ラグビーワールドカップが開催されていたこともあり、多くの外国人が日本を訪れていた中での台風被害。取材に対し、外国人観光客からは「ホステルスタッフに台風の時に何をすべきか注意を受けた」「災害対策もしっかり整備されている印象だ」(スイス人家族)、「日本は(台風に)十分対処できていると思う」(イギリス人男性)、「報道は十分だったと思う」(ニュージーランド人女性)という声も聞かれた。
その一方、「浅草六区には外国人観光客がまだいらっしゃいます。困ってる人を見かけた方は教えてあげてください」とともに投稿された。12日の昼ごろに東京・浅草で撮影された、雨の中の観光客の写真が話題を呼び、「緊急エリアメールが全て日本語だったので、日本人の友人に翻訳してもらった」(イギリス人男性)、「もっといい翻訳システムが欲しい。外国人全員が英語を喋れるわけじゃない」(メキシコ人女性)、「もっと多くの場所でWi-Fiが使えたら情報が得られたのに」(メキシコ人女性)と、改善点を指摘する声も少なくない。
武蔵大学のアンジェロ・イシ教授は「おそらくほとんどの人がNHKを見ていたと思う。以前に比べて英語の文字情報が確実に増えている」と評価。一方、日本政府観光局の英文ツイートに対しパックンが「微妙に間違っているが、十分伝わる。おそらく翻訳ソフトを使っているのだろうが、すばらしいと思う」と話すと、イシ氏は「翻訳ソフトにしても人間が訳すにしても、ポルトガル語やスペイン語など、英語に比べてマイナーな言語は精度が下がる。大きな声では言えないが、ポルトガル語で省庁がとんでもない誤訳をして恥をかいていることもある」と明かした。
そんな中、観光客や外国人居住者への情報提供に力を入れているのが千葉県鴨川市だ。ホームページの情報には英語、中国語、ベトナム語の訳文も併せて記載。市の在住外国人662人のうち、中国322人、英語圏157人、ベトナム89人、韓国・朝鮮39人という構成であることから、市内居住の外国人のほとんどがカバーできるという。担当するのは日本に来て4年目になるアメリカ人の市民交流課国際交流員、アンディ・ケーザーマン氏だ。
今年8月の訪日外国人は252万人で、東アジアからが76.2%を占めている。多くが非英語圏からだ。同課の山口紀子課長補佐によると、実は外国人の多くは、英語対応よりも分かりやすい日本語を求めているのだという。「(居住外国人の)10%くらいの人たちに対しては、かみ砕いた“やさしい日本語”言葉で発信している。小学校3、4年生くらいの日本語レベルがあれば分かるようなものでやろうということで、例えば“運行経路における倒木の影響により当面の間、運休になる”を“木が倒れているためしばらくバスはありません”と書く。そのためには、日本人自身の手でやさしい日本語を作るところから、みんなで考えなければといけない」。
山口氏が紹介した“やさしい日本語”は、1995年の阪神淡路大震災の際に案出された、外国人にも分かりやすい日本語表現だ。「重要度が高い情報だけに絞り込む」「あいまいな表現は避けて、です・ます調にする」「難解な語彙を言い換える。“危険”は“あぶない”」「文章を続けず、一文ごとに切って表現」「分かりやすい表現に変える。“避難所”は“みんながにげるところ”」といったポイントがある。
イシ氏は「日常生活の平時においては足し算の論理で、政府も11カ国語に多言語化しようと、ようやく動き始めた。ただ、非日常である災害時、リアルタイムかつ多言語で情報提供することは難しい。そこで力を発揮するのが、やさしい日本語だ」と説明する。
「必ずしも難しいものを簡単にする、ということだけではない。例えば“震度6弱。震度5強”といった表現も、ブラジル人にとっては難しい。しかも“弱”を弱いと誤訳してしまったことで、意味が逆になってしまったこともある。日本語にはそういう落とし穴が多いので、記号やビジュアル情報で補ったり、どのように誤解され得るかのシミュレーションをしたりすることが重要だ。現在も多くの個人・団体が研究して、バージョンアップさせている。来年には東京オリンピック・パラリンピックがあるので、それに向けて一気に、多言語化とやさしい日本語を充実させれば、在留外国人にとってのレガシーになると思う」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:訪日外国人に避難情報どう伝える? やさしい日本語がカギ!
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