今年7月、音楽グループ「レペゼン地球」のリーダーでYouTuberのDJ社長からセクハラ行為を受けたことを関係者の女性がSNSで告発。多くの人が心配する中、DJ社長が丸刈り姿で謝罪する動画を公開したが、全てはプロモーションのための自作自演、“ドッキリ”だったことが明らかになると、関係者は“大炎上”した。
あれから3か月。DJ社長がハフポスト日本版のインタビュー(今月27日公開)に応じ、「みんなドッキリだってわかって笑ってくれると思っていたんです」と、想定外の反応だったと話していることが話題を呼んでいる。特に記事の中で、インタビュアーを務めた相模女子大学客員教授の白河桃子氏の「2017年からの『#MeToo運動』で世の中の潮目が変わったんですよ」との問いかけに、「ミーツー?それ、なんですか?」「知らないです」と回答している部分が驚きを持って迎えられているのだ。
この、“#MeToo知らない”発言に対しては、「あれだけネットに精通しているDJ社長が#MeTooとかセカンドレイプを知らない訳ないんだよな」「知らなかったし調べなかったとしても何の不思議もないと思う。そもそも男の8割以上は知らんでしょ」「無知であること自体に罪はないけど、それによって周りを傷つける行為に問題がある」といった声が上がっている。
30日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した白河氏は「坂之上洋子さんという方の友達が、この問題に関する署名運動を立ち上げ、謝って欲しいと説得したが、DJ社長側はその気はないということだった。本についても読まないということだったので、ここは丁寧に説明していくしかないなと思い、インタビューを実施した。私も緊張していたが、彼もすごく怒られると思っていたようだ」と振り返る。
「(DJ社長には)200万人ものYouTube登録者数がいらっしゃるが、ハフポストの記事も多分読んだことがないだろうし、#MeTooを知らなくても不思議はないと思う。仮に言葉を知っていたとしても、それだけでは意味がなく、被害者がバッシングされることを覚悟で告白することを茶化し、自分のプロモーションに使ったということの重大さが理解されなければいけない。彼のファンには、被害を受ける側である若い女性も多く、ハフポストの記事を読んで、自らのセクハラ被害や、告発できなかったことについてツイートしている人もいる。彼としても、いけないことをした、ということは分かってくれたと思うが、まだそこまでは難しいと思う。彼が過去に作った歌を見てみると、“女の子をやり捨てにして”というような内容の歌も歌っている。本当に理解をし、被害に遭った女の子たちの味方になるような歌を作ってくれたら」。
セクハラや性的暴行の被害体験を告白し、社会が共有する「#MeToo」運動が各国で広まる中での過激な行為。結果、レペゼン地球はドーム公演の中止を発表、DJ社長のテレビ出演が見送られるなど、活動に影響が出たものの、YouTubeチャンネルの登録者数は7万人増加、8月1日付のYouTube音楽チャートでは圏外から急上昇、10位にランクインするという効果ももたらしている。
今回の問題が起こる以前からレペゼン地球に注目していたというジャーナリストの堀潤氏は「リアルタイムで見ていたが、大変なことが起きた、勇気ある告発だなと思った。ただ、彼らによくあるスタイルではあったし、ドッキリだと分かったときにも、“やっぱりか”、と思った。関係者に話を聞いていくと、彼らは最後の最後まで強気で、炎上も乗り越えられると思っていたようだし、#MeTooのムーブメントの温度観にも鈍感だったのだろう」と話す。
一方、現代美術家の柴田英里氏は「有名な女性YouTuberの中にも、“セクハラドッキリ仕掛けてみたよ”“襲われてみたドッキリ”みたいな企画を実施している人はいる。パフォーマンスアートの一つだとも言えるし、視聴者も含めて“どうせシャレだから”という暗黙の了解が通じる領域もある。ただ、それを超えて拡散されることで、そうは見ない人がたくさんいるということだ。DJ社長はそこを読み間違えた」と指摘。「ただ、“知らないの?”と驚いてしまうような認識はヤバいと思う。たとえば1980年代ごろまではリビングのテレビを家族みんなで見ていたので、“これはヤラセだよね”“ここまでやったらダメだよね”“これはいいね”というような批評もできる、“視聴者共同体”的な環境もあった。今はメディアも多様化しているし、それぞれが好きなものを見ているので、見なかった情報については本当に知らない」と話した。
実際、#MeToo運動は世界中を席巻しているようにも見えるが、ハロウィンで賑わう渋谷の街で番組スタッフが話を聞いてみると、「知っている」と答えたのは、30人のうち6人に過ぎなかった。
グラビア女優・ライターで、職場でのハイヒール・パンプスの着用強制に対する「#KuToo」運動で石川優実氏は「#MeToo運動の一番大きなハードルは、被害者が“嘘だ。証拠を出せ”“売名行為だ”などと言われてしまうこと。一連の流れが終わってから知って、絶望した。今回のことで、“ほら、売名行為をする人がいるんじゃん”ということになってしまう」と懸念を示した上で、「#KuTooを始める前の2017年、日本の芸能界で起きた#MeTooを告白したが、まだまだ知られていないと感じているし、去年は流行語大賞にノミネートもされたが、逆に違和感もあったくらいだ。やはりネット上と現実の壁は大きいし、現象としての表面的な現象だけを見て、背景に何があるのかを考えずに安易に批判する状況もあると思う」と話していた。
番組ではさらに、#MeToo運動が抱える問題点についても議論した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)






