人生80年とか100年とか言われてますけど、その中で自分の夢が一発目で見つかる確率って少ないと思うんですよ。『今やっている仕事がすべて』とか『これを辞めたら自分には何もない』と思わずに、『好きなことに軸を置いて突き進んでいってほしい』というのがこの本に込められた思いですね」(大木さん)
さらに大木さんは週に1回、スナックの“ママ”も務めている。
「アイドル時代に社会勉強とか学校の授業をできなかった分、お客さんにいろんなことを教えてもらっている、私にとって学校のような場所です」(大木さん)
執筆作業場のひとつとして、またインタビューの訓練場所として来ているそうだが、“アイドルの顔”を見せる時もあるようだ。「元というよりも、現在進行形でアイドルを感じますね。笑顔に華があります」と同僚のサエコママ。
「元アイドル」の肩書は“重い十字架”なのかもしれない。「アイドルよりも今の仕事の方が楽しいか?」との質問に、大木さんは悩みながらもこう答えた。
「……イエスですね。ただ、アイドルをやっていたからこそ、その境地にたどり着けたんだと思います。(元アイドルの)肩書は、この本を書くまでは“重い十字架”でしかなかった。でも今は誇りです」
(AbemaTV/『AbemaMorning』より)









