「漫画やアニメなどの表現の自由を守る」と訴え続け、ネット選挙運動を駆使した7月の参院選で見事に当選を果たした自民党の山田太郎議員が17日放送のAbemaTV『NewsBAR橋下』に出演。注目されるダウンロード違法化の問題について橋下徹氏ら出演者と議論した。
■「公認取り消しになってもいいと、腹を括った」
山田:ダウンロード違法化、スクショ違法化、リーチサイト規制の問題。これらが今年の3月、危ないところまでいった。漫画の海賊版を撲滅する目的ではあるが、違法と知りながらサイトのスクリーンショットを取ったら著作権法上違法になってしまうというのは、いくらなんでもやりすぎだ。何が違法になるのかどうかもわからないし、「1年くらいキャンペーンしてたんだから、知ってたはずだ」とか言われるだろうし。おっかなくてスクリーンショットができなくなる。
こんなトンデモ法案が自民党の中で部会を通過し、総務会まで行った。ギリギリのところで止まったが、押し戻して通りそうになったので、ぶっちゃけて言ってしまうと、僕はあらゆる手段、人脈を使って、官邸に連絡した。「こんなのが通ったら、申し訳ないが自民党は負けます」と。当時は参院選の前で、僕は自民党の公認候補者。なんで候補者が官邸にまで連絡してるのという話だし、知財本部で法案を進めようとしていた方は参院選の選対本部長でもある。公認取り消しも覚悟の上だった。でも、こんなのが通ったら自民党には行けないと思ったし、公認取り消しになっても、どこかの野党が拾ってくれるかもしれないと、腹を括った。
農薬でいえば、健全なものまで全て殺してしまう可能性があるもの。ネットは匿名性があるから犯人がわからないと言うが、アメリカでは「情報発信者開示制度」があり、実際に漫画村もそれで特定したことで潰れるに至った。もちろんイタチごっこで、新しいサイトがまた出てくるかもしれないが、まずはプロバイダ責任制限法(プロ責法)を見直すとか、違法なアップロードを取り締まるための努力をすべきだ。それでもダメなら次の段階だ。
橋下:僕もブロッキングはやりすぎだと思った。確かに違法なサイトに接続するというのは悪いことなんだから、それは通信業者に見られてもしょうがないかもしれない。しかし、どこまで見られているかわからないというのはやりすぎだ。
山田:ただ、“最後の手段”としては効果覿面。テロとの戦い、フェイクニュース対策の問題からも、世界の方向性は残念ながらブロッキングに向かっているし、政府筋はやりたい。
橋下:安全保障上、これからの世界は違法なところには接続させないという方向に向かうだろう。これが進んでいったのが中国だ。しかし日本はその“中国化的”なところに行くのは待つべきだと思う。
山田:僕は絶対にブロッキングはいけないと思っている。見られていると感じれば、萎縮効果が出てしまう。
■「AV業界も守る。業界が滅んでしまっては意味がない」
紗倉まな:やっぱり作品が売れてこそ次の作品を生み出せるという循環になるはず。私の場合、違法にアップロードされている無料動画から知ってくれた人が多いが、制作費も減る中、その無料動画すら見られなくなってしま日が来るのではないかと思ってしまう。でも無料動画を見ている人の多くは、これは違法なんだとか、罪の意識みたいなものはないと思う。
橋下:そうだね。例えば音楽業界だと、コンサートの様子をどんどんスマホで撮ってネットに上げてね、というのが出てきた。昔は許されなかったことだ。
山田:音楽業界はダウンロード違法化を早い段階で進めてきたが、iTunesなどの便利なインフラが出てきた。ダウンロードするのはめんどくさいし、お金を払ってでも使いやすい方を選ぶようになった。漫画やアニメの業界も、本当は便利なサイトを作らないとだめだ。
一方、地方でこういう話をすると「山田さん、申し訳ないですが、我々は違法ダウンロードをしてしまうんです」という若い子がいる。なぜかと言えば、地方局では放送されていないので、そうやって見るしか無いから。つまり違法ダウンロードの問題は、地上波とネットという、放送の問題など、色んな領域の話が絡んでくる問題でもある。議論がそういうテーマにも移っていけばいいと思う。
結局、どんなにブロッキングしても、サイトを変えればアクセスできてしまうし、最終的には取り締まることのできない方法だ。それによって出てくる萎縮効果などのマイナス面と天秤にかけて、それでもやるのか考えなければいけない。現実問題として、音楽の違法ダウンロードでは、著作権侵害による摘発は未だ一件もないという。
橋下:だから漫画村の件も、ダウンロードを違法化しなくても摘発することはできるではないかということですね。
山田:別の視点で言えば、いけないことだということが分かれば、教育的効果は働く。だから違法化しつつも、刑事罰は付けないという手もある。政治家は実効性を考えなければならない。一方的な意見だけを聞いて「やってみました、結局は防げませんでした、失ったものが大きかったです」、では何の意味もない。
橋下:それが今、一定の条件でダウンロード違法化、という方向が出てきていますね。
山田:年内に決めて、来年の通常国会に出すという流れになってきているので、私も急ピッチでやっている。
高橋茂雄(サバンナ):漫画の話はされているが、国会議員はAVの話もしているのか。場合によっては映画などよりもお金を投じている人もいると思う。
山田:確かに映像の一種ではあるが、国会では言いにくい雰囲気があると思う。「紗倉まなちゃんも大変な被害者で」という展開をするのは…
橋下:そういう映像やパワーポイントを使って説明しないといけなくなるから、どうするんだろうね。でも、違法に配信しているサイトに広告が出ていて、その売上は演者ではなく、サイトの運営者に入っていくわけでしょう?これはどうにかしないといけない。
山田:僕は今、すごく苦しい立場だ。"死に物狂いで表現の自由を守るために"にということで出てきて、期待されている。一方、与党にいるので、「ちゃんと取り締まらないのはおかしい」という権利団体の言い分も聞かなければならない。揺れながらも、何とか落とし所を決めなければならないが、双方を完璧に納得させるのは難しい。やはりどちらからも批判されてしまうと思う。だから手の内はまだ明かせない。
橋下:野党だったら責任関係なく言えばいいけど、両方に言われながらも最後は苦しいところで決断するのが与党の政治家だからね。AV業界も守る?
山田:もちろん。業界が滅んでしまっては意味がない。それくらい深刻な局面でもある。
高橋:これは男たちが支持する!
橋下:これ、AV業界から多額な献金がいくね。
紗倉:間違いなく(笑)。AV村の票は入りますね。
山田:でも、僕はお金も票ももらわないで戦ってきたんで。
橋下:黙ってても来るから。金が来なくても、作品が来るから(笑)
山田:ちゃんと自分で買います(笑)。
紗倉:優しい!ありがとうございます!。