埼玉県に暮らす吉田さん家族。何気ない家庭内での会話を良く聞いてみると、姉妹は吉田さんをニックネームで呼んでいる。実は吉田さん、姉妹の母親である美紀子さんと4年前から交際、連れ子である2人との血の繋がりはないのだ。現時点では入籍もしていないため、家ではニックネームで、外では"パパ"と呼ばれている。「不思議だけど、僕も母親も“パパって言いなさいね”みたいなことは一言も言っていない。でもそういうふうに呼んでくれるので、ちょっと嬉しい」。吉田さん自身も離婚経験があり、実子(1人)の親権は前妻が持っている。
「初めは上の子も下の子も、“あの人誰?”みたいな感じだったけれど、遊んでいるうちに、親として成長を楽しめるというか、喜べる」。一方、「初めは悪いことをした時であっても、怒るということにすごく気を遣った。嫌われるかなというのがあって」。
美紀子さんは「彼が箸の持ち方や、食べる時に左手を添えなさいと、ナチュラルに言ってはいたが、たくさんの人がいる中で注意するのを見た知人がこそっと“なんかさぁ、自分の子でもないのにあんなに怒るってどうなの?”と言った」と振り返る。「“どうせうまくいかないんでしょ?”“事件が起きるんでしょ?”みたいな。ニュースなどでも、悪い情報ばかりが入ってくる」。
結婚するカップルの4組に1組が再婚だという日本。子どもを伴って再婚する家族は“ステップファミリー”と呼ばれるが、子どもが犠牲になる事件は後を絶たない。先月も“本当の父親じゃないのに”と言われ、カッとなり息子を殺害した疑いで義理の父親が逮捕される事件が起きている。
吉田さんは「“お前は本当の親じゃない”という一言って、しんどいと思う。言われるだろうなっていうのは覚悟しているけど」と胸の内を明かした。
そんなステップファミリーの支援を行うNPO「M-STEP」の新川てるえ代表は悩める親たちからの相談は年々増え続け、今は年間に200件近くに達するという。「“継子を愛せない”という悩みが圧倒的に多い。私は“愛せなくて当たり前ですよ”と答える。 “時間をかけながら、親にはなれないけれども家族にはなっていけるよ”とアドバイスしたり、カウンセリングしたりする」と話す。
「責任のない他人の子どもはかわいがれる。でも、責任の伴う他人の子どもはすごく重たく感じる。最初は頑張っていても、“何かが違う”と思うようになり、“やっぱりこの結婚は難しかったかも”、気付いて悩み始める。私のところにカウンセリングにくる人はそのような1、2年目の継親がすごく多い。特に女性の場合、産んでいない子、もっと言えば、自分の愛した男性が元の奥さんとの間に作った子をかわいいと思えないことがある。男性の場合は、カウンセリングに行くこと自体の敷居が高いと感じて、孤立してしまう傾向にある。私は“焦らなくていいよ”という言い方をする。時間をかけて、一緒にいる中で自然に仲間意識が生まれ、そこから家族ができあがるというのがステップファミリーの理想形だと思う」。
新川氏自身、ステップファミリーの経験者だ。「3度の結婚のうち、2度目と3度目がステップファミリーだった。2度目はシングルマザーとして実子を1人連れての再婚だった。自分の実子なのであまりストレスは感じなかったが、たまに相手(継父)が子どもに対してきつく叱っているのを見て、“どうしてそんなにイライラしているんだろう”と思うことはあった。3度目の再婚が非常に難しく、私の長女が15歳で、長男が9歳、相手の長女が11際で次女が2歳。より正確に言えば、相手の長女は前の奥さんの連れ子だった。思春期ということもあって非常に荒れてしまっていたので、私も家庭問題の専門家として勉強をしたし、相手と一緒に勉強会にも行った。それでも予想以上に大変なことがたくさんあった。何も知らないでいきなり家族になったらとしたら、本当にすごく大変だと思う」。
目黒女児虐待死事件の公判では、継父だった船戸雄大被告が述べた“親になろうとしてごめんなさい”という言葉がクローズアップされた。
新川氏は「私たちの心に本当に突き刺さるセリフだった。これは当事者でなければ分からないことだと思う。私も親になろうとして頑張った時期があった。世の中もそれを強いるし、周りも“新しいお父さんになったんだよね。お母さんになったんだよね”というような対応をするので、当事者としては親にならなくてはと覚悟するが、どうしても実の親のようにはなれない。そこで継親はつらい立場になる。被告を擁護することはしないが、気持ちには共感できる部分がある。だからこそ私は頑張って実の親のようになろうとしない方が良いと考える。私もそのことに早い時期に気が付き、色んな方法を取ったことで楽になれた」。
その上で新川氏は、結婚前は2人でしっかりと学び話し合うこと、結婚後は焦らないことが重要だと強調。「私も経験しているが、例えば私の家族は朝起きたらすぐに歯を磨くが、相手の家族は朝ご飯を食べた後に磨いていた。私はこれで怒ってしまったが、それでしつけであっても、ルールは2つあっても良いと思うし、やっていく中で自然と1つに合わさっていく。最初は焦らず、“あっちの家族はあっちでいい”ということが重要だ。そして、思春期の子がいる場合に、私はあまり再婚を勧めない。それでも結婚する場合、思春期の子どもは家の中に自分の世界があまりなく、外に持っている。だから過度に干渉したりしないで過ごしていく方が良い。例えば直接注意するのは実親で、継親は良いとこ取りをして欲しい」と話した。
フリーアナウンサーの笠井信輔氏は「再婚相手の連れ子と非常にうまくやっている友人がいる。家を新築したからと遊びに行くと、家の隅っこに奥さんが死別した夫、つまり連れ子にとっては実のお父さんの“メモリアルコーナー”があって、一緒に撮った写真などが飾ってあった。つまり、実の父親がいたという事実を否定していない。そうすることで、上手く家族が形成できている」とコメントしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:子連れ再婚の難しさを解説
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