「『転べ』『流産しろ』だけにとどまらず、妊婦に対してはもちろん、人として言ってはいけないようなコメントが毎日届くようになり悩まされた」
言われなきネットの誹謗中傷に苦悩した日々を明かしたのは、元AKB48で実業家でもあるタレントの川崎希(32)さん。彼女によると、妊娠を発表した約3年前からひどくなり、「転べ」という書き込みを目にしてからは、外出の際に「押されてはいけない」と周りに人がいない場所を歩くほどの警戒ぶり。さらに新居の住所がネット掲示板に載せられるなど、ネットに書き込まれた誹謗中傷の件数は数万件にもおよんだという。
収まる気配をみせないネットへの誹謗中傷を受け、川崎さんは今月4日、自身のブログで「発信者情報開示請求」を行ったことを報告。心無い人たちの心無い行為に対して、毅然と争っていく姿勢を見せた。発信者情報とは、書き込みをしたとされるPCやスマホを契約している人の名前や住所、メールアドレスなどの個人が特定される情報のこと。それらを開示する請求とは、具体的に何を指すのだろうか。
ネット情報の発信者情報開示請求を行ったことを受け、無数の殺害予告を受けたというネット訴訟に詳しい唐澤貴洋弁護士は「発信者情報開示請求の方法は2段階に分かれている」と話し、具体的に次のような説明を行う。
「1番目はネット掲示板やSNSの管理者に対して、悪い情報に紐づいているIPアドレスや投稿日時を開示してくださいという問い合わせ。開示を受けられた場合、次の段階として、IPアドレスを管理しているインターネット事業者に対して発信者情報開示請求訴訟を行う。そこで勝訴することができれば、IPアドレス契約者情報を手に入れることができる。最終的に悪いことをすると、匿名性は守られない」
情報開示後に書き込みをした個人が判明した場合、民事訴訟で損害賠償を請求するか、刑事告訴に踏み切るか2つのパターンが考えられる。仮に民事訴訟に発展した場合、名誉棄損での損害賠償請求だと慰謝料は数万円~100万円。刑事に関しては名誉棄損罪で3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が予想されると唐澤弁護士は話す。先に述べた妊婦に対する「転べ」や「流産しろ」といった人格を否定している発言(書き込み)については、民事で責任を問うていくことになるという。
■リツイートは名誉棄損の「連帯保証人」
お笑いタレントのスマイリーキクチもまた、少年事件の犯人という言われなき中傷、デマの拡散により20年間にわたってネットの誹謗中傷に苦しんでいる。一時は仕事への悪影響はもちろん、生命の危険すら感じることがあったという。警察に相談をしたのち、情報開示請求に踏み切ったスマイリーキクチは、2009年にネットでの中傷犯19人を一斉摘発。ネットの誹謗中傷における一斉摘発は、日本初の事例となった。日本のネット中傷に風穴を開けたスマイリーキクチは「リツイートは名誉棄損の連帯保証人だ」と憤りを隠さない。
2000年代前半はサイトの管理者や運営会社を相手取る訴訟が多かったが、2010年にはラーメンチェーン運営会社がネットに中傷書き込みをした男を刑事告訴。最高裁で書き込んだ男の有罪が確定している。また2014年には2ちゃんねるで弁護士を脅迫した当時20歳の男が逮捕されている。このように、現在では書き込みをした本人を訴えるケースが主流なのだ。
それでもなくならないネットの誹謗中傷。街の人からは「バレなければ」「(本人が)見えてなければいいと思っていそう」「見たことの無い人の悪口を言ってストレス発散」といった声が聞こえてくる。中には「表現の自由」という発言まで聞かれた。
今回、発信者情報開示請求に踏み切る決断を下した川崎さんは「匿名って思ってるからすごく今、治安が悪い感じがする。何を書いてもバレないし、何を書いてもいいんだとなっている。その流れは変えたい」と静かに、ただ力強く語った。(AbemaTV『Abema的ニュースショー』より)
▶映像:元アイドルの悲痛な訴え
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